大震災関連図書は私もだいぶ読んだつもりだが、
「よこはま若葉町多文化映画祭」で、関東大震災と
朝鮮人虐殺関連のドキュメンタリー映画が上映
されるというので出かけてみた。
それほど人出を予想していなかったのだが、
ジャック&ベティには行列ができていた。
他の映画のために並んでいた人もいたのだが、
私が行った「隠された爪跡」「払い下げられた
朝鮮人 関東大震災と習志野収容所」も、ほぼ満員。
関心の高さにちょっと驚いた。
二本で約二時間、タイトル通り、関東大震災における
流言飛語、それによる朝鮮人虐殺という大事件を
日本人、朝鮮人、それぞれの体験者、目撃者の
証言によって検証するという内容。
私は前日に「語りつぐ関東大震災~横浜市民
84人の証言~」という電子本を読んだばかりだ。
これにも、この事件のことが幾つも出てくる。
それゆえか、出版は見送られたようだが、
電子本として無料ダウンロードできる。
防災の観点からも、ぜひ多くの方に読んでいただきたい。
こちらから。
http://p.booklog.jp/book/76167
この本がまだ頭に色濃く残っているところへ、
二時間のドキュメンタリー映画で「朝鮮人虐殺」の
事実をあらためて受け入れるのは、正直言って重かった。
歴史の暗部を知ると、人間をやっていることが辛くなる。
戦争のことも同じだ。
私は戦後生まれ、団塊世代トップだが、親の世代は
みな、戦争を体験している。
でも、それを子供に語ろうとする人は周囲にいなかった。
戦中や戦後の苦労など、思い出したくもなかったのだろう。
学校でも教わらなかった。
まるで他人事のように年号など暗記させられただけで、
私達が生まれる直前に終わった戦争とは、いったいどういう
ものだったのか、じっくりと知る機会はついぞなかった。
だから私達の世代は、原爆を落としたアメリカを
恨むこともなく、逆に憧れて育った。
アジアの国々を振り向くこともなく、眼はいつも、
華やかな欧米に向いていた。
音楽やファッション、文学、映画……欧米の文化は
どれも若者の夢をかきたてた。。
正直に言うが、韓国や中国、そして他のアジアの国々に
私が目を向けたのは、大人になって、いろんな意味で少し
余裕が出てきてからのことだ。
同年代に、私のような人は少なくないだろう。
さらに若い世代となると、経済大国である日本しか知らない。
民族教育を受け、戦争のなんたるかを繰り返し
教えられて育ち、いまも内戦状態にある中国、韓国、
北朝鮮の人々との間に大きな齟齬が生まれるのは当然だ。
なぜもっと早く戦後処理をしなかったのか。
なぜ子供達にきちんと教えなかったのか。
いまさらそれを言ってもしょうがない。
大人達は、敗戦国としての惨めな暮らしから
立ち直ろうと必死だっし、その子供である我々の世代は
頑張れば手に入る「欧米風の豊かな暮らしに」に
目がくらんでいたのだから。
日本人として、それはおおいに反省すべきだ。
けれども、反日運動がかってないほど高まっている
昨今、別の思いに、かられてしまうこともある。
私は口やかましい妻だった。夫に文句ばかり言っていた。
夫はすぐに謝るのだが、ある時、彼にこう言われた。
「人間はな、怒られたら反省するし、悪かったとも思う。
だけど繰り返し同じことを言われたら、うんざりして
開き直るんだよ」
だから、おまえの小言は、もはや逆効果しか生まない、
というわけだ。
なんだか非常に納得した。
いま、もしかするとその現象が起き始めているのでは
ないだろうか。
日本はいまだに「あの時、おまえ達は酷かった」と、
韓国、中国から責められ続けている。
私もあれこれ読み、「ほんとだ、二度とこういうことが
ないようにしないと」と、反戦の気持ちをあらたにする。
でも、それ以上責め続けられると、夫が言ったとおり
開き直りの気持ちが芽生え、「いいかげんにしてほしい」
と、叫びたくなる。
もし面と向かって、「おまえ、日本人として反省しろ!」
と糾弾されたら、そのうち、「知らないわよ、生まれてなかったんだから。
それに、あんた達の教科書には、自分の国がした悪いことが
ちゃんと書いてあるの? どうなのよ!」
と、逆ギレするかもしれない。
教科書の自虐史観が問題にされたり、安部総理が終戦追悼式の
スピーチに「不戦の誓い」を入れなかったり、在日韓国人、
朝鮮人へのヘイトスピーチが惨さを増したりしているのを観ると、
もしかして、「開き直り」「逆ギレ」現象が起きつつあるような
気がしてならないのだ。
だからといって自虐史観の一言で歴史を正視しないのも
私個人としてはいやだ。あったことはちゃんと知りたい。
文字が読めて、一応、考える力もある大人なんだから。
昔、近所に住んでいたおじいさんが、亡くなる少し前、
私にふと洩らした言葉が忘れられない。
「おれはこの歳まで真面目に生きてきたが、ひとつだけ
悪いことをしてしまった。戦争で中国へ行ったとき、
現地の女を犯したんだ。仲間もみんなやったよ。
だけど、悪いことだった。なんであんなことをしたのか……」
「払い下げられた朝鮮人 関東大震災と習志野の収容所」
というドキュメンタリー映画は、デマのために捕らえられた
朝鮮人(とみなされた人々)が、地方の村に「払い下げられ」
そこで村人達によって惨殺されたという衝撃的な内容だった。
「払い下げ」というからには、その村に一人いくらという
お金が支払われたのだろう。
村同士で「朝鮮人」の奪い合いになったそうだ。
私が当時、こうした村の人間だったとしたら、どうしただろう。
「悪いやつらなんだから殺すのは当然」と思わなかっただろうか。
惨殺の一打に加わらなかっただろうか。
そんなことをするはずがない、という自信はまったくない。
関東大震災直後の横浜(NHK首都圏ネットワークの画面より)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/48/3997186c27841acb12cdb2f7a1c634a3.jpg)
海岸通りの惨状(同画面より)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/d2/bd67732c92c4c2b581e49f80e0e7b09f.jpg)
そこに街の瓦礫を埋めてできた山下公園(同画面より)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/82/d6508bbc525a3f032eea0af19dbcf7b4.jpg)