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甘いミカン

2014-01-06 | 中国の物語

 九月のある一日、地主が誕生日の昼食にお客を招こうとして、下僕の張老人を呼んで言いつけた。

 「これから急いで百個のミカンを買って来い。いいかよく覚えておけ、今日招くのはみんな、とてもとても大切なお客だ。お前は必ずいちばんよくて、いちばん甘いのを選ぶんだ。酸っぱいのは一つも要らないからな。」

 張老人は、一声、「はい」と答え、お金を持って出かけた。

 張老人は町で百個の赤くて大きいミカンを百個買ってきた。帰ってくる途中、貧しい人たちが畑で地主のために粟を刈り入れているのをちょうど見かけて、足を止め、みんなに、ミカンを食べに来るよう呼びかけた。貧しい人々が言った。

 「おれたちが食べてしまったら、あんたは何を持って帰って、地主様にはどう説明するつもりなんだ?」

 張老人は言った。

 「お前たちは一個のミカンを半分食べて、半分は残しておけばいい。」
 空が暗くなって、張老人はミカンを担いで、慌てず焦らず、主人の家へ戻ってきた。地主が大声で叫んだ。

 「お前は何をしに行ってたんだ?どうして今頃帰って来たんだ。客たちはとっくに来ていて、待ちくたびれてるぞ。」

 「あなたは私にいちばんいいのを選べとおっしゃいませんでしたか?わたしは町の東から西まで探し回り、それからまた、西から東まで探しまわるほかありませんでした。ようやく百個のミカンを選んできました。そういうわけで、今ようやくこうして帰り着いたのです。」

 張老人の話を聞いた地主は一瞬、何も言えなかったが、すぐに大声で言った。

 「早くミカンを客間へ運んで行かないか!」

 張老人はまたふらふらとミカンを担いで客間へ行った。客たちは張老人が買ってきたミカンを見て愕然とした。地主が腰を曲げて見てみると、どのミカンも半分しかない。それで、烈火のごとく怒って言った。

 「お前、これはどういうわけだ。」

 張老人は手で汗をぬぐいながら、慌てることなく、落ち着いて言った。

 「あなたは私に、いちばん甘いみかんを選ぶように。酸っぱいのは絶対に要らないとおっしゃいませんでしたか?やはり見ただけでは酸っぱいか甘いか見分けることができませんでした。ですから、一つ一つ食べてみて買うほかありませんでした。おかげでわたしは町の東から西まで味見して、また西から東まで味見して、やっとのことで、この百個のミカンを見つけのです。」

《東進ブックス『聴読中国語』より》



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