新人類戦記 第三章 聖域 第19回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)
■ビサゴス共和国 ヨルバ族の集落
ヨルバ族の村落は、首都ポグラから来た兵士で1杯になっていた。彼らはイアテ族の不信
な勣きをトウレから聞いていたが、それ以上イアテ族の方へ、さらにはアコンカグワ山の
方へは近づかなかった。その軍の兵隊もほとんどヴァリド族で占められていた。アコンカグワ山はヴァリド族にとって鬼門なのである。彼らはトウレの討で酒宴を聞き、時をかせいでいる。
トウレは村のざわめきから離れ、こわごわながらも、アコンカグワ山の方を見指しよう
と吋はずれの馮い木へ登り始めた。
彼の耳に遠く地嚇きがきこえてきた。トウレ始め、ヨルバ族の者は草原を毎日見つめて
いるため遠視といってもいいほど、遠くがよく見え泰のだ。
土ぱこりが上っている。
それは動洵の大移動であった。シマウマ、キリソ、ソウ等の動物が気がくるっ
たように、東、つまり隣国ガニタの方へ向かい走って行く。鳥の群も数限りなく同じ方向へ向
かい飛んで行く。
トウレは背すじが寒くなった。これは一体悪い事が始まりそうな気がする。
トウレの背後の大地が急に暖かくなったような気がした。
後を桓りむく。太陽がもう一つ存在しているようだった。
トウレも樹木ごと吹き飛ばされる、なにがおこたのか。
閃光はやがて、見なれぬ雲を形づくり始めた。ビサゴス共和国の近くの都市ウルラの消滅
であった。
原子爆弾のキノコ雲だった。
■日本、山梨 翁の邸宅
翁はその頃、再び、アメリカCIA長官へ呼び出し電話を行なっていた。事情を述べた
あとに頌み込む。
「長官。米国大統領に緊急に要諸下さい。すでに原爆はセットされています。アメリカ軍最終処封を
ビザゴス共和国に」
「翁、我々も隣国ガエタにいるカイザー少将と話しあって合意を得た。彼も事態を憂虞してお
る。恐らく政時間以内に、最終手段は実行されるであろう」
翁との電話のあと、アメリカの閣僚会議が開らかれる。
「新人類対策(超能力者集団)」、ビサゴス共和国対策、一番大きな問題は、日本に対する制裁処置である。第2次イエロープラン。すなわち「日本再占領計画」が検討されていた。
そして同時に検討されるのは日本政府が、情報部の隠れ蓑のもと、明治維新以降に世界各地に秘密裏に作っていた「サムライノクニ」の壊滅作戦である。現状のトップは翁であった。
■ビサゴス共和国 首都 大統領官邸
首都の某所に原爆が仕掛けられたという声明がビサゴス解放戦線刎からあった。ビサゴス全国民にそれが伝わっている。
『ビサゴス全国民に告ぐ。大統領ラオメを倒せ。そう。すれば原爆は効発しないであろう』
これがビサゴス解放戦線のアピールであった。
元PLOダレルの物体移動能力が有効に洵いていたのだ。
それがブラフでない証拠として、
首都、ボグラからあまり離れていない中小都市ウルラがオでに消滅していた。
キノコ雲と閑光は首都からもよく見えた。
人々の心は氷りつく。本当に爆発が。
ラオメは恐慌状態にあり、日本の翁へ再び電話をかけていた。
「翁、これはどういう事だ」
「といいますと」
「お前は、あの原爆には安全装置がしてあり安全だといっていたな」
「そうです」
「今、俺は原爆が曝発するのをこの目で見た」
相手から返事がない。急に音も聞えない。
「おい、翁聞いているのか」
秘密警察長官、ラギドが飛び込んできた。
「大統領、だめです。電話は全部不一咄です」
「何だと」
「ビサゴス解放戦線特攻隊が首郡に突入して来ました。電話線を切断したようです」
「私の軍隊はどうしたのだ」
「首都ボグラ市内は今、騒乱状態にあります」
「くそ、ビサゴス空車に頼み、上空から催涙弾を射ち込め」
「大統領。とりあえず、あのヘリコプターで首都から脱出下さい。我々の這発処理班で原
偉を発見で有るかどうかわかりません」
「そうだ。ニエレレはどうした」
「我々の特攻隊がビサゴスジャガラの森の解放戦線秘密基地を発見し、突入した時には、ニエレレは死亡しておりました。我々のバウチの姿もありませんでした。捕虜の話から判断すると日本の情報部の
男がつかまっており、一諸に脱出を計ったそうです」
「くそっ、そいつ日本人が原爆安全装置の解除方法をしゃべったのだな」
「大統領、どうか、アコンカグワ山麓のプクラの森へおちのびて下さい」
「なに、アコンカグワ山だと。あそこはどんな所なのかお前知って言っているのか」
「わかっております。禁忌地域と存じています。それゆえ行って下さい」
新人類戦記 第三章 聖域 第18回
作 (1980年作品)飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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(アメリカとソビエトの冷戦時代の話です)