出かけて行く必要はない。
読書と映画で、魂の極上ツアーができる。
アメリカの女性作家、ディーリア・オーエンズの
作品二作、お勧めです。
「カラハリが呼んでいる」を読んだのは2021年。
単行本はずっと前に出ていたのだが、知ったのは
文庫本が出てから。
マーク・オーエンズ、ディーリア・オーエンズという
30歳と25歳の若き動物学者夫妻が、せっせと資金を貯め、
カラハリ砂漠でも人跡未踏だった地でフィールド調査に挑んだ。
その七年間にわたる日々のノンフィクション。
過酷な自然、ライオンやハイエナなどの危険と向き合いながらの
スリリングな日々が、ディーリアの一人称で進行する。
水は何よりも貴重だから、手を洗うのすら簡単ではない。
そんな状況でも、「私はマイクの妻であることを常に意識して
いつもうっすらと化粧をしていた」という著者の一面も、
女である私にはとても心に残った。
「女らしさ」「男らしさ」という言葉が否定されがちな昨今だが、
私はこういう「女らしさ」というか「女こごころ」を否定したくない。
もっとも私自身は、面倒くさくて続かないだろうけど。
この本の後書きで、ディーリアがその後、
70歳(69歳という説もあり)で初めて小説を執筆、
「ザリガニが鳴くところ」というその本が、全米で
大ベストセラーになっていることを知った。
翻訳が出ていたのでさっそく購入。夢中で読み終え、友人に電話。
「凄く面白い小説だから読んで! 読んだらすぐ返して!」
と強引に送り付けた。
ヒロインは湿地に独りで住む少女。
父親の暴力に耐えかね、母親、姉、兄が相次いで家出。
やがて父親も出ていき、少女は学校へも行けないまま
一人取り残される。「カイア」という名前すら忘れられ
人の口の端にのぼる時は「湿地の少女」としか呼ばれなかった。
心を寄せてくれるのは雑貨屋を営む黒人夫婦だけ。
カイアは湿地で貝を獲り、雑貨屋に買い取ってもらい、
湿地にある自然の恵みにはぐくまれ、なんとか生き延びた。
そして美しい娘に成長する。
まあ、このようにして物語が始まるのだが、
著者は動物学者だから自然界に詳しい。
その描写が細やかで美しい。
でもファンタジーでは終わらない。
じつはこの小説、ミステリーなのである。
だからこれ以上は言わない。
でも絶対に読んで損はない。
「ザリガニの鳴くところ」は映画化され、日本でも公開された。
私はアマゾンプライムのレンタルで観た。
ヒロインを演じたデイジー・エドガー=ジョーンズの
知的な美しさも、物語によく合っていた。
まず読んで、それから観ることをお勧めします!
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