2016年のアメリカ大統領選挙の結果が、アメリカでも、また世界からも思いがけなかったのは、
クリントンが負けたから、というよりは、トランプが勝ったからである、と私は、思う。
2024年の大統領選挙を前に、
2016年の大統領選挙を振り返ることは、
きちんとした人物で、多くの長所が在ったようにも思えたにもかかわらず、何故クリントンが負けたのか、
また、奇抜な人物で、あれほど負けそうな状況から始まったにもかかわらず、何故トランプが勝ったのかを明らかにすることに役立つばかりでなく、
さらに、それは実際に起きたことの原因を明らかにし、2024年の大統領選挙を読み解く一助となるように思う。
クリントンの選挙運動が想像以上にどれほど拙(まず)かったのか、また、トランプの選挙運動がいかに驚異的な成功を収める巧(うま)さがあったのか、その巧拙を見ていきたいと思う。
私たちが、不思議なのは、非常に賢い人物であるクリントンが、どうして政治の世界であまり良くなかったのか、そして、政治の素人のトランプが天才になってしまったのか、ということである。
その分かれ目は、それぞれの振る舞いにあるのではないであろうか。
ステージ上のクリントンはよそよそしく、トランプには直接的な親密さがあった。
クリントンは論理的に真実を話していても説得力がなく、一方、トランプは、感情をあらわにし、事実を大げさに話し、効果的にその誇張された事実を話すことが出来た。それはトランプ支持の有権者にすぐに受け入れられた。
つまり、アメリカの有権者のある一定数は、
「トランプは有権者のことを配慮しているがクリントンは違う」とか
「トランプは信頼できるが、クリントンはそうではない」と思ったのである。
さらに、クリントンは、自分がトランプをはるかにリードしているのだから、あえて自分からイメージを壊すリスクを冒すべきではないという誤った考えのもとで、トランプの好き放題にさせてしまったのである。
私は、政策に拠る本当の解決策は、その政策の対象となる人々と間近に接することから生まれるし、自分が貢献したい、しようとする有権者から直接、彼ら/彼女らのことを学ばなければ、信頼を得ることになど到底出来ないと思う。
しかし、2016年の大統領選挙で、クリントンは、他の候補に対する大幅なリードと過去の栄光に甘んじていられると考えていたようにみえる。
しかし、地方やラストベルトに住む有権者はクリントンが自分たちに敬意を抱いておらず、自分たちの苦しい状況を理解しているとは決して思っていなかった。
これらの要因もあり、クリントンの磨き抜かれたイエール大学仕込みの雄弁術は、結局大きなハンデとなった。
確かに彼女は、優れた弁護士で、一貫性とメリハリのある、完璧な演説を行ったかもしれない。
一方、トランプの演説は筋の通らないことも多く、常に言いたいことが不明瞭であるが、彼は140文字のツイートで生き生き(または活き活き)と輝いて見せた。
そんなトランプに多くの人々は好ましさを覚えるようになると同時に、クリントンに関心を持たなくなった。
その理由は、トランプが大衆にとって親しみやすく、また、トランプが大衆のことばで語ったからである。
そこが、トランプとクリントンは違っていたのだと私は、思う。
トランプは一個人として市民のひとりひとりに語りかけるような印象と、彼らと個人のレベルで気持ちを通わせ、彼らの痛みや不安、怒りを理解し確かめているかのような印象を与えることが出来ていたのである。
さらにトランプは、支持者が必要としていることや聞きたいことを語り、自分こそが、(2016年当時の)状況を正しい方向に導く覚悟と意志、強さを持ったビッグ・ダディであると人々に思わせることが出来たのである。
一方、クリントンの演説は、メッセージとしては正しかったのかもしれないが、語り口が拙かったと言えるであろう。
