写真館の前に立ち止まる。あの時もたしかそうだった。店の女将さんにこの町のことをいろいろ訪ねたら、親切ていねいにあれこれ教えてくれた。ほんの通りすがりだという私たちに。
そのことを今思い出している。すぐその前の寿司食堂。美味しいということもあの時女将さんが言ってくれたのを思い出す。
古い町だからこそだろうか。町の中心部はわりと十字路が少なく、すぐ丁字路に突き当たる。素通りしにくいからか。昭和の香りの町と言ってもいいのかもしれない。
ひなまつりが始まって20回目。ほとんどのお宅で古い雛人形が玄関口に顔を見せている。お店だけでなく、ごく一般のお宅でも。ピークの土日にはその数は120軒にも達するという。けれども今はまだまだ寒い2月の下旬。観光客の数は今の時期、思ったほど多くはない。それでもこの小さな町にとっては、とても大勢のお客さんの数だろうななどと勝手に想像しながら路地を曲がる。期間中10万人近くの人が関東のこの田舎に押し寄せるというのだからなにしろすごい。
ここは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されているので、歴史的建造物も多い。どこかのテレビ局できっとイベントとして今年も取り上げるだろうなと思いながら、これで何度目の見学かなどと指を折ってみたりする。
なにせ120軒以上のお宅の軒先に雛人形が飾り付けられている。古い町並みを上手に活かした、まことに華やかな女性に好かれるイベントである。
こういうふうに町のほとんどのお宅で協力をして一つのイベントを盛り上げるのは気持ちがいい。地元の青年会か何かが最初は立ち上げたとか聞いたような気がするが、20回目となる今ではすっかり定着したこの「ひなまつり」。
昔から伝わる風習が、祭りとして見直されて、形こそ違えひとつの文化の行事として成功したなと思って見ている。
今年はたまたま3月3日が日曜日となる。晴れればその日はそうとうの人出となることであろう。
「つれづれ(140)真壁のひなまつり 120軒のお店や軒先に」