プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 服部まゆみ「レオナルドのユダ」

2020年10月16日 | ◇読んだ本の感想。
はー……読むのが苦痛だった……。

「文章が美しい」……と聞いたので読んでみたんだけどなあ……。
こういう系か……。大変だった……。

……何が大変だったと言って、その三点リーダの多用が……。
つらい……つらい……。三点リーダを抜かして……ページ数を3分の1にして欲しかった……
3分の1にすれば……もしかして……もっと読みやすかったかもしれないのに……


と、こんなもんじゃないですからね!もっと延々と三点リーダが続くんですからね!
いや、真面目な話、この小説の三点リーダの割合はこれ以上でした。

三点リーダは表現として安易だと思うんですよ。
わたしも多用しがちなので、なるべく使わないように自制しています。
成功してはいないわけだが。
この人はそれを臆面もなく使う。いや、辛かった。


この話は「神のごときレオナルド」(本来は「神のごときミケランジェロ」)を、

ミラーノ郊外に館を構える小領主の子、フランチェスコ。
フランチェスコの従僕のジャン。
レオナルドを敵視する文筆家のパーオロ・ジョーヴィオ。

この3人の視点から描いている。時間的には数十年のスパンで。


フランチェスコとジャンはひたすらダ・ヴィンチに傾倒している。
この2人の間には競争心と嫉妬心があり、師匠への独占欲がある。
フランチェスコは高慢で美しい子ども→少年→青年と移り変わり、
ダ・ヴィンチの弟子になり、その死後に草稿を預かり編纂する。
このフランチェスコは、あのメルツィです。

パーオロという人は若い頃自分の愛する友人(男性)が
手放しでダ・ヴィンチを褒めて以来、嫉妬して無意味に彼を敵視する。
でも結局は絵の素晴らしさは認めざるをえず、しかし嫉妬は止まず、
愛する友人はとっくに死んでしまっているのに、ダ・ヴィンチに粘着する。
ダ・ヴィンチ本人の死後まで。

けっこうパーオロ視点で描かれるパートが多いんだけど、
パーオロが延々と周囲を軽蔑する内容なので、それも辟易するなー。
パーオロに頭の良さが感じられればまだましなのだが、本人自身に機知がないしね。
作者は頭のいい人として描こうとはしてないが、そうすると、
愚かな人が周りの愚かな人をあげつらう話になるわけで。退屈。


それから、辟易するのは「耽美派」の話であること。
この場合の耽美派というのは狭義の意味で。
……わたしは「耽美派」という言葉にこの意味をまとわせるのは嫌なんですけどね。
でも便利なのでつい自分でも使ってしまう。

耽美派だろうと小説としての良さには関係ないと思いたいので、
特に偏見なく読もうとしているんだけど、結局読むと辟易するんだよなあ……。



書いてあることの情報量としてはいいと思うんです。けっこう調べたんだろう。
わたしはダ・ヴィンチの細部はそこまで知らず、
メルツィやサライについてはだいたいこんな人、というイメージしかない程度で、
史実とフィクションの割合がどうなっているのか判断できないが。
まあ無知なる幸福で、書いてある情報に腹は立たなかった。

しかし2人の若者は延々とダ・ヴィンチをひたすら賛美し続け、反目し続け、
パーオロは下げ続け、――それを500ページ近く読まされるともう少し何とか
ならなかったかと思います。

最後だけ、唐突にミステリ風味になるんですよね。
延々と同じトーンで続けて来た小説をどう締めるのか、と我慢して読み続けて
来たのに、とってつけたようなこの結末……。ううう。


美しい文章に期待していたのだが。こういう感じか。がっかり。

まあとにかく読み終われて良かった。心置きなくお別れ出来る。
でも途中で止めなかったんだから、どこかに魅力はあったんだろう。おそらく。


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