A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

あれだけとるのに苦労したグラミーだが、一度とると2度目は・・・

2014-11-03 | CONCORD

Top Drawer / George Shearing - Mel Tormé


音楽界で有名な賞にグラミー賞がある。第一回が1959年に行われ前年1958年の音楽業界での功績を称えた表彰が行われた。第一回の受賞作はというと。最優秀アルバム賞がヘンリーマンシーニのピーターガン、そして最優秀レコード賞がドメニコ・モデゥーニョのボラーレ。モデゥーニョという名前は忘れていたが、ボラーレはよく覚えている。この曲はレコード賞だけでなく楽曲賞も受賞する。当時の大ヒット作であったのだろう。これに新人賞を加えた4部門がジャンルを超えたその年もっとも優秀な曲であり、アルバムということになる。

1965年にはゲッツ/ジルベルトがアルバム賞、イパネマの娘がレコード賞とダブル受賞したのも有名な出来事であった。それまでジャズアルバムが受賞したことは無かった。もっとも、このゲッツのボサノバがジャズかというと、それにも異論が多かったが。

このグラミー賞には他にも細かいカテゴリー別の最優秀もあるが、そのカテゴリー数は2012年の再編で109から78に整理された。主な変更点は、ロック、ラップ、リズムアンドブルースなどの男女の区分などが無くなったこと、他にもアメリカのルーツ音楽(ハワイアンやケイジャンなど細かく分かれていたが各ジャンルの演奏者が少なくなりアメリカンミュージック一つに統合された。他にも色々細かく規定されているが、それにしてもジャンルが78もあるとは驚きだ。ジャンルの変更がそれぞれの時代でのまさにそのジャンルの栄枯盛衰を現しているのだろう。ジャズはまだ生き残っているようだ。

ジャズボーカルの世界は、1980年まではジャズの中のサブカテゴリーとしてBest Jazz Vocal Performanceとして男女一緒だった。翌1981年からはこれがmaleとfemaleに分かれる。この男女別に分かれた男の第一回受賞者はジョージベンソンの“Moody’s Mood”。一方の女性の方はエラやサラがまだ活躍していた時。男が別のカテゴリーになっても大物の男性ジャズボーカルは誰というと??が付く時代であった。
ジョージベンソンは、そもそもThis Masqueradeで1976年に最優秀レコード賞をとっており、サブカテゴリーはそれ以降も色々受賞していた。POP歌手だったのがこれでジャズボーカリストの仲間入りができたといった感じだ。

そして1983年2月23日に、82年度のグラミー賞の授賞式が行われた。5枚ノミネートされたアルバムから選ばれたのは、メルトーメの” An Evening with George Shearing & Mel Tormé”であった。

メルトーメにとってもグラミー賞は初の受賞であったし、コンコルドのアルバムがグラミーをとったのも初めてだった。オーナーのカールジェファーソンもご満悦だったに違いない。トーメのような実力者が初受賞というのも不思議だが、グラミー賞の位置づけが何となく商業主義の延長上に感じる中で、このような地味なアルバムが選ばれたというのも快挙であったと思う。

この受賞の報を聴いた2人は早速翌月には新たなレコーディングを行う。
受賞作を意識したのだろう、同じように2人にベースだけを加えたトリオ編成だが、今後はライブでは無くスタジオ録音となった。ベースはブライアントーフから、ドントンプソンに替わったが3人の呼吸は変ることは無かった。
トーメが抜けたシアリングのデュオの2曲を含めて3人の入魂のプレーが続く。2人がトーメのバックを務めるというのではなく、3人の表現力がこれほど対等に上手く噛み合うボーカルアルバムというのもあまりない。ライブではなくスタジオ録音ということもあるのだろう、3人の集中力は完全に内に向かっている。

一曲目は指を鳴らしながらスインギーに始まる。ドラムレスなのでシアリングのリズミカルなピアノが不思議なテンポを生んでいる。反対にスターダストをはじめとする誤魔化しの通じないバラード物も秀逸。9曲すべてがすべてひとつずつ作品という感じだ。捨て曲、おまけといった感じの曲は一曲もない。
此の頃のコンコルドのアナログ盤のアコースティックサウンドが実にいい音を出しているのも特筆ものだ。フュージョン系の作られた綺麗な音に慣れた耳には、当時このアコースティックサウンドは50年~60年代の耳慣れたルディーバンゲルダーなどの音とは全く別物で新鮮であった。

グラミーを受賞した勢いだろう、ジェファーソンはこのアルバムのタイトルを「Top Drawer(最上級)」とするアイディアを出した。
そして、一年後、このアルバムが翌年再びグラミーを受賞するとは、その時録音に参加していた当事者達の誰もが思いもしなかったと思う。しかし、出来上がったアルバムは受賞記念の2番煎じアルバムでは無く、まさに最高位のクラスに属する面々がトーメの最上の歌を再び引き出したレコーディングであったということだろう。

プロゴルファーでも一度も優勝経験がない実力者が一度優勝を経験すると後は吹っ切れて優勝を重ねることがある。そして優勝の陰にはキャディーの貢献がある。この2度の受賞にはジョージシアリングの存在が大きかったに違いない。このメルトーメも2度のグラミー受賞をきっかけとして、晩年の大活躍のスタートが切れたように思う。
  
1. A Shine on Your Shoes        Howard Dietz / Arthur Schwartz 3:06
2. How Do You Say    Auf Wiedersehen? Johnny Mercer / Tony Scibetta 5:45
3. Oleo                         Sonny Rollins 4:15
4. Stardust     Hoagy Carmichael / Mitchell Parish George Shearing 5:45
5. Hi-Fly                         Randy Weston 3:24
6. Smoke Gets in Your Eyes          Otto Harbach / Jerome Kern 6:02
7. What's This?                      Dave Lambert 3:13
8. Away in a Manger                    Traditional 3:51
9. Here's to My Lady            Rube Bloom / Johnny Mercer 3:20 

Mel Torme (vol)
George Shearing (p)
Don Thompson (b)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Pill Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, March 1983
Originally released on Concord CJ-219

Top Drawer
Mel Torme & George Shearing
Concord Records
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