冬桃ブログ

「謝甜記」の謝成発さん祝賀会

 お粥で有名な中華街の「謝甜記」。
 そのオーナーである謝成発さんがNHK地域放送文化賞を受賞された。
 今夜は中華街の大珍楼にて祝賀会。
 横浜中華街のスター経営者だけに、中華街はもとより、山下町、元町、
馬車道など、浜中心部の名だたる方達が駆けつけた。
 ホテルニューグランドの原会長、バッグの「キタムラ」の北村さん
宝田洋食器の宝田さんなどの顔が見える。
 


 いやあ、凄い。じつは私も、この賞を二年前にいただいたのだが
こんな華々しいお祝いなんかなかったなあ。
 一人、家で熱燗呑んでたっけねえ……。
 
 偉い人が多かったとはいえ、とてもアットホームで、笑いの絶えない楽しい祝賀会だった。
 それも謝さんの人柄ゆえだろう。
 私も、北村さんはじめいろんな方から「横浜の時を旅する ホテルニューグランドの魔法」
を読みましたよ、と声をかけていただいて嬉しかった。

 お茶目な主賓、謝成発さん。


 朝日新聞神奈川版に「60年代プリズム」というコラムを
連載しているのだが、今年の一月、たまたま謝さんに取材させていただいた。
 その時、書いたコラムがこれ。
 
  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「60年代の中華街ねえ。生まれ育った所だから私にとっては普通の町でした。
けど東京の友達に遊びに来いよと言ったら、怖いからいやだと言われたんです。
それで初めて、そんなイメージだったのかと知りました」
 お粥で有名な「謝甜記」二代目、謝成發さん(58)は言う。
 
 謝さんが子供の頃、中華街はいまよりエキゾチックだった。
 中国人、日本人、韓国・朝鮮系、インド人などの住居や仕事場があった。
 夜ともなればクラブやディスコのネオンがきらめき、米軍のベトナム帰休兵達が闊歩していた。
 独特の雰囲気が漂い、喧嘩や博打といった問題もたしかに多かった。
 
 その混沌とした町で、謝さんの父、謝甜さんは獅子舞を中心とする
中国の文化を守り続けていた。 
 そんな父から、謝さんは料理と共に獅子舞の技法も受け継いだ。
 戦後、長崎や神戸の中華街では伝統芸能がすたれていったのだが、
横浜ではきちんと継承されてきた。
 文化は華僑の心であり、誇りなのだ。
 
 70年代に入ると大きな転換期が訪れた。日中国交正常化、パンダブーム、
グルメブーム。中華街へ行けば中国が見られる、おいしい中華料理が食べられる
というので観光客が押し寄せた。
 料理店が急増し、食の町になったのはこの頃からである。
 折しもベトナム戦争が終結し、外国人向けバーも激減した。
 怪しいイメージは一掃され、世界でもっとも華やか、もっとも安全な中華街と
称賛されるようになった。
 謝さん達が大切にしててきた伝統芸能も、期せずして中華街の、いや、横浜の
大きな観光資源になったのである。
 
 謝さん達は神戸や長崎にも出向き獅子舞や龍舞を教えてきた。
「でも、龍舞は神戸の方がうまい。それも日本人ばかりの学生団体。
 3年間でマスターしたんだから立派です。うちの龍舞のメンバーに見せるため、
毎年、神戸から彼らを招待してます」
 中華街の祭に行くと獅子舞の傍らにいつも謝さんの姿があった。
 が、彼はもはやこの町の役職をいろいろと背負う立場だ。
 今年は横浜華僑総会の会長という大役にも就任した。

 「でもね、私が父から教えられたことを、いまは息子が引き継いでくれてます。
 日本も中国もいろんな時代があって、そのたびにこの町も翻弄されました。
 だけどどんな時も、親から子へ、仕事の技術や民族の文化を引き継いでいくことで、
老華僑はここを守り育ててきたのです」
 
 老華僑とは1980年以前に移住した華僑のこと。周辺の日本人との融和を計りながら、
自分達の立ち位置を築き上げてきた。
 それに対して80年代以降に入って来た華僑を新華僑と呼ぶ。
 彼らはすでに立派な基盤が造られたところへ入って来た。
「コックを雇って自分は経営だけする、あるいは店舗を貸して上がりだけとる、
金さえ入ればいい……これは老華僑の二代目三代目にも言えることですが、
そういうやり方では先人の努力が無になりかねません。
 料理店を継ぐなら自分で調理場に入らなきゃ駄目です。
 もちろん日中双方の文化も勉強しないと」
 親子三代、それを実践してきた人だからこそ辛口の警鐘を鳴らすこともできるのだ。
  
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