冬桃ブログ

ほんとに甦るのだろうか、この国は。

 日曜日の昼近い頃、小学校四年の名付け子が、思いがけずメールで
「一緒にみなとみらいへ行かない?」と誘ってくれた。
 彼女はメールを始めたばかり。なにげなく書いたようだが、光栄にも
名付け親になった私は大喜び。真夏日だというのに、即、オーケーした。
 両親は知らなかったらしく、あわてたはずだが、それでも喜んでる私の
気持を汲んでくれて、いきなり名付け子一家四人(私の名付け子は
姉妹なのだ)と私の計五人、桜木町駅で合流となった。

 第一目標のカップヌードルミュージアムは、入館だけで一時間待ちとわかりパス。
 ではチャーミングセール中の元町を見がてらお昼を……と移動したものの
もの凄い人出で、我々はまたたくまにランチ難民となった。
 横浜の中心地では、いつもなにかしらイベントが行われているが、この日は
トライアスロンも開催されていたのだ。
 さらに中華街へ移動したが、ここも元町に勝るとも劣らぬ人の波。
 一家のお父さん(カメラマン)が、「こないだ取材したばかりの店へ行ってみよう」
と言うので、あまり期待せずに市場通りの路地にある台湾料理の店へ。
 なんと、運良く五人入れた。しかも非常においしかった。
 で、この日はもう歩くのをやめ、我が家に来てもらって、故障してるあれこれを
直してもらったり、(この世で一番可愛くておもしろい)名付け子達の歌や踊りを見て
まったりしたりと過ごした。

 それにつけても、あの人出を見ると、3/11が幻のように思えてくる。
 みんな、こんなに元気に遊んでるじゃない。日本は充分、大丈夫じゃない!

 ほんとにそうなのだろうか。

 おびただしい数の人が、家も仕事も失った。被災地ではない横浜に住む私にさえ
その影響は大いにあった。被災地の復興だけでも、巨額のお金がかかる。
 復興するまで、被災者の暮らしを支えるお金も必要だ。
 原発事故の補償だって、東電だけではなく、国も補うべきものがあるだろう。
 これまで輸出していた日本産の物が、軒並み売れなくなっている。
 ただでさえ不況だったというのに、凄まじい追い打ちだ。
 経済大国であることを謳歌してきたこの国は、この先、立ちゆくのだろうか。

 先日、NHKの「原発事故への道程(前編)」というドキュメンタリーを観た。
 どのような過程を経て、原発が日本に導入されたか、ということがよくわかる、
非常に興味深い内容だった。
 「原子力の平和利用」というキャッチフレーズで原発が日本に誕生しようと
していた矢先、ビキニ環礁で行われた水爆実験によって第五福竜丸の船員達が被爆した。
 マグロも危ないと言われ、被爆国である日本では、一気に原発反対の機運が高まった。
 しかし、当時の日本は貧しかった。アメリカはヒロシマと長崎に原爆を落とし、
終戦後は日本のあちこちに基地を置いた国だが、その豊かさに日本人は憧れ、
結局、アメリカが推進する原子力発電に、大手企業も商社も飛びついた。
 ノーベル賞受賞者の湯川秀樹をはじめとして、反対する者は多くいたのだが
マスコミをたくみにあやつる正力松太郎の前にかすんでしまった。
 
 でも、私は自分自身をはじめ、日本人の多くがその共犯者だと思う。
 欧米のような暮らしがしたかったのだ。冷蔵庫、洗濯機、テレビなど、次々と
登場する電化製品の魅力にも抗えなかった。
 いま、「もとから自分は原発反対だった」とネットなどで偉そうに言ってる人たちも
その経済発展のたまものである携帯電話やパソコンを、大いに使用している。
 原発以前の生活形態にあまんじながら「反対」を叫んでるわけではないのだ。

 愛知県で使われるはずだった福島県産の花火が、「放射能を撒き散らす恐れが
ある」という市民の声で使われなくなった、というニュースがまた飛び込んできた。
 京都の五山送り火の際もそうだったが、なんと惨いことだろう。
 福島の人達が気の毒でならない。
 しかし、「じゃあ、あんたは安全を保証できるのか」と言われると、だれも
なにも言えなくなる。恐ろしい世の中だ。
 なのに横浜は、大勢の人で賑わっている。これは夢か幻か。
 名付け子一家と楽しい時間を過ごしながら、なんとも複雑な気持ちに陥ってしまった。




