ついこの間幼稚園に入園したと思ったら、孫は今春はもう小学三年生だ。数えてみたら、なんとあれから5年も過ぎている。その当時は、いわばお友だちデビューといったらちょっと大袈裟だが、本人にとって入園時はきっと世の中がいっぺんに変わったくらいの一大事だったかもしれない。幼稚園に行くということは、まわりの人間関係が家族から友だちへ一気に開け、集団生活のスタートだから。
そして、その後は誰でも歩む学校生活へと入っていった。すなわち、本人にとっては社会生活への始まりだったかもしれない。
これはなにも幼稚園や小学校に限らず、さらに上の入学式を迎える子どもたちにとってもきっと同じことだろう。学生に限らず、新社会人として旅立つ若者も同様のことがいえる。
スポーツや芸能界などはたとえ世界は違っても、胸に希望をふくらませてスタートする姿は新幼稚園生や新小学生と同じようにすがすがしい部分がある。オープン戦からいよいよ公式戦へと移るプロ野球界でも新人が一軍ベンチ入りを目指し、激しい特訓を受けている。今までの緒先輩のたどった道を、今度は自分の足でしっかりと歩いていってほしいものだ。
そんな先輩たちだってデビューした時は大変だったのだから、これから旅立つ若者も初心を忘れずに社会の荒波に立ち向かってもらいたい。
歌の世界に目を転じれば、昭和30年代頃にデビューした有名歌手だって、スタート時はまったくデビュー曲がヒットしなかった人たちがたくさんいる。三橋美智也、三波春夫、フランク永井、坂本九、都はるみ、その後も40年代に五木ひろしや川中美幸でさえデビュー曲はほとんど売れなかった。一曲目がまともに売れたのは、アイドル時代以前の歌手をあげてみると春日八郎、島倉千代子、こまどり姉妹ぐらいである。三沢あけみ、北島三郎などはデビュー曲が売れる売れないどころではなく、放送禁止になっている。
新人にとってはそういう険しいスタートではあったが、彼らはやがて歌手という栄光をつかんでいる。運や天性の部分もあっただろうが、きっと本人の努力は並大抵のことではなかったかと思う。
スポーツ界や歌謡界であろうと会社という組織の中であろうと、その道のスペシャリストとしてまっすぐ突き進んでもらいたいものである。行く道の内容にかかわらず、ひたむきに進む姿ははたから見ていても気持ちがよい。本人にとっても、この道を進んで良かったと後で思えるような道であってほしい。
そういう人たちのスタートの時期はもうまもなくだ。
「つれづれ(146)デビューあれこれ」