「あれから、もう一年ですか…。」
紺地の着流しを身にまとった青年は、静かに息を吐きながら言った。
あの日から、もう一年経つ。
同じ旅団の近くの部屋にいるパートナーと同じ姿をした同族を救おうとして、彼らの首都「樹上都市・レルヴァ」へと向かった。そう、当時、列強種族として同盟と冷戦関係にあったソルレオン領を通って…。
青年が、ソルレオンに対して、自国領への同盟冒険者の通行許可を求めるために、懸命に交渉したものの結果はNG。そのふがいなさに戦場で静かに涙を流した。
そして、相対した相手は、当時最強の名を欲しいままにしていたトロウル。
結果は、ソルレオン王国の首都ディグガードを攻撃され滅亡。同盟冒険者は撤退を余儀なくされた。
この戦いを、レルヴァ大遠征という。
一方、そのパートナーといえば、その悲劇も知らず、グドンが棲まう地にて、他の列強種族との戦いに明け暮れていた。
この結果も、厳しいものとなり、煮え湯を飲まされているような状況であった。
この二つが悪い方向へと進み、敵対するノスフェラトゥに旧モンスター地域の一部を占領されることとなった。
しかし、その後、その部隊の参加者から、自分のことを「師匠」と呼ぶ女性が現れることも知らずに…。
その後、同盟諸国は、ノスフェラトゥが支配していたエルヴォーグを支配下に置くところから始まり、青年が参加した「西方プーカ街道機動警衛隊」で、旧ソルレオン領に巣くっていた「悪の旗」の軍団を打ち倒し、その余勢とともに、北方セイレーンの救援のために戦い、ついには、トロウル王国を没落への道へとたたき落としたのだった。
「あれから、もう一年ですか。」
静かにそして、感慨深くつぶやいた。
「あれ、何をしてるんです?」
静かに思索にふける事自体が珍しいのだろうか。
一人の青年が声を掛けてきた。
「ええ、あのときからのことを、ずっと思い返していたんです。」
「そうですか…。でも、どうして?」
「あの日、あなたは北の大地で、悪夢を見た。
そして、わたしは同じ日、西の森で悲劇を見た。
そうじゃないですか?」
「そうですけど…。あれから、状況は変わりましたよね?」
「確かに、状況は変わりました。
ただ、あのとき、もし、自分がディグガードにいたら…。と思うときもあるんです。状況が変わったのではないかと…。」
「そうですか…。
でも、僕たちは、それを振り切ってでも、前を見ないと駄目なんじゃないんですか?
そう、ここに来る子供たちの笑顔のために、僕たちは弓を持って進む。
そうですよね?
マイトさんは舞を舞うことで、僕はフルートを奏でることで、心の傷をいやすことは多少出来ると思います。」
「そうですね…。二年前、あなたに言った言葉が、回り回って戻るとは思いもしませんでした。」
「そうですか?」
青年はきょとんとした顔で言った。
「今宵は少し気分が良いですし、軽く一献飲みましょうか?」
青年は、どこから手に入れたのか、変わったお酒を声を掛けてきた青年に差し出した。
「あ、じゃぁ…。」
お猪口一杯の酒を二人で飲み交わしていく。
そういえば、彼と差しで飲む事自体、初めてなような気がする。
しばらく続く他愛もない会話。
話をしているうちに、「師匠様、何やってるんですか?」と二人ともどこかで聞いたことがある声がした。
扉を開けてみる。
包帯姿が痛々しい一人の女性が、そこに立っていた。
「師匠様、パートナーさん、何を話してたんですか?」
「い、いや、何でもないですって、その前に、その包帯姿は?」
「実は、護衛士団の依頼で、他の階層との境界にある祭壇の攻略を行って…。」
「で、怪我をしたと…。」
心配そうな表情で師匠は、弟子を見つめる。
何故、青年と彼女との間に、師弟関係が出来たかは、色々訳ありのようである。そもそも、師匠と彼女が出会ったのは、彼とともに参加した特務部隊が終わってからなのだが…、以前から、戦い方が気になっていたのかもしれない。
「あ、ちょっと待ってください。僕が応急手当をしますから。」とそそくさと移動する。
それとともに、師匠も彼女を席に座らせ、体を休ませるように勧めた。
「ありがとうございます。」
そういうと、体を大事にしつつ、体をいすに預けた。