現に、クリントンは、本来、彼女を最も強力に支持する集団であったはずの女性、ラテンアメリカ人、黒人、イスラム教徒、移民の心に訴えることが出来ず、ついに女性がアメリカの頂点となる役職に就く体勢が整えられたあとでも、女性支持を増やすことが出来なかったことは、哀しい事実である。
結局、こうした事実が何を意味することは、成功する政治家は、
(良い意味でも悪い意味でも)人の心と頭脳をうまくつかみ取るということではないだろうか。
しかし、成功する政治家は必ずしも本当の政治家であるとは限らない。
きれいごと、や、ただの理想かもしれないが、私は、本当の政治家は、その人生を有権者とともに、有権者のために無私無欲で歩んでいこうとする人だと思う。
それは、自分を売り込むことでもなければ、自分の権力を拡大することでもない。
民主主義という名前の実験が始まった頃、政治的言説は、啓蒙という格調高い知的な形式で発せられていた。
そして、その頃は、議論には論理が必要とされ、理性に訴えなければならなかったはずなのである。
今の民主主義という名前の実験の様態は一体どうなのであろうか。
ここまで、読んでくださって、ありがとうございます。
2016年からアメリカ大統領選挙は、驚きの連続のように思います。
2020年もまたすごかったですね。
トランプというプレイヤーは、どこまで世界を変えてしまうのでしょうか?
アメリカ大統領選挙2024年を考えるシリーズ次回以降は、かつての大統領たちも取り上げてみたいと思っています。
今日も寒いですね。
お互いに体調に気を付けたいですね。
今日も頑張りすぎず、頑張りたいですね。
では、また、次回。
感じていたのがまさにそれでした。
かといって、トランプの言動は品性がなく、
この人がまさか大統領になるわけがない、
とも思っていたのですが・・・。
トランプが次期大統領に決まったとき、
一部の知識層がカナダなど他国へ移住していったのを
覚えています。もうアメリカには住めない、と言って。
次の記事も楽しみにしています!
おはようございます。
読んで下さってありがとうございます。
本当にトランプ氏が出てきてから、世界が予測不可能にになった気がいたします^_^;
楽しみにして下さって、ありがとうございます、嬉しいです( ^_^)
どうやら、いまのアメリカでは支持層がひっくり返ってるように思います。
常識的には考えられない人だと思いますが、
今回支持率が高いのも、コロナ禍後の物価高など、生活者レベルのストレスを上手く掴んでると思っています。
おはようございます。
読んでくださりありがとうございます( ^_^)
本当にトランプ氏が出てきてから、変わったなあと思います。
多摩爺 さんの仰るように、世界的な物価高やそれを引き起こすひとつの要因である終わらない戦争もトランプ支持のひとつの要因になっていますよね......。
私も興味深く読ませて頂いています💕
これからも楽しみにしています。
おはようございます。
読んでくださりありがとうございます( ^_^)
前回は、お返事が遅れてごめんなさい(>_<)体調を崩していました(´`:)
ピエリナさんもまだまた寒いですが、体調にお気をつけて下さいね(*^^*)
知らないことばかりが書かれているので大変勉強になります。
もし僕の解釈が間違いでなかったら、今のアメリカはすでに限界が来ていて、世界第1の経済大国も危機的状況にあり、トランプのごとき詐欺師が、民衆をだまして政権を取ろうとしているような気がしますが、結論はまだようこさんの続きを読んでからですね。
ただ印象としては生活が苦しいのは日本だけでなくアメリカ国民の生活も苦しいように思えました。
とても興味深いです。続きが楽しみです。
お体の調子はいかがですか?
無理せずお体を大切に。
こんばんは。
読んでくださりありがとうございます。
日本も、アメリカも、ヨーロッパも世界が皆物価高で苦しんでいますよね。
政権を選ぶ基準も数年前より変わっているように思います。
体調はだいぶ良くなっています、ありがとうございます( ^_^)
amocla91 さんも体調にお気をつけてお過ごし下さいね。