冬桃ブログ

孤独のベランダ

 犬も猫も飼えなくなって久しい。
 住まいの内に生き物の気配が自分しかない。
 その淋しさを、年々強く感じるようになった。
 時折、イエグモを見かけると嬉しくなり
「いてくれたんだ! 冬場は蠅も蚊も
いなくてたいへんだねえ。大丈夫?」などと
勢い込んで話しかけるのだが、当然、無視される。
 毎年、卵から成虫になるまでを見守る蝶も、
冬場はいない。
 室内で熱帯魚だの鳥だのを飼うのはいやだ。
 なるべく自然な状態の生物を観察するのが好きなのだ。

 頼みの綱はベランダ。
 メダカを飼っている。
 前のマンションにいたときは、卵や稚魚を隔離して
三匹から何十匹にも増やした。
 でも引越しをする時、持って行く方法がなくて
(半ば強引に)友人のところへ養子に出した。
 ところが引っ越して時がたつとまたメダカが恋しくなり
植木市で三匹買ってきた。
 増やさないよう気をつけていたのだが、
それでもいまは23匹になった。
 しかしどういうわけか、今度のメダカたちは
おそろしく警戒心が強い。
 私がメダカ鉢に近づこうものなら、
みんなして素早く物陰に隠れる。
 エサを撒いても出てこない。
 私がいなくなると、そうっと出てきて警戒しながら食事を摂る。
 哀しい。
 なにゆえに嫌われてしまったのだろう。


 残るは街場の野鳥だ。
 前のマンションではヒヨドリが常連。
 ベランダの手すりが幅の広いもので、
外側に柵もついていたからプランターを置くことができた。
 そこに果物やパンくずなどを置いておくと
毎日、ひよどりがやってきた。

 雪が積もった年。


 でもいまの住まいにはベランダの手すりに
こういうでっぱりがない。
 仕方なく、細めの柵にウインナなど載せておくと
素早くカラスがさらっていく。
 サッと来てサッと去るだけ。愛想がない。
 他の鳥はカラスが怖くて寄ってこない。

 なんとかならないかとベランダの中にある台に
魅惑的(であろう)餌と水を置いてみたのだが、
なぜかこのあたりでは
メダカも野鳥も用心深くなるのか(いや、それは言いがかりだが)
頑として入ってこない。

 しかし諦めなくて良かった。
 数日前から、ヒヨドリとスズメがベランダ内に
やってくるようになったのだ。

 スズメ
 

 ヒヨドリ


 嬉しいが、難点はベランダが糞だらけになること。
 彼等が食事を終えて立ち去った後、私はせっせと糞掃除。
 それでも、孤独を癒やしてくれるのだから
文句は言えない。
 
 気配がありすぎても対処に困るから
もっと田舎に越して戸建てに住む、という選択肢は
いまのところない。
 春になったら、また蝶が来てくれるかもしれないし、と
パセリもプランターに植えた(キアゲハの食草)。
 ささやかな望み、ささやかな暮らし。
 こういう情勢下では、その「ささやか」が続けば
とりあえず幸運だろう。

 葉っぱだけの状態で買ってきたネモフィラは
どんどん花をつけてくれた。
 だけどそのそばに植えたチューリップは
買った時のまま、ずっと、とんがり帽子状態。

 

 

 
 
 

 
 
 

 
 

コメント一覧

yokohamaneko
ミドリムシさん、鳥も昆虫も一羽一匹一頭ずつ、
よく観ていると個性があります。人間と変わりはありません。
だから人間に対するのと同じ興味で見ています。
ミドリムシ
こんにちは。neko先生。手すりの、ウィンナーを…さらって行く愛想なしのカラスを想像すると…何か…笑ってしまいます。(孤高のベランダ)…スズメやヒヨドリ達は何とも可愛いらしいですね(お写真)💕。遠くの空からでも…ちゃんと、魅惑的なお食事🍴が並べてあるのを…見逃しません。どうか、カラスの略奪から守ってあげてください…🐤run~run🎵
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