The Arioso Touch / The James Williams Trio
60年代のジャズが行き詰まりを見せ、王道のジャズを演奏していた多くのプレーヤーがアメリカに見切りをつけヨーロッパに渡った。ヨーロッパでは、ジャズはメインストリームだけでなく前衛からトラディショナルまでが分け隔てなく受け入れられていた。国民性の違いなのか、伝統文化を重んじるお国柄の違いなのか。
一方で、アメリカに残ったミュージシャンの中からメインストリームを再び復活させる動きが始まった。単なる昔ながらの懐メロではなく新しい感覚を盛り込んで、これが「新主流派」と命名された。
コマーシャリズムに取り込まれ、ロックに影響され、前衛に引っ張られていたジャズをもう一度真ん中に据え置き直した功績は大きい。これによって、ヨーロッパに一時退避していたミュージシャンもアメリカに戻った。メインストリームのジャズの復活である。
大雑把にはジャズの歴史ではこう語られているが具体的な出来事は山ほどある。今度もう一度スイングジャーナルでも読み返してまだら模様の頭の中を整理してみたいと思う。
メインストリーム復活の道筋も色々あったが、その中でコンコルドはオーナーのカールジェファーソンの好みもあって思い切り時代を遡りバップを超えて中間派といわれたポジションに活動の軸を置いた。したがって、そのカタログの中に「新主流派」といわれる範疇のアルバムはそれまでほとんど皆無に近かった。
しかし、プロデューサーにフランクドリティーが加わって、東海岸での録音が増えてくるとその中に今までとは違う流れが生まれていた。その中の一例がアートブレイキーとジャズメッセンジャーズだ。この頃のメッセンジャーズもウイントンマルサリスなど相変わらず若い強力なメンバーを加えて元気に活動をしていた。
コンコルドではその中から、さらにピアノのジェームス・ウィリアムスが抜擢され、ジャズメッセンジャーズとは別にリーダーアルバムもすでに2枚作られていた。演奏自体もグループとしてもまさに若手による「新主流派」といえるものであった。
それらは同じメッセンジャーズのメンバーであるテナーのビルピアースが加わったカルテットでのアルバムであり、昔からよくある「御大抜き」のサイドメン達によるアルバムといった感じでもあった。
そして、今回はウィリアムス自身のピアノトリオでのアルバム。それに、メンバーがバスターウィリアムスとビリーヒギンズとバックを代えてよりウィリアムス色を強くした。
ピアノの世界で「新主流派」というと多くはビルエバンスの流れを組んでいる。バドパウエルが影響力を持っていた時代は右手のシングルトーンのメロディーと左手のリズムのバランスの上手さを競っていたが、エバンス以降は両手の和音の作り方の妙が前面に出てきた。
このウィリアムスのピアノは丁度その中間のような気がする。
全体は「新主流派」の流れだが、メロディーの作り方が実に上手い。まさに、コンコルドの伝統である分かりやすいいメロディーラインを重んじたプレーだ。かといって、コンコルドのピアノの看板であるデイブマッケンナやロストンプキンスとは同じではなく明らかに違うスタイルだ。コンコルドにもやっと「新主流派」のピアノが生まれたということだろう。
このアルバムを久々に聴き直したが実にしっくり聴けた。
ジェ-ムス・ウィリアムスというと、この後に吹き込まれたMagical Trioの方が有名だが、こちらは共演しているレイブラウンや「元のボス」アートブレイキーに合わせているのか、プレー振りも新しさを控えているような気がする。較べてみると明らかに「新主流派」としても演奏はこのアルバムの方が上を行っている。
タイトルの“Arioso”というのは、クラッシク用語で「よくうたう」という意味らしい。同名のオリジナル曲もあるが、メロディーラインがしっかりした曲で演奏だけでなく曲選び、曲作りもメロディーを大事にしたアルバム全体がタイトル通り「よくうたう」作品だ。このプロデューサーはカールジェファーソン自身、それも影響しているのかもしれない。
あまり有名なアルバムではないと思うが、初期のウィリアムスのアルバムではいいアルバムだと思う。まあ、主流であろうと新主流であろうと、自分はジャンルを問わず「よくうたう」ジャズが好みだが。
1. You'd Be So Nice to Come Home To Cole Porter 4:44
2. Arioso James Williams 5:41
3. Day Dream Duke Ellington / John Latouche / Billy Strayhorn 5:30
4. Remember Irving Berlin 5:34
5. Phineas: The Living Legend James Williams 4:21
6. I Didn't Know About You Duke Ellington / Bob Russell 6:22
7. Don't Explain Billie Holiday / Arthur Herzog, Jr. 5:44
8. Judge for Yourself James Williams 5:37
James Williams (p)
Buster Williams (b)
Billy Higgins (ds)
Produced by Carl Jefferson
Recorded at Soundmixers, New York, February 1982
