グッドバイ ジミー グッドバイ

2024年06月10日 | 日記

  グッドバイ ジミー グッドバイ

Goodby Jimmy Goodbyという歌のメロディーと歌声が
自分のどこかにしみ込んでいる

それは恐らくラジオの音の記憶なのだ
占領統治下の日本で
占領軍のために放送されていたラジオの音の記憶なのだ

Occupied Japan で自分は生まれ
赤子である私の耳は 日本人である父と母の声と 
占領軍のラジオ放送を聞いていたのだ

赤子である私の目は
角のまるい木製ボディと 横長の窓に横にずれ動く赤い針
チューナーと音量の二つの茶色の溝を刻んだダイヤル
スピーカーの開口部に貼ってあった裂地の質感をさえ覚えている

私は 占領下の日本で
2460グラムの未熟児で生まれ
占領軍の為に流れるラジオ放送の時代に 
栄養不良の子供として育ってきたのだ

テレビの時代になって
流れてきたアメリカのホームドラマの家族は とても豊かだった
犬が駆け回る広い庭付きの白い家
奥に見える曲がった二階への階段
豪華なソファーの前には大きなブラウン管テレビ

ハンサムなパパは いつもスーツを着ていて
美人のママは  膨らんだスカートの裾を翻していた
兄弟たちは健康で明るく 
兄は成績優秀で 弟は野球チームの一員だった
…と思う

白黒テレビの時代だったから
白い家は 白かったし 庭をかける犬も白かった
パパのスーツも白っぽかったし
ママのスカートも 白地に花柄だった
…ような気がする

老人の歳の今になって私は気づく
Jimmy たちが帰っていったアメリカは
ホームドラマのような豊かなアメリカではなかった

風が吹き 雨が降り
長くて寂しい列車の汽笛が 遠く聞こえる野道を
古いトラックのホイールを軋ませながら
帰らなければならない場所だったのだ

大阪大空襲の翌朝
焼き尽くされた街をあとに
あてどなく大阪平野を東に歩くお父さんに
何度も機銃掃射をあびせかけたグラマンの
白い笑い顔のまるで子供のような操縦士の帰って行ったアメリカは
きっと ホームドラマのような健全なアメリカではなかった

何の理由もなく お父さんを殴りつけた
酔っ払いの黒人兵の帰っていったアメリカには
きっと 帰る家も
I'll see you again と言ってくれる人もいなかった

占領統治の任を終え
彼らは 陸と海を旅して 何処に帰って行ったろう

Goodbye, Jimmy, goodbye
Goodbye, Jimmy, goodbye
I'll see you again but I don't know when
Goodbye, Jimmy, goodbye

Occupied Japan で 日本人の自分は生まれた
Jimmyはどんな顔をしていたろうか
肌の色は 白かったろうか 黒かったろうか
Jimmyは 自分のはじめての友だちだったのかも知れない

I'll see you again but I don't know when
Goodbye, Jimmy, goodbye


女学生

2024年04月05日 | 日記

女学生


春の透明な風をまとい
女学生が 顔をまっすぐに
颯爽と 傍らを過ぎる

今が 彼女の人生の最も美しい刻であることを
彼女は知らない

つぼみが膨らみ やがて花開こうとする人生の                                                                  ただ一時の貴い刻にあることを 
彼女は知らない

香気は ただ清々しいばかりで甘くはない
色気は ただ凜々しいばかりで色ではない

触れがたい透明な風に
自分の白い身体が 抱かれていることを
彼女は知らない

彼女にとって
彼女の今は 今の為の刻でしかない
それは 決して愚かなことではない

 

春空のまぶしさに
老いた自分は 思い出す

あぁ 貴方は
貴方の人生の最も美しい刻に
ほんの一瞬
私に 好意を寄せてくれたのだ

どこの世界でも どんな時代でも
少女は 永遠に                                                                               少年よりも大人だ

