アンコウ物語

徒然なるままに

魚の被曝

2013-03-12 23:04:06 | 原発事故

東京電力は2013年1月18日、福島第1原発の港湾内で昨年12月20日に採取された魚、
ムラソイから1キロ当たり25万4000ベクレルの放射性セシウム濃度が検出されたと発表した。

これは国の基準の2,540倍で、過去最高の値を記録した。2月15日には、港内岸壁に仕掛けた
かご網にかかったムラソイからは27万7千ベクレルが検出された。

 更にこのあと東京電力は2月28日、福島第一原発の専用港で採取したアイナメから1キロ
あたり51万ベクレルの放射性セシウムを検出したと明らかにした。このアイナメは2月17日、
魚が港外に出ないよう港の出入り口に仕掛けた刺し網にかかっていた。国の食品基準値の
5100倍で、事故後の東電による魚介類調査で最高値である。 これは同日の福島県漁業
協同組合連合会の組合長会議で報告された。東電は汚染魚の封じ込めの強化を県漁連に
伝えた。

 現在、食品中の放射性物質に関する規制値(ベクレル/kg)で魚は100ベクレル以下とされている。
やや大型のアイナメの重さは1kgである。規制値から考えて51万ベクレルと言う途方もない数字は、
被曝したアイナメが直ぐに死に到ると思ってしまうが実際はこの被曝量でも死ぬことはない。従って
人間がこのアイナメを食べても「直ちに健康に影響が出ることはない」かもしれない。

 1kgのアイナメが51万ベクレルなら、体重60kgの人間なら3千万ベクレルに相当する。3千万
ベクレルは673mSv.に該当する。一般に全体の中で100%の致死線量は7、000mSv.(7Sv.)、
50%の致死線量は4、000mSv.(4Sv.)、5%の致死線量は2、000mSv.(2Sv.)と言われて
いるので673mSv.ではまだ死ぬことはない。200mSv.以下の被曝では放射線障害の臨床的知見は
ないと言われている。一方、100mSv.で癌のリスクが0.5%増えると言う説があるが、他方、これは
誤りで100mSv.では癌の罹病率は零であるとの意見もある。いずれにせよ何が正しいのか分からない。

 それにしても、51万ベクレルも被曝したアイナメが無事泳いでいたことと、現在の規制値が1kg当り
100ベクレル以下となっている関係が良く理解出来ない。おそらく放射線の被曝の実態がまだよく
分かっていない状況なので厳しい規制値を設けているものと思われる。100ベクレルの規制により
漁業は多大なる影響を受けている。政府は除染後の放射線量は年間1mSv.を目標としているが、
除染でそこまで下がることはなく、年間20mSv.以上でも良い、と主張している専門家もいる。関係者は
正しいデータを出来るだけ早く出すことが望まれる。

原発に関わる様々な事柄は未だに解明されていないことが多すぎる。過酷事故防止策、被曝による
身体への影響、効果的な除染方法、廃炉の方法、使用済み核燃料の処理方法、など正確に分かって
いるものなど何もない。これら最低限必要なことを最初に確立してから原発を操業すべきだったと
言うの
は極く当たり前の事である。何も分からぬ状況で原発を動かすことなど認められる筈がない。


入り日

2013-03-11 22:35:28 | 自然・季節

家の近くから見た夕日です。先日、海の水平線から昇る朝日をみて、空に上がって行く
速さが印象的でしたが、同じく夕日が山に隠れるのも速いものです。「秋の日は釣瓶落とし」と
言いますが、春でも同じです。朝日は高揚感、期待感がありますが、落日は寂寥感、喪失感が
あります。いずれも太古から変わらず何度も繰り返される自然現象ですが、見る者の心の
あり方で様々に感じられます。一方で、童謡の「朧月夜」に出てくる「入り日」は何かほのぼのと
していて、明日に希望を抱かさせてくれるような雰囲気が感じられます。

        菜の花畠に 入り日薄れ
       見わたす山の端 霞ふかし
         春風そよふく 空を見れば
               夕月かかりて におい淡し

               里わの火影も 森の色も
               田中の小路を たどる人も
               蛙のなくねも かねの音も
               さながら霞める 朧月夜


今日は東日本大震災から2年目となる日、3月11日です。多くの人たちが様々な思いで
この日を迎えたものと思います。被災された方々が一日でも早く「朧月夜」のような平穏な
日々に戻れることを願っています。

 