「全く無茶をして…。二人とも、無茶するときは無茶するんですから…。」
「師匠様だって、警衛隊の時、無茶したじゃないですか。召喚獣なしで、キマイラの群れに突っ込んで強行突破したって。」
「…」
そういわれてしまうと、ぐうの音も出ない。ちなみに、弟子はほほをふくらましている。
結局、この3人、以外と共通項が多いようだ。
「でも、あなたがなしたことには、誇りを持ちなさい。
私は、仲間たちがいたからこそ、ヴァルゴン将軍を倒すことが出来ました。
あなたも、今、数多の仲間たちがいたからこそ、地の底に棲まう竜を倒すことが出来たのですから…。」
「あ、今、薬とか用意しましたよ。」と薬草を煎じたお湯をドリアッドの青年は彼女に手渡した。
「一年経つんですね、あのときから。」
二人を見つめつつ、紺地の着流しを着た青年は、二人を見て、笑みを浮かべてながら言った。
季節は春。数多の出会いと別れがある時期。そんな季節の中で、彼らは歩んでいく。「希望」という名の篝火を持って、力なき人たちのために、その弓をふるっていく。
そして、月は淡く、白く、輝いていた。
久々にショートショートを書いてみたのですが、いかがでしたでしょうか?
こっそり、パートナーさんや弟子を描くことが出来てちょっとうれしかったりしています。
本当は、某NPCさんも描きたかったのですが、話の関係上、ちょっと無理でした。
いや、だって、「盾の大きさなら、絶対、負けない!」といいあう様な二人を描いてもねぇ。キャラ違うし…。(オマチなさい)
久々に、ほのぼのとした感じのものが描けたかともいます。
湯治で温泉でもよかったのですが、混浴なんてかけませんから!
感想等々があったら、こそっとコメントくださいまし。
紺地の着流しを身にまとった青年は、静かに息を吐きながら言った。
あの日から、もう一年経つ。
同じ旅団の近くの部屋にいるパートナーと同じ姿をした同族を救おうとして、彼らの首都「樹上都市・レルヴァ」へと向かった。そう、当時、列強種族として同盟と冷戦関係にあったソルレオン領を通って…。
青年が、ソルレオンに対して、自国領への同盟冒険者の通行許可を求めるために、懸命に交渉したものの結果はNG。そのふがいなさに戦場で静かに涙を流した。
そして、相対した相手は、当時最強の名を欲しいままにしていたトロウル。
結果は、ソルレオン王国の首都ディグガードを攻撃され滅亡。同盟冒険者は撤退を余儀なくされた。
この戦いを、レルヴァ大遠征という。
一方、そのパートナーといえば、その悲劇も知らず、グドンが棲まう地にて、他の列強種族との戦いに明け暮れていた。
この結果も、厳しいものとなり、煮え湯を飲まされているような状況であった。
この二つが悪い方向へと進み、敵対するノスフェラトゥに旧モンスター地域の一部を占領されることとなった。
しかし、その後、その部隊の参加者から、自分のことを「師匠」と呼ぶ女性が現れることも知らずに…。
その後、同盟諸国は、ノスフェラトゥが支配していたエルヴォーグを支配下に置くところから始まり、青年が参加した「西方プーカ街道機動警衛隊」で、旧ソルレオン領に巣くっていた「悪の旗」の軍団を打ち倒し、その余勢とともに、北方セイレーンの救援のために戦い、ついには、トロウル王国を没落への道へとたたき落としたのだった。
「あれから、もう一年ですか。」
静かにそして、感慨深くつぶやいた。
「あれ、何をしてるんです?」
静かに思索にふける事自体が珍しいのだろうか。
一人の青年が声を掛けてきた。
「ええ、あのときからのことを、ずっと思い返していたんです。」
「そうですか…。でも、どうして?」
「あの日、あなたは北の大地で、悪夢を見た。
そして、わたしは同じ日、西の森で悲劇を見た。
そうじゃないですか?」
「そうですけど…。あれから、状況は変わりましたよね?」
「確かに、状況は変わりました。
ただ、あのとき、もし、自分がディグガードにいたら…。と思うときもあるんです。状況が変わったのではないかと…。」
「そうですか…。
でも、僕たちは、それを振り切ってでも、前を見ないと駄目なんじゃないんですか?
