A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

時代は変わっても、物事の本質はそうそう変わらないものだ・・・

2015-02-27 | CONCORD
Love Explosion / Tania Maria

大塚家具の経営方針の違いで親子の対立が激化している。従来からの会員制、対面販売を前提としてクローズドな客層に親身なサービスを行いたいという創業者である父親と、時代に合わせてよりオープンな買い易い場を提供していこうという長女の主張の違いばかりがニュースでも強調されるが、長く使える良い物を生活者に提供していこうという基本スタンスは同じようだ。

昔であれば、2つのチャネルを作るとか、サブブランド化するとか色々考えられたが、今の時代、特に上場をすると尚更、収益性重視、無駄を排除して選択と集中が求められる。両方の販売手法の違いが共存するのは難しそうだ。ここまでこじれると白黒つけざるを得ないような感じだが、いずれの道を選ぶにしても、創業時の企業理念を忘れないでほしい。

自宅の中を見渡しても、親から引き継いだ家具や調度品はあるものの、自分が買い求めたもので子供の代まで使って欲しいという物は残念ながら見当たらない。強いて言えば、ジャズのアルバム位だ。きっと昔は家を継ぐという文化の中で、守らなければならないものの中に代々続く家具や調度品も含まれていたのだろう。

自分は決して今の使い捨て文化、そして収益性重視の経営がいいとは思わないので、そんな世の中で、職人気質の伝統と、社員を含めて家族的な経営の良さを残して生き残って欲しい企業だと思う。どこかに折り合いがつく場がありそうなのだが、親子故に余計難しいのか?

1983年、設立してから10年近くを経たコンコルドレーベルも拡大を続け、この頃はオーナーのカールジェファーソンがすべてのアルバムを直接プロデュースすることは無くなっていた。自らはエグゼクティブプロデューサーに修まり、アルバムの内容は他のプロデューサーに任せ、あるいはミュージシャン自身に任せる事も多くなっていた。良い後継者、ミュージシャンが育っていたので、スタイルは多様化したが、コンコルドらしい共通したコンセプトは引き継がれていた。

コンコルドの設立当初は、ジェファーソンは自分のコンセプトに合った新たなミュージシャン、特に新人のリクルートをアルバム作りに参加したミュージシャンに任せることも多かった。スコットハミルトンはジェイクハナが見つけてきたし、このタニアマリアもチャーリーバードの紹介であった。

他の新人達も着実に育っていたが、特にこのタニアマリアは、ジャズとブラジル音楽の融合に一役買った。それに加えて、折からのフュージョンブームに乗って、ブラジリアンフュージョンとでもいう新たな世界を切り開いていった、コンコルドの中では異色の存在であった。

アルバムを出す毎に、次第に彼女の演奏内容も独自色を色濃く出すようになっていた。
今回のアルバムは弾みがついた。一番の特徴は演奏する曲、このアルバムで4枚目になるがついにスタンダード曲は無くなり、自ら作曲した曲だけが並ぶ。ピアノもエレキピアノを使い、さらにバックの編成もアレンジも完全なフュージョン仕様になっていった。スタジオも、そしてレコーディングエンジニアも替えた。バックも今まではトリオにパーカッションだったが、今回は管を3本加えている。

このConcord Picanteというサブレーベルは、コンコルドで単にボサノバだけでなくラテン系を扱うために別に生まれたものだった。カルジェイダーやチャーリーバードなどのベテランがアルバムを作ったが、その中で、このタニアマリアは急に頭角を現した一人だ。世に認められるにしたがって、自分のやりたいことも広がったのだろう。そして、フュージョンサウンドに惹かれたのだろう。

ジェファーソンは、そんな彼女の想いを自由に表現できるように、今回はアルバム作りも彼女にプロデュースを任せた。しかし、この内容にジェファーソンは満足していたかどうかは分からない。この後、もう一枚ライブアルバムを出すが、結果的にそれを最後にタニアマリアはコンコルドを去ることになる。



昨年、彼女が久しぶりに来日した。残念ながらライブには行けなかったが、聴きに行った友人が相変わらずピアノも歌も素晴らしいと語っていた。会場を巻き込んでいく術も弁え、その演奏ぶりはデビュー当時と変わらなかったという。デビュー当時のようにボサノバのスタンダード、さらにべサメムーチョなどの古い曲、そしてもちろん彼女のヒットしたオリジナルなども交えて。
もちろん彼女のブラジル生まれのリズム感と、クラッシクで鍛えたピアノの技、そしてなんといってもボーカルの素晴らしさが失われることはないと思うが、考えようによっては原点回帰をしているのかもしれない。もちろん色々経験したことが糧となって一段と逞しくなって。

その時々の流行を追いかけるのもいいけれど、カールジェファーソンが拘っていた、曲にしても、演奏スタイルにしても、そしてミュージシャンの技も、それぞれの本来の良さを素直に表現できる素晴らしさを、タニアマリアも理解する歳になったのだろう。

大塚親子の対決が果たしてどこに落ち着くか見守ってみたい。色々あっても求める本質が同じであれば原点に戻ってくるはずだ。結果が良かったか悪かったか、最後はお客が判断することになるのだが。

1. Funky Tamborim           3:14
2. It's All in My Hand        4:54
3. You've Got Me Feeling Your Love  4:12
4. Love Explosion           6:16
5. Bela Be Bela            3:50
6. The Rainbow of Your Love      4:22
7. Deep Cove View           3:15
8. Pour Toi              6:01

Tania Maria (p,keyboard)

Harry Kim (tp.flh)
Justo Almario (as)
Arturo Velasco (tb)
John Beasley (synthesizer)
Dan Carillo (g)
John Pena (eb)
Abraham Laboriel (eb)
Steve Thornton (per)
Dan Carillo (g)
Alex Acuña (ds)
Joe Heredia (ds)
Jon Lucien (vol)

Produced by Tania Maria
Keith Seppanen Engineer

Recorded at Yamaha Studio, Glendale, California in September-October, 1983
Originally released on CJ-230 (所有盤はCD)

Love Explosion
Tania Maria
Concord Records
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