安倍首相の経済政策

2013-03-02 20:55:03 | 経済

安倍首相による「アベノミクス」と称する経済政策が株価上昇や
円安を実現させたとマスコミなどが報じています。安倍首相自身は
一度も自ら「アベノミクス」などと言ったことはないと言う事ですが、
特に斬新な特徴のある経済政策とも思われず、アベノミクスなどと
マスコミが喧伝するのはおこがましいと言う気がします。安倍首相は
日銀に強要して2%のインフレターゲットを定めましたが、物価が
上昇して有利になるのは政府や企業の借金の返済ぐらいで国民に
とって得になることは何もありません。物価が上昇して賃金も
上がらず景気が後退するスタグフレーションにはならないと政府や
一部の経済学者が主張しておりますが、保証はありません。

昨年、スイスの銀行大手UBSが発表した世界72都市の物価
ランキングではノルウェ-の首都オスロが1位となり、スイスの
チューリヒが2位、東京が3位となりました。4位以下は、ジュネーブ、
コペンハーゲン、ニューヨーク、ルクセンブルグ、ストックホルム、
カラカス、10位ロンドンと続いています。別な時期では東京が1位、
大阪が2位と言う報告もあります。平均賃金の高さでは、チューリヒが
トップとなり、2位がジュネーブ、3位はコペンハーゲンと続き、
東京は8位となりました。各国の物価は為替などの要因により
変動するのでこれらが全て実態を表しているとは言えません。

世界の中でも物価が高く、平均賃金はそれほどでもない都市を
持つ日本が、更に2%のインフレターゲットを目標にして物価を
上昇させることなどもっての外です。非常識です。今の日本の
物価を少なくてもニューヨーク並かそれ以下にすべきと思います。
世界的に物価の高い日本が更に物価が上昇したら日本経済は
破綻します。古来より、物価が形成される要因は需要と供給の
バランスです。需要が適切に増加する政策を実行することが今、
政府に求められています。

少し古いデータですが、2005年8月に国立国会図書館が公表した
情報によると、現金、銀行預金、郵便貯金、有価証券、投資信託、
株式、保険などの家計金融資産は1、400兆円と報告されています。
最近ではこれが1、500兆円になったと言われております。一方、
企業の内部留保は2012年で267兆円以上まで増えています。
これらの資産を如何に消費や設備投資に振り向けるようにさせる
ことが、直ちにやらなければならない政府の課題です。企業の
生産性を向上させ、市場競争力を高め、賃金を上昇させるような
政策を、政府は実行すべきです。

 


公表と事実

2013-03-01 21:37:18 | 原発事故

東京電力広報による放射線量放出量

東京電力の広報に以下のような記事がある。

『当社は、福島第一原子力発電所1~3号機原子炉建屋からの、
現時点(平成25年1月31日公表時点)での放出量の最大値は
1時間当り約0.1億Bq(ベクレル)と推定しました。これは、
事故時に比べて約8、000万分の一の値です。』 

この数字、毎時1、000万Bqは、広島型原爆が毎日落ちているのと
同じ線量である。広島型原爆と福島第一原発の放出量を同一基準で
比較は出来ないが莫大な放出量であることは間違いない。又、この
東電の公表する数字はあくまでも推定で正確なものかどうかも疑わしい。
今年の1月現在でも毎日2億4千万Bqもの放射線量が放出されている。
然るに、
当時の野田首相は平成23年12月16日、原子力災害対策本部で
福島第一原発の事故収束に向けた「冷温停止状態(ステップ2)の達成」を
宣言した。事実上の収束宣言をしたが、こんな無責任なことはない。

避難指示解除準備区域の放射線量

先日、現在除染作業が行われている福島第一原発から20KMの町で、
除染作業を落札した大手企業の下請け会社による除染作業を見る
機会が
あった。建物から約3m離れた敷地内の竹林で、作業員が
5名で放射線量の
測定を行っているのを見ていたら、一人が測定器を
かざして線量を読み上げ
もう一人が記録をしていた。地上1Mの空間
線量で測定値が高い所で、
4.15μSv/hであった。

ここで作業をしていた係員にこの町で、これまで測定した所でどの程度の
線量があったのか尋ねたところ、10μSv/h以上の場所が無数にあると
回答された。この町は広報で定期的に町内の数十箇所で測定した放射
線量を
公表しているが、2011年3月12日以降、町内で地上1Mで4.0
μSv/h以上の
線量が測定されたとの報告は一度もない。何故、このように
実態と行政からの公表との間に
乖離があるのか。

政府は事故収束宣言をし、除染を行い、避難基準の変更を行い、早急に
住民を
帰還させるよう進めているが、事実と、東電、地方自治体や政府が
出している情報に
大きな隔たりがある状態では住民の帰宅は出来る筈が
ない。事実の公表に基づく施策なくして復興はあり得ない。