百合が数日前に咲いた。
真っ白で清楚な感じを、この目で近くで確かめた。けれど、このテッポウユリはちょっとひねくれているのかもしれない。
ほんとうはわが家の百合は一か月も前に終わっている。だから実際は今年は見納めているはずだった。
実は8年前、思いもよらぬ西日のあたる所にいきなり咲き出した。こんな場所に植えたはずもないし、もちろんもらってきた覚えもない。
考えるのは、鳥が運んだに違いないとその時思った。
お陰で夏のひと時を、さわやかに無料で楽しませてもらった。
4本の茎を、草だと思い込んで、小さい丈のうちに3本抜いてしまったのは惜しまれるが。
それから一年が過ぎ、ある日またその位置に茎が伸びてきた。これは昨年の百合だとすぐわかった。
百合も忘れずにまた今年も元気に顔を出してくれた。
そしてさらに7年が過ぎている。
百合は記紀や万葉集に見られる。だからけっこうその歴史は古い。
けれど、園芸としては意外に浅く、江戸時代も中頃に始まったようだ。ということはまだ園芸史としては300年くらいなのだろう。
明治の初期には球根の輸出がされたようだから、それは日本の花といってもいいような気がする。
その日本の花さん。
今年も咲いてくれてありがとうね。
花の大好きな庭でよかったねと言った。百合もわかったように、少し六枚の花びらを揺らしてくれた。
ユラユラユラリ、ユリ動かして。
清い姿をまた見せてくれる。
百合子も小百合も、ほとんどの日本女性は、きっと清楚な方が多いのだろうと思ってみる。もし外れていたら仕方ない。
ほんとうにお礼を言わなければならないのは、運んでくれた鳥さんだとその時思った。
「季節の花(47)百合」