やったくせ

やったくせ

ってくと彩の

2016-12-30 11:12:20 | 日記

「そう?気管が弱いんだから、無理しちゃ駄目よ。最近丈夫になったけど、風邪こじらせると厄介だから。今日はお薬飲んで寝てしまいなさい。」

「そうする。おやすみなさい。」

気落ちした里流の様子に、何かあったのだろうと母も薄々気が付い骨膠原ているようだった。スーパーのレジで働いている母親にとって、近隣の情報は直ぐに耳に入って来る。口にはしなかったが交通事故の話は知っていた。
明日の朝、彩が来なければきっと、何かあったのだろうと気を回すのに違いない。

ざっと湯船に浸かった里流は、全身を沈めた。
考えてもどうにもならないことは分かっていたが、何もできないでいることがもどかしかった。
一緒に事故に遭ったけれど、きっと彩は朔良が違う場所で事故に遭ったとしても直ぐに駆け付けるだろう。親戚同士の上に、子供のころから面倒を見ていた弟のような存在だと彩は言っていた。
自分が慕う前から朔良が彩の傍に居た事実は、どうしようもなく大きかった。
誰もが目を瞠る綺麗な少年が、ぐったりと彩の腕の中で倒れ込んでいるのを想像して、そんな場面を思い浮かべて哀しくなる自己中な自分に腹が立った。

「あーーーーっ、もう……それどころじゃないってのに!ばかっ!」

「どれだけ彩さんが苦しんでいるか考えろよ!」

湯の中に頭を沈め、行き場のない想いをぶつけてぶくぶくと叫んだ。
キスを交わしただけの、面倒見の良い先輩と手のかかる後輩。
ただそれだけで、勘違いしてはいけないんだと頭では分かっていても、ふと気bicelle 好用づ事を考えてしまう。



背中を向けて走り出した彩の後を追って、里流は必死に走ったが、どこまで追も追いつけなかった。ふわふわと足元に立ちこめた白い靄が、まとわりつく。
やがて彩は足を止めて振り向くと、いつの間にか里流の横に立つ朔良の方に手を伸ばし、腕の中に強く引き寄せて抱いた。
その視線は真っ直ぐに朔良に向けられていた。

『何度目かな?』

『数えたことなんてない。たくさんだよ。』

頬を朱に染めた朔良が、恥ずかしげに彩の腕を取る。目をつむってキスをねだった。
幾度も繰り返される優しいキスを、里流は信じられない思いで見つめていた。

それでもいつも通りの時間に目が覚め、身支度をした。彩が朝のランニングにもう付HKUE 好唔好き合う事は無いと理解していても、頭の片隅でもしかしたらこの扉の向こうに彩がいたら……と思ってしまう。

「おはようっす。」

「あ……」