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クリス・リックマンという名の箱船第10回■私は、イーダに促されて、メルダ市にたどり着き、市民の歓迎を受ける。

2021年09月02日 | クリス・リックマンという名の箱船(1976年作品)
クリス・リックマンという名の箱船●全宇宙の観察者、超生命体達は、対象である下等生物のいつ意識を全開させてみる実験をした。地球人類の生き残り1人は最適解をだすだろう。
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クリス・リックマンという名の箱船第10回■私は、イーダに促されて、メルダ市にたどり着き、市民の歓迎を受ける。
 

クリス・リックマンという名の箱船第10回

(1976年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 

■先祖殺しはできないという禁止条項を私の生体の遺伝子にプログラミングし、私のクロー

ン人間、子孫に植えつけて育てたのだ。なぜなら、地球には、地球人類が消滅していたからだ。

 

イーダはまだ気を失しなったままだった。

 

メルダ市まではかなりの道のりがあるというのに

私はまた話相手もなく、傷ついたホーバークフトをクラフトを修理し、最初にイーダから聞いたメルダ市があると思われり方向へ走り出した。

 

途中の風景はあまりに変化に乏しい。

 

私の時代、つまり、侵略者が来る前に生きていた時代に比べ、なんと寂しい光簑なのだろう。

あの時代、地球は活気に満ちあふれていたのだ。

 

地球は緑をなしていた。海には魚や貝が、森や林は動物たちが、群れ遊んでいたはずだ。

 

ああ、もはや、そんな風景は、二度と目にする事ができないだろう。

 

イーダがようやく息を吹き返した。イーダは私が生きてる事に気づき、私にだきい

て来た。「司政官、生きていた!」

 

「イーダ、怖がる事はない。事実私は生きているのだ。私は、殺される事は決してない。不死身

なのだ」

 

と私は言う。泣いているイーダはなぜとは尋ねなかった。

 

イーダは感情を爆発させながら他の事を考えているようだった。

私にはイーダを慰めたりしなかった。

市街が地平線の向こうに見えて来た。たぶんあれがメルダ市だろう。

 

■メルダ市は今まで私が訪れた都市とはまったく異なっていた。

 

城壁が存在しなかった。

どこの都市にもあるはずの壁がなかった。外に対してあけっぴ

ろげだった。またこんなに近づいたのに警備兵の姿さえなかった。静かだった。

 

もっと近づくと町並がはっきりと見えてくる。

町は簡潔で美しかった。

けばけばしさや重苦しさ。そんな類いの言葉はこの都市には不必要だった。

都市デザインは秀れていて、住んでいる人々の知性を感じさせる街だった。

私はふと、ここが私の考え求めて来た理想郷かもしれないと思った。

 

私達、人類の悪しき傾向から切り離れた人々が住んでいるに違いないと思った。

いや私は念じていつのだ。ここが、私の求めてきた理想郷であれかしと。

 

ホーバークラフトは町中へ入った。

住民はまた、都市の外観から受けた印象と同一であった。礼儀正しく、さらに鍛え上げ

られ練りあげられた人格を感じさせる。

 

数人の白服を着た人々が私を待ち構えている。私はホーバークラフトを止め、大地に

降り立った。

 

イーダはその人々の方へ歩いていく。どうやら隊商とラグーン市の顛末を述べているよ

うだった。

 

その集団の中でひときわ背の高い男が、私の方へ歩いてくる。この都市の指導者らしい。

 

「事のあらましはイーダから聞きました。イーダを助けていただいてありがとうございま

した。どうぞ、この都市メルダでゆっくりとお休み下さい。

たいしたおもてなしはできませんが」

 

男は今まで、―私の見た事のない高貴な顔立ちをしていた。

私という同じ素材から生まれた顔でもこうむ違うものだろうか。

 

それにシティデザスターの私を少しも恐れてはいない。

私はこんな平和な安心しだ気分は感じたことがなかった。

この気分はどこからくるのだろう。

 

私はささやかな歓迎会を受け、イーダに連れられて、。町の中を歩き、私の宿泊所にあて

られている建物でゆっくりとくつろいだ。

 

彼らは私が都市管理センターへ帰れる手立てを考えて努力してくれるだろう。

 

私は眠りにつこうとしていた。

が何かの疑惑が私を寝つかせなかった。

 

イーダの事だ。私はイーダを愛しているのかもしれない。が出会った時から気になって

いるのだが。

 

イーダを私はずっと大昔に見た記憶があるのだ。もちろん、顔は私のコピー

なのだが、仕ぐさ、動き、話し方がなぜか私の記億を刺激するのだ。

 

 

■私は私の。コピー人間、クローン人間を大量に作り、繁殖するまで、冷凍睡眠にはいった

のだが。

 

イーダにはその以前に会ったような気がする。が、そんな事はありえない。

 

それに、このメルダ市が、私の都市管理センターから食糧を受けていないのも合点がいかない。

まだある。

 

イーダは、食糧トラックに乗り込んでいた。私しか乗り込む事ができないプログラムのあるハッチから、防御用のレイガンにやられずに。

 

それにラグーン市に長時間いたはずなのに、私のばらまいた細菌による病気の徴候があの時、まったく現われていなかった。

 

さらに、メルダ市の隊商は確かに皆殺しにされたはずなのだ。

 

おまけに市庁の牢獄から一人逃れ、食礎トラックまで辿りつける可能性は極めて少ない。

女の手では不可能だ。

 

最初の賞金かせぎに襲われた時、彼女は自分の力で貧金かせぎが投げた手榴弾から身

を守った。

 

どういう事だ。イーダとメルダ市は、私の創造物ではないのか。誰か別の地球人が。

だが、私しかいないはずだ。この再生された地球の設計者は。

 

大きな疑問が、私の眠りを途切れさせた。

 

 

クリス/リックマンという名の箱船第10回

(1976年)「もり」発表作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/

 



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