腐敗惑星のアリス★第13回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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腐敗惑星《静かの海》にある地下羊宮の中で、
「トリニティ、お前はそろそろ外界へ出る時かもしれんのお。お前には成人式が必要なのじゃ」
ある日、おもいがけずにトリニティは、地下羊宮の疑似人格チャクラじいさんにそう言われた。
(地下羊宮の外へでるですって。いやだなあ。外へ行かなくてすむように、どうごまかすかだわ)
「でも、チャクラ、あたしはまだまだ学ぶことがあるような気がする」
チャクラは答えない。トリニティはチャクラのきげんを探ってみるため、やんわりと尋ねる。
「外界に行って、そこで何をするの」
「お前の役割をはたすのじゃ」
(つまり、仕事を外でしろって事ね。嫌よ。しかくない。仕事なんて)
「どんな役割なの」
「お前は《禁断の実》をみつけなければならんのじゃ」
(禁断の実ですって、何、それって。勉強していないわよ。でも、何か大変なことがおこ
りそうね。あぶないわ)
そのトリニティのおもいを気にせずに、チャクラは続ける。
「《禁断の実》はワシ地下羊宮『チャクラ』の分断された体の一部なのじゃ。記憶容量ががっちりつまったメモリーバンクじゃ」
「という事は、チャクラの記憶容量は充分ではないというわけね」
(もう、今までの勉強でうんざりよ。これ以上の勉強なんて、必要ないわよ)
「その《禁断の実》は、はるか昔、世界がこうなる前には、ワシの体に組み込まれていた。
ある者がワシから盗み去ったのじゃ」
(盗んだですって。偉い、偉い。その人はほめたたえらえるるべきよ)
「ある者って、チャクラの敵なの」
「昔は友達じゃった。が、しかし今は敵じゃで」
「昔は友達?じゃ知りあいなのね。チャクラと同じ様な体をしているの。もしそうなら動
けないじゃない」
「彼らは動ける。それもかなりの高速で空間を移動できるのじゃ」
(ええっ、何ですって)
「彼らですって」
「そうじゃ、彼らの名前は「戦闘16面体」。おまけに彼らのボディはワシがプランニングし、作りあげたのじゃ」
(きゃっ、戦闘16面体ですって。聞いただけで怖そう。いやだわ)
「どういう目的で、その彼らを作ったの」
「お前を守るためにじゃ」
「それが、あなたのもとを出ていったの。あたしを今でも守ってくれるのね」
ふーん、安心と思ったトリニティだったが、チャクラの答えは想像とちがった。
「残念じゃが、トリニティ、今の彼らが、お前の成長をしれば…」
トリニティはチャクラの答えを待つ。
チャクラはしばらく考えていた。再びトリニティが尋ねる。
「戦闘16面体が、あたしにあえばどうなるの」
いいながらトリニティは、心臓がとまりそうよ。
「お前を殺そうとするじゃろうて」
チャクラは平然と答えた。トリニティは衝撃をうける。
(うわーん、何よ。どういう運命なのあたしは。悲惨だわ。これからのあたしはどうなる
の。そんなにあぶないところにでていけというの。そんなのないわよ)
トリニティは、ここから、逃げ出そうと思った。
(続く)20090501改定
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