 

コメント一覧

冬桃
ニキさん

 コメントありがとうございます。
 私は「おかしいのではないか」という言葉さ
え口に出すのがはばかられるような世の中にな
るのが怖いです。
 「心をひとつに」というのは、一見、美しい
言葉ですが、もしひとつの国がひとつの思想で
かためられてしまったら、逆におそろしいですよね。こういう時こそ、そのことに気をつけなければと思います。
 最近、「アレキサンドリア」という映画のDVDを観ました。
 ヒュパティアという、実在した女性哲学者の
話なのですが、社会の中で自分の意志を貫くと
いうことの尊さ、難しさを考えさせてくれます。
 女であるということも……。ビデオ屋さんに
出てますから、機会があれば観てください。

 ところで、ニキさんの共感覚の絵、素晴らしいですね! 
 ニキさんにはこういうのが見えるんですねえ。
 羨ましいな、でも怖いだろうな……。
 
探求者ニキ
いろいろと怖い日々
http://niki200705.blog.fc2.com/
冬桃さん、こんばんは。
私は8月の「メモリアルウィークin小田原」の
孫崎享さんの話で、原発と日本について「裏の歴史」を聞きました。
最近思うのは、自分が何を知りたいか・知らせたいかによって「事実」がいくらでも変わってしまう、ということです。
それにしても、「がんばろう日本」と「福島の花火を使うな」は矛盾するのではないでしょうか??もし同じ人が両方とも口にしていたら何か怖いですね。それこそ差別の温床のような気がします。自分の頭で何も考えず、その場の空気と感情だけで判断する、という・・・
冬桃
ヒデサン

 そうですね。私も東海村の原発を見学したこ
とがあるのですが、9.11以降だったので、
テロ対策が過剰なほどなされているのに驚きました。
 しかしテロ以前に、ハードそのものに問題が
あったなんて、素人にはまったくわかりませんでした。
冬桃
怖い世の中になりませんように
濱のリリーさん

 私は差別と偏見が助長されることを、一番
怖れます。かつて拉致被害者問題が連日、
マスコミを賑わせていた頃も、北朝鮮のこと
ならどんなひどいことを言ってもいい、という
風潮がありました。
 少しでも「それは違うんじゃないか」と言お
うものなら国賊扱いでしたね。
 今回も「放射能」の一言で惨い差別や偏見が
横行しつつあります。
 せめて行政(国、自治体)は、安全をクリア
してるものについてはあまりブレないで、毅然
とした姿勢を貫いてほしいものです。
 差別と偏見が引き起こした過去の事例……
ハンセン病差別、関東大震災時の朝鮮人虐殺な
どを、決して忘れてはなりません。
ヒデサン
複雑
東電の半年以前のコマーシャル
「原発は安全です」!!
デンコです。
このコマーシャル
何だったのでしょうね?
濱のリリー
こんばんは。

冬桃さん、実は私も先週の土曜日 チャーミングセールが始まった日にやって来た
10代の姪と80の母と横浜を歩きながら(正確には歩いた後)、同じようなことを思いました。
横浜(多分東京も)は、楽しそうな(私たちだってそう)人人で溢れていました。
帰宅してポストをみたら 福島の広野町の友人が、大分に転勤になってホッとしたというハガキが。
しかし、福島に残った知人や親戚が心配だという内容に心痛みました。
私の実家の栃木だって隣だし、いつ放射能の心配が起こるかわからない・・・
まだ10代の甥や姪も心配・・・

ドイツの歌劇団一行は、秋の日本公演での来日を全員が拒否したそうです。
世界からそういう目でみられているんですよね。

このようなことが起きたから、原発反対とは思うけど、今までアメリカに憧れ近づきたいと思ってきた自分はどうなのよ!
と内なる声も聞こえて来ました。

本当に複雑な気分であります。これからの日本がとても心配です。
そして今、自分がどうしたらいいのか、どのような行動をとればいいのかもよくわからないのです。
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