朝ごはんの仕度がひと段落した頃、携帯が鳴った、
電話に出ると、ダンちゃんが、
「カリンが側溝に落ちた!!今から長靴履いて、助けに行くから!」
えええ?!側溝?!
「いゃーっ!!カリンが溺れて死んじゃうー!!」と、私も即座に家を飛び出す。
ダンちゃんが、胴長靴を履いて走り出していた。
「脚立が要るでしょ!!どうやって降りる気」
水路や池なら、カリンでも這い上がれる、
しかし、隣との境界線の側溝は、深さが2m近くある、
人間だって、間違って落ちたら、つかまる場所も無く、
這い上がる事さえできないのだ。
いくら、めったに人間が近寄らないからって、1m近く幅があるのに、
フタがないんだもん、この側溝。
(近寄れるのは、我が家の家族以外では、不法侵入者て事になる。)
「どこに落ちたの!」と、脚立を抱えて、ダンちゃんの後を追う、
膝までもある草をかき分けて走る。
「お父さんと、歩いてたら、側溝のほうから、カリンの鳴き声がして
それが、尋常じゃない物凄い鳴き方で、
行って見たら、カリンが側溝に落ちて鳴いてた、
ゴミ取りの、タモがあったから、タモで救い上げようとしたんだけど、
カリンのやつ嫌がって逃げて…」
脚立を伸ばして、ダンちゃんが側溝の中へと降りるが、
水の深さは、胸まである。
「居ない…」
「うそ…カリン!!カリン!返事して!!」
『にゃーーっ…』
「あ、鳴いた!カリン生きてる!!」
「どこだ?」
『なうううーーっ!』
「今、そっちで鳴いたぞ?」
「今のは琥珀、カリンはそっち、水門の方!!」
「あ、居た、隣の敷地の方の脇側溝に上がってる、そっちから回れないか?」
ええっ? 今度は、私が落ちるは…|||(-_-;)||||||…
側溝を渡り、背丈ほどもある、草と雑木の茂みをかき分け、
カリンの声を頼りに、探すと、
「居た!でもこの側溝のフタ、でかくて重くて無理~!!」
フタの間から、ずぶ濡れで震えてるカリンが見えてるのに…
「まってカリン、今、火事場の馬鹿力が出れば…」
わずかに持ち上げた隙間から、カリンはすかさず飛び出して、
ああ、よかった、
「側溝のフタ、もどしといたか?」
「…もどしたと言うか、重くてそのまま落とした…はまってると思う。」
ずぶ濡れで震えるカリンを抱えて、
ドロだけでも流さねばと、家のお風呂へ走る。
お風呂の残り湯で、ドロを洗い流して、タオルで包んで、小屋へ。
自分で、体のお手入れをはじめました。
きっと、琥珀を追っかけて、側溝にかぶった草の上を踏んで落ちたのね、
あそこは、落とし穴といっしょなんだもの…
幸い、怪我がなくてよかった。
オ マ ケ
車庫に入ってくるツバメが気になって、
軽トラの屋根の上に陣取る琥珀。