トランプの台頭は、世界にとって、まったく予測できなかったことではないだろう、なぜなら、彼の台頭は少なからず、私たちの精神を映し出したものであるからだ。
フリードリヒ・ニーチェは、
「狂気は個人にあっては稀有なことである。
しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である」
と述べている。
しかし、トランプを大統領に選び、さまざまな問題が指摘されながらも、再び、トランプを大統領に選ぼうとする社会に対して、私たちはあまりにも議論をしようとしていないように、私は、感じる。
ところで、
精神療法家が、最初に行う最も重要なことは、患者の立場に身を置いて考えることである。
「自分がこの人の状況にいたら、私もこの人のように行動し、考え、感じるかもしれない」
という前提に立つことから始めるのである。
私たちは、各々、細かい部分に違いがあるとはいえ、大まかなところでは基本的に皆同じ人間なのであるから、
似たようなニーズや不安、欲求不満を抱え、似たような形で人生の危機に対処している。
また、認知と神経科学の研究から、政治的保守派の人々は、恐怖を感じる状況により強い反応を示す傾向があることがわかっている。
トランプの支持層が、(例えば、銀行員や実業家に)限られていたならば、彼は、勝利を収めることは困難だったであろう。
しかし、トランプは一般市民の熱烈な支持を得て勝ったのである。
確かに、彼ら/彼女らの利益を満たすという点では、民主党の方が優れているかもしれないが、
共和党の方が、彼ら/彼女らの心理をよく理解していた。
民主党がもともとの支持者を失ったのは、彼ら/彼女らを理解し、理会する努力を怠ったからである。
一方、共和党は、民主党より優れた心理学者となり、巧みなセールスパーソンになり、もともと共和党支持ではなかった有権者を獲得したのである。
つまり、どちらも選挙に勝って、国を治めるためには、
「自分がこの人と同じ状況にいたら、私もこの人のように行動し、考え、感じる」かもしれないという前提に立てる政治家、心理学者、セールスパーソンにならなければならないようである。
精神療法において、精神療法家と患者の協調に必要なことは、
政治家と私たちの効果的な協調に必要なことでもある。
以下は、精神療法における基本的なルールなのであるが、
一通り読んだ後、「精神療法家」を「政治家」、「患者」を「有権者」に置き換えて読み直してみてほしい。
・精神療法家は誠実であること、また患者にも誠実であるように促すこと。
・精神療法家は患者との強い絆を築かなければ、患者を助けることはできない。
・精神療法家は患者の言葉づかいで話をする。
・精神療法家は患者の話をよく聞き、患者が精神療法家から学ぶのと同じくらしい多くのことを患者から学ぶように努める。
・精神療法家の努力すべてが患者本人に向けて行われていることを、患者にわかってもらう。
・共感と信頼が治療に最も必要な要素である。
・痛みや恐怖、怒り、落胆を自由に表現するように、患者を励ます。
・患者のニーズと、患者がそれをどのように満たしてほしいと感じているかを確認する。
・現実的な目標と期待について語り合う。
・性急な判断をしない。
・徐々に希望を持たせる。
・事実や数字を示すよりも、比喩やイメージ、例え話を用いる方が有効である。
・精神療法家が自分の感情を意識し、それを効果的に活用する。
・治療中の何もかもが、同じ重みを持つわけではない。
精神療法で語られた内容の10
%に満たないことが、患者の変化の90%以上に貢献することもある。
精神療法家は、患者が潜在的に持つ変化への転換点に常に注意し、変化を起こすためにできることは何でもする。
これらのルール(の構造)と置き換えからわかることは、
確かに、ごく一部の偉大な政治家は、生まれながらにしてこのルールを本能的に体現できる素質があるのかもしれないが、
大部分はそうではないはずだ。
しかし、よい政治家が、精神療法のアプローチ(このルールが良い例である)を役立て、精神療法のアプローチから多くを学び、得て、有権者との日々の取り組みに活かせば、さらによい政治家になると、私は、考えている。
ただ、精神療法のアプローチは役立つヒントではあるが、それ以前に、
まず、同じ人間として、
有権者が、政治家にニーズや不安を無視をされたり、何も聴かずに誤解されたり、平気で嘘をつかれたり、したときに政治家自身ならどう感じるか、を想像してほしい、と、思う。
ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。
アレクセイ・ナワリヌイ氏が、2024年2月16日、収監先の刑務所で亡くなりました。
ナワリヌイ氏は、
「もしあなたが、暗殺されてしまったら?」と問われた際、
「あきらめないで」
という趣旨のメッセージを英語とロシア語でのこしていたようです。
ナワリヌイ氏死亡のニュースを知ってからの2回「精神療法家から政治家が学べること」を前編と後編に分けて描かせていただきました。
世界がかつてないほど、密に繋がった今、
トランプが再選されて、アメリカが孤立すると、その結果、
世界の政治と経済、そして国際秩序に極度の混乱が生まれることは、想像に難くなく、また現実味を帯び始め、世界に緊張が走っています。
その混乱に、私たち日本人も否応なく巻き込まれていっています。
誰しもが、今すぐに、解決することなど無理ですが、まずは、「あきらめずに」問題に対峙するために、問題を認識することが大切なのではないかなあ、と、私は、思っています。
前編、後編と2回にわたりお付き合い下さりありがとうございました。
今日も、頑張り過ぎず、頑張りたいですね。
では、また、次回。
今日も暖かくて過ごしやすい1日になりそうですね。
精神療法家に政治家が学べること、前編後編両方ともとても勉強になりました。
患者、有権者の心をくむことが療法家、政治家には必要だということ、よくわかりました。そしてそれを悪用して選挙に勝ったからといってその政治家が善政を敷くとは限らないこともわかります。
今当のアメリカ以外の国々がこの選挙に危惧しています。僕もその1人です。
第2次大戦戦前の人々がヒトラーのドイツでの台頭をどう見ていたのだろう、と思って仕方がありません。
今の僕たちに何ができるかを考えながら今日も1日、頑張りすぎず頑張っていきましょう。
いつもありがとうございます。感謝感激です。
お互いに健康に気をつけましょう。
よい日曜をお過ごし下さい。
The2020では、トランプは米国史上最大の得票数でしたが、バイデンジャンプによって敗北しました。
トランプ時代は、世界で(大きな)戦争は起きませんでしたが、バイデンは少なくとも複数の戦争の切っ掛けを作りました。
The2024にバイデンが再選されて、世界のグローバル化が進むと、その結果、
>>世界の政治と経済、そして国際秩序に極度の混乱が生まれることは、想像に難くなく、また現実味を帯び始め、世界に緊張が走っています。<<
トランプは「各国は、自らの責任を果たせ」と言っているだけです。
こんにちは。
読んで下さりありがとうございます。
コメントありがとうございます(*^^*)
年代別の分析興味深かったです( ^_^)
先ほどはコメントが途中になっていてすみませんでした^_^;