企業は常々製品や業務の改善を留まることなく行っている。それを怠っている企業は
衰退し消滅していく。多くの企業、団体や個人は現状を改め、改善しより良いものを
作ることや、より良い結果を求めて常日頃努力をしている。自動車、航空機、船舶、
武器、産業機械、通信情報機器、家電などのイノベーションは短期間で大きな改良
改善がなされ目を見張るものがあり、我々はその恩恵に浴している。カイゼンは
企業発展になくてはならないものである。これは人間をはじめ凡ゆる生物が古来より
行って来た根源的な仕組みである。ダーウインの進化論にもあるように、鳥類、
動物や植物も長期間に亘って進化して行くのはこれに他ならない。然るに、世の中には
この原理から外れていると思われる事柄が数多く存在する。
交響曲などハイドン、ベートーベン、モーツァルトなどが作曲した200年から300年前の
古典派音楽、クラシック音楽が何故未だに多くの人に演奏され聴かれているのか。
何故、これらの偉大な作曲家に代わり数多く聴かれたり演奏されたりする作曲家が
現れないのか。過去200年以上に亘って音楽家は努力をしてこなかったのか、この為、
バッハ、シューベルト、ショパンなどを超える作曲家が生まれなかったのか。ベートーベン、
モーツァルトなどの音楽が聴かれることがなくなるのはいつの時代なのか。音楽などの
嗜好性の強い領域は進化論の枠外となるのか。名曲の判断は200年や300年ではなく
もっと長い数千年以上の期間でなされるべきものなのか。
クラシック音楽と異なり、日本の流行歌や演歌は何故歌い続けられることが少ないのか。
90年から100年以上前に歌われたいた、波浮の港(大正12年 1923)、出船(昭和元年 1926)、
鉾をおさめて(昭和元年1926)、侍ニッポン(昭和6年1931)、赤城の子守唄(昭和9年 1934)
などは今ではTVやラジオで歌われていることはあまりない。流行歌にはクラシック音楽の
ように世界中の人々から聴かれるような普遍性がないためなのか。180年前に作曲された
メンデルスゾーンの音楽は今でも数多く演奏されているのに、半世紀、50年前の田端義夫、
春日八郎、三橋美智也の歌がTVやラジオで聞こえてくることは殆どない。流行歌や演歌の
場合、音楽家の努力の結果、古い歌を超える良い歌曲が生まれた為に古い歌が消えて
いったのか。
文化財保護法で指定された国宝彫刻のほぼ全ては仏像であるが、国宝の仏像は何故、
飛鳥、奈良、平安、鎌倉などの時代に作られたものだけなのか。国宝となる仏像はどういう
基準で決められるのか。文化財保護法では「歴史上・芸術上の価値の高いもの、又は
学術的に価値の高いもの」を重要文化財に指定しており、その中で特に優れたものを
国宝と定めている。鎌倉時代以降も現在まで多くの仏師や彫刻家が仏像を製作しており、
中には美術的に非常に優れた仏像もあると思われるが、歴史や学術的な価値が少ない
と言う判断なのか国宝となることはない。何故、鎌倉時代を超える仏師が出てこないのか。
世界には多くの宗教がある。神道、仏教、儒教、道教、ヒンドゥ教、バラモン教、ユダヤ教、
キリスト教、イスラム教、土着宗教など、更にこれから派生した宗派を数えれば恐らく数百の
異なる宗教があると思われる。これらの宗教が生まれたのはいずれも千年以上の昔である。
しかし、多くの人々の心を捉える、これらの宗教に代わる新しい宗教は何故生まれないのか。
多くの人々に圧倒的に支持され、信仰される偉大な新しい宗教は何故生まれないのか。
新たに生まれた新興宗教はあるが太古の昔から信じられているこれらの宗教に代わり多くの
信徒を得るような宗教はまだ生まれていない。3,000年も長きに亘って続いた古代エジプト
宗教は紀元1世紀の初めキリスト教によって置き換えられたが、それ以降そのような宗教の大きな
変革はない。やはり、新しい宗教の出現は3,000年や5,000年の年月を必要とするものなのか。
老舗の料理店は、先祖代々引き継いだ秘伝の味を大事に守っている、と良く言っている。
江戸・明治時代の創業時の味を代々守っていくのが後継者の勤めであると言っている。老舗の
料理屋に行く多くの客はこれを評価する。これが良く分からない。創業時の味が完全でそれ
以上に良いものは出来ないと言うことなのか。何故、創業時の味をカイゼンしてそれ以上の味の
良いものを作ろうとしないのか。初代や二代目が大変な努力をしてほぼ完成されたものを作り
上げたのか。自動車メーカーのように何故日々改善を行わないのか。昔の味が変わってしまっても
良くなるのであれば客は減ることなく、前より増える、と考えるのは不自然ではない。
世の中の事象は方程式の様に答えが全て同じである必要はない。恐らく矛盾があり、公式が
ないのが人間社会の真実の姿と考えれば納得出来ない事もない。又、人類が様々な分野で
大きな変化を遂げるには数千年の時を必要とするのかもしれない。
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