Originally released on Concord CJ-192
60年代のジャズが行き詰まりを見せ、王道のジャズを演奏していた多くのプレーヤーがアメリカに見切りをつけヨーロッパに渡った。ヨーロッパでは、ジャズはメインストリームだけでなく前衛からトラディショナルまでが分け隔てなく受け入れられていた。国民性の違いなのか、伝統文化を重んじるお国柄の違いなのか。
一方で、アメリカに残ったミュージシャンの中からメインストリームを再び復活させる動きが始まった。単なる昔ながらの懐メロではなく新しい感覚を盛り込んで、これが「新主流派」と命名された。
コマーシャリズムに取り込まれ、ロックに影響され、前衛に引っ張られていたジャズをもう一度真ん中に据え置き直した功績は大きい。これによって、ヨーロッパに一時退避していたミュージシャンもアメリカに戻った。メインストリームのジャズの復活である。
大雑把にはジャズの歴史ではこう語られているが具体的な出来事は山ほどある。今度もう一度スイングジャーナルでも読み返してまだら模様の頭の中を整理してみたいと思う。
メインストリーム復活の道筋も色々あったが、その中でコンコルドはオーナーのカールジェファーソンの好みもあって思い切り時代を遡りバップを超えて中間派といわれたポジションに活動の軸を置いた。したがって、そのカタログの中に「新主流派」といわれる範疇のアルバムはそれまでほとんど皆無に近かった。
しかし、プロデューサーにフランクドリティーが加わって、東海岸での録音が増えてくるとその中に今までとは違う流れが生まれていた。その中の一例がアートブレイキーとジャズメッセンジャーズだ。この頃のメッセンジャーズもウイントンマルサリスなど相変わらず若い強力なメンバーを加えて元気に活動をしていた。
コンコルドではその中から、さらにピアノのジェームス・ウィリアムスが抜擢され、ジャズメッセンジャーズとは別にリーダーアルバムもすでに2枚作られていた。演奏自体もグループとしてもまさに若手による「新主流派」といえるものであった。
それらは同じメッセンジャーズのメンバーであるテナーのビルピアースが加わったカルテットでのアルバムであり、昔からよくある「御大抜き」のサイドメン達によるアルバムといった感じでもあった。
そして、今回はウィリアムス自身のピアノトリオでのアルバム。それに、メンバーがバスターウィリアムスとビリーヒギンズとバックを代えてよりウィリアムス色を強くした。
ピアノの世界で「新主流派」というと多くはビルエバンスの流れを組んでいる。バドパウエルが影響力を持っていた時代は右手のシングルトーンのメロディーと左手のリズムのバランスの上手さを競っていたが、エバンス以降は両手の和音の作り方の妙が前面に出てきた。
このウィリアムスのピアノは丁度その中間のような気がする。
全体は「新主流派」の流れだが、メロディーの作り方が実に上手い。まさに、コンコルドの伝統である分かりやすいいメロディーラインを重んじたプレーだ。かといって、コンコルドのピアノの看板であるデイブマッケンナやロストンプキンスとは同じではなく明らかに違うスタイルだ。コンコルドにもやっと「新主流派」のピアノが生まれたということだろう。
このアルバムを久々に聴き直したが実にしっくり聴けた。
ジェ-ムス・ウィリアムスというと、この後に吹き込まれたMagical Trioの方が有名だが、こちらは共演しているレイブラウンや「元のボス」アートブレイキーに合わせているのか、プレー振りも新しさを控えているような気がする。較べてみると明らかに「新主流派」としても演奏はこのアルバムの方が上を行っている。
タイトルの“Arioso”というのは、クラッシク用語で「よくうたう」という意味らしい。同名のオリジナル曲もあるが、メロディーラインがしっかりした曲で演奏だけでなく曲選び、曲作りもメロディーを大事にしたアルバム全体がタイトル通り「よくうたう」作品だ。このプロデューサーはカールジェファーソン自身、それも影響しているのかもしれない。
あまり有名なアルバムではないと思うが、初期のウィリアムスのアルバムではいいアルバムだと思う。まあ、主流であろうと新主流であろうと、自分はジャンルを問わず「よくうたう」ジャズが好みだが。
1. You'd Be So Nice to Come Home To Cole Porter 4:44
2. Arioso James Williams 5:41
3. Day Dream Duke Ellington / John Latouche / Billy Strayhorn 5:30
4. Remember Irving Berlin 5:34
5. Phineas: The Living Legend James Williams 4:21
6. I Didn't Know About You Duke Ellington / Bob Russell 6:22
7. Don't Explain Billie Holiday / Arthur Herzog, Jr. 5:44
8. Judge for Yourself James Williams 5:37
James Williams (p)
Buster Williams (b)
Billy Higgins (ds)
Produced by Carl Jefferson
Recorded at Soundmixers, New York, February 1982
Originally released on Concord CJ-192