そう、ここに来る子供たちの笑顔のために、僕たちは弓を持って進む。
そうですよね?
マイトさんは舞を舞うことで、僕はフルートを奏でることで、心の傷をいやすことは多少出来ると思います。」
「そうですね…。二年前、あなたに言った言葉が、回り回って戻るとは思いもしませんでした。」
「そうですか?」
青年はきょとんとした顔で言った。
「今宵は少し気分が良いですし、軽く一献飲みましょうか?」
青年は、どこから手に入れたのか、変わったお酒を声を掛けてきた青年に差し出した。
「あ、じゃぁ…。」
お猪口一杯の酒を二人で飲み交わしていく。
そういえば、彼と差しで飲む事自体、初めてなような気がする。
しばらく続く他愛もない会話。
話をしているうちに、「師匠様、何やってるんですか?」と二人ともどこかで聞いたことがある声がした。
扉を開けてみる。
包帯姿が痛々しい一人の女性が、そこに立っていた。
「師匠様、パートナーさん、何を話してたんですか?」
「い、いや、何でもないですって、その前に、その包帯姿は?」
「実は、護衛士団の依頼で、他の階層との境界にある祭壇の攻略を行って…。」
「で、怪我をしたと…。」
心配そうな表情で師匠は、弟子を見つめる。
何故、青年と彼女との間に、師弟関係が出来たかは、色々訳ありのようである。そもそも、師匠と彼女が出会ったのは、彼とともに参加した特務部隊が終わってからなのだが…、以前から、戦い方が気になっていたのかもしれない。
「あ、ちょっと待ってください。僕が応急手当をしますから。」とそそくさと移動する。
それとともに、師匠も彼女を席に座らせ、体を休ませるように勧めた。
「ありがとうございます。」
そういうと、体を大事にしつつ、体をいすに預けた。
「全く無茶をして…。二人とも、無茶するときは無茶するんですから…。」
「師匠様だって、警衛隊の時、無茶したじゃないですか。召喚獣なしで、キマイラの群れに突っ込んで強行突破したって。」
「…」
そういわれてしまうと、ぐうの音も出ない。ちなみに、弟子はほほをふくらましている。
結局、この3人、以外と共通項が多いようだ。
「でも、あなたがなしたことには、誇りを持ちなさい。
私は、仲間たちがいたからこそ、ヴァルゴン将軍を倒すことが出来ました。
あなたも、今、数多の仲間たちがいたからこそ、地の底に棲まう竜を倒すことが出来たのですから…。」
「あ、今、薬とか用意しましたよ。」と薬草を煎じたお湯をドリアッドの青年は彼女に手渡した。
「一年経つんですね、あのときから。」
二人を見つめつつ、紺地の着流しを着た青年は、二人を見て、笑みを浮かべてながら言った。
季節は春。数多の出会いと別れがある時期。そんな季節の中で、彼らは歩んでいく。「希望」という名の篝火を持って、力なき人たちのために、その弓をふるっていく。
そして、月は淡く、白く、輝いていた。
久々にショートショートを書いてみたのですが、いかがでしたでしょうか?
こっそり、パートナーさんや弟子を描くことが出来てちょっとうれしかったりしています。
本当は、某NPCさんも描きたかったのですが、話の関係上、ちょっと無理でした。
いや、だって、「盾の大きさなら、絶対、負けない!」といいあう様な二人を描いてもねぇ。キャラ違うし…。(オマチなさい)
久々に、ほのぼのとした感じのものが描けたかともいます。
湯治で温泉でもよかったのですが、混浴なんてかけませんから!
感想等々があったら、こそっとコメントくださいまし。