ロボサムライ駆ける■第48回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■第六章 古代都市 (3)
心柱のある場所はここまでの化野よりももっと広大だつた。
「なぜ、こんな広大な場所が地下にあるのだ」
「これが…」主水は思わずつぶやいていた。
『そうじゃ、これが心柱じゃ。日本の心柱。これを数千年にわたって探していた者がおるのじゃ』
落合レイモンの声が再び響いてきた。
「レイモンさま、ご無事ですか、お助けにまいりましたぞ」
その柱は直径二十メートルほどあり、天井部分は、はるか霞んで見えなかった。同じ太さで地中に植わっている。
その柱は輝いているが、がその色は数刻ごとに七色に変化していた。そして、まるで生き物の皮膚のようにぬめりとしていた。
◆
『機械たちよ、私の命令に従え』
叛乱ロボット軍団の皆の心の中に、この言葉が、突然侵入してきた。
「こ、この声は…」
侍ロボットの一人が尋ねた。
『私は超生命『心柱』である。この日本を日本たらしめている生命体である。日本列島誕生より、この日本に住み着き死んでいった生命の残留意志集合が私なのだ。古代より続くこの日本の地に霊として結集し、形をとったのだ。
私を、ロセンデールとか申す外国人によって支配させるでない。日本ロボットの諸君、皆私の前に集まれい。私を保護せよ。日本古代よりの霊の結合体と、地下に眠る地球意志ネットワークが融合したのが、私だ』
「おはしらさまが、古代都市に結界を張っていたわけか」
主水がつぶやく。
『そういうことだ、主水。私が動けば、古代都市を復活させることができる』
心柱が答えた。
「皆、みはしらさまの前に集まれい」
心柱を背にロボット奴隷戦士が、円陣を組んでいた。
シュトルフ率いる聖騎士の一団が、主水たちに襲い掛かってくる。
「ここが踏ん張りどころぞ。こやつら異国の者ばらに、日本の心柱を占領させてなるものか。方々、これが日本のロボットの力の見せ所ぞ」
主水が声を張り上げていた。
パワードスーツの一団、聖騎士団は、レザーサーベルを抜き放つ。
「かかれ…、日本のロボットなど、奴隷の一団。おそるるにたりん。我らが聖騎士、ゲルマンの神の御加護があらん。攻めて攻め滅ぼせい。力押しだ」
大夫シュトルフが、赤ら顔の表情を一層険しくして怒鳴っていた。
地下巨大空洞に、怪しい光がみちみちた。
日本の心柱を巡って、ロボットとパワードスーツがいり乱れて戦い始めた。
そのとき、地下空洞の地面から地下水が、急に噴出してくる。
見る見るそれは湖となる。
「これが、古代大和湖か」
主水は戦いながら関心した。湖の色は不思議な瑠璃色だった。その中に生命が溢れているように感じた。僅か数刻で水が満ち満ちるとは。
その地下湖から姿を現すものがある。
小型潜水艦である。
横腹に『水鏡』と書かれていた。
地下水流に乗ってきたのだ。
「あるいは……」主水は期待をもってその潜水艦を見る。
サイ魚法師が、艦橋ハッチをあけて顔を出した。
「おお、戦いの真っ最中ではないか。とんだところに出くわしたものじゃ」
そのサイ魚を見たロセンデール卿は味方につけようとした。
『サイ魚法師君、早く我々の手助けをするのです。シュトルフ君を助けなさい。あとで礼はつくします。空母を沈めたことも許しましょう』
ロセンデール卿の声が、サイ魚法師に響いた。
「サイ魚法師殿、我々に味方しろ。日本対外国の戦いじゃ。どちらに味方すればいいか、おのずからわかろう」主水も声を振り上げる。
「おおっ、皆元気のいいことじゃ。こんな地下でも戦いとは大変じゃのう」
サイ魚法師は知らぬ顔をする。
どちら側についてもおいしい話なのである。
この戦いの力のバランスを崩すことができる。キャスティングボードを握っているのが、サイ魚法師であった。
「え、あなたが、有名なサイ魚法師ですかー」
そばで見ていた知恵が、調子外れにすっとんきょうな驚きの声を上げ、羨望の眼差しでサイ魚を見る。
はぐれロボットにとって世界を放浪するサイ魚法師は、伝説のロボットなのである。
「サイ魚法師様、ぜひ私を弟子に。貴方様は我々ロボットのあこがれの人、伝説の人です。どうぞお願いしまーすー」
知恵が、まるでアイドルに対するようにサイ魚法師に言う。
「おいおい、知恵。戦いの途中じゃ。私はどうなるのだ。よいのう、サイ魚法師、ファンがいて」むくれる主水。
「おじさん、嫉妬だねー」
主水を見て、あざける知恵。
「サイ魚法師、頼む」
「しかたがないのう、主水、貸しは二つぞ」
(続く)
■ロボサムライ駆ける■第六章 古代都市
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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