少女は 少年のままの自分をおいて
すぐに 大人になってしまった
そして 私は少年のまま 老人になってしまった

春の透明な風の中に
老いた自分は 思い出す
貴い気持ちで 思い出す

ほんの一瞬
私に好意を寄せてくれた少女の
彼女の人生の最も美しい刻                                                                          制服の彼女がまとっていた                                                                          透明な輝きに満ちた風を

 


進化系統樹の新しい実

2024年04月04日 | 日記

進化系統樹の新しい実


一発の弾丸の硝煙のCO2が
地球環境にもたらす影響を
環境学者は計算しない

一発のミサイルの噴煙のCO2が
大気圏にもたらす影響に
国連は言及しない

ミサイルによって撃沈された軍艦が
どれほど海洋を汚染し 海洋生物を殺すのか
環境団体は沈黙する

環境を守るために
環境を破壊し続けるメガソーラーに
市民はなにも言わない

人間に都合の好い環境開発は
他の生物にとっては
環境破壊に他ならない

人間は 自分が生物の一員であることを 忘れている
人間は 生身の肉体を有する生物である限り
人間という生物の業の中に 死ぬのだ

地球を守るためには
人類を滅ぼすのが 
最良の方法なのだ

そして 人間という生物は
その本能にもとずき
殺し合いをして 奪い合いをして
滅びてゆくのだ

進化系統樹は
やがて 別の枝に
新しい実をつける

 


余命

2024年03月22日 | 日記

余命


なるほど
余命を保つと言うのは
こういうことで
つまりは
余命を保つと言うことが
そろそろ難しくなってきていると言うことなのだ

日にちの経つのが 早い
土曜日は すぐにやってくる
昔は 一週間が長かった
刻の経つのが 長かった
老いぼれた今は 刻の経つのが早い
終わりに向けて 加速度を増しているような気がする

従兄弟たちが 次々と亡くなっていく
同窓会報の逝去欄に 覚えのある名前が増えていく
日本の未来が 暗く見える
若者たちの若さが くすんで見える
昔の日本を 懐かしんでばかりいる

生への執着が 薄れていく
父や母のことばかり 思い出す
父や母のあの頃が
あぁ そうだったのかと 
父や母の歳より老いた今となって 気付く

父や母のあの頃が
父や母の余命だったのだ
若者にも 余命はある
生まれたての赤ん坊にも 余命はある
老いぼれた私にも 保つ余命はある
その長い短いは 誰も知らぬことだ

自分はすでに 余命を生きたが
保つのが難しい私の余命も
眩しくはない若さの 今時の若者たちの余命より 
必ずしも 短いとは限らない


失敗

2024年03月20日 | 日記

失敗


人間は 殺し合う動物なのだ
人間は 奪い合う動物なのだ
人間は 犯し合う動物なのだ
人間は 騙し合う動物なのだ

神は 人間の道具にすぎない
神は 相手を刺し殺すナイフにすぎない
神は 相手から奪う理屈にすぎない
神は 強盗の覆面にすぎない

人間は 子供さえ殺す動物なのだ
人間は 親さえ殺す動物なのだ
人間は 百獣の最低な動物なのだ
人間は 虫けらたちにも劣る生物なのだ

彼らの理性は 彼らの中にしかない
彼らの知性は 彼らの蒙昧な知性の中でしかない
彼らの倫理は 彼らの道具である神の中にしかない
彼らの善は 彼らの肯定(イエス)の中にしかない

人間は 殺し合って進歩してきた
人間は 奪い合って拡大してきた
人間は 犯し合って増殖してきた
人間は 騙し合って繁栄してきた

人間は とっくに それに気づいている
人間は クスリで それから逃れようとする
人間は ペットで それから目をそらす
人間は 神の幻想に 自分を酔わせる

進化系統樹は 邪悪な実を付けた
その実のために やがて枝は折れる
その実のために 樹は腐り始めている
その実のために 樹は枯れ始めている

地球と言う星での 試みは
失敗だった