アル・パチーノって聞くと、泡だったミルクを浮かせたコーヒーじゃなくて、アルコールのパッチ検査を思い浮かべてしまう管理人です。
イタリア系の俳優名を聞くとなにかそれだけですごい映画のように思ってしまうのは、たぶん美術史上の画家の名前に多いからなのでしょうか。日本でいうと、歌舞伎俳優や落語家の名がクレジットにあるだけで、なにかすごく堅苦しいドラマに思えてしまうという、あのトリックでございます。(名義詐欺にひっかかりそうですね!)
管理人は洋画をあまり観ないものですから、海外の俳優さんのお名前をあまり知悉しておりません。まあ、それでもアル・パチーノぐらいは聞いたことあったけれど。ペペロンチーノは知らんかったけど(もう、いい)
〇三年作の映画『リクルート』、アル・パチーノとコリン・ファレルという二大男優が共演ということで話題になったシネマらしいですが、恥ずかしながら後者のほうを知りませんでした、ごめんなさい。といいますか、このコリンちゃん(気安くよばないでください)が、ブラッド・ピットをすこし軟派にした感じに思えてならないんですけど。
で、主人公はコリンちゃん演じるジェイムズなんですが、どうもアル・パチーノ演じるバーク教官のように思えてなりません。というわけで、この映画はやはり名優アル・パチーノを見るためだけの映画と割り切っていいでしょう。あ、でももちろんこの若手男優もいい演技を見せてくれています。
そして、筋書きはなかなか練られておりました。以下、微妙にネタバレありです。
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名門マサチューセッツ工科大学の学生ジェイムズ・クレイトンは、卒業後の進路にも困らないほどのエリート。CIAのベテラン教官ウォルター・バークの誘いをうけ、就職先をCIAにしぼった彼は、採用試験もパス。しかし、訓練生となった彼を待ち受けていたのは過酷な訓練の数々。それは、信じていた女性さえも、友人さえも裏切り、裏切られの連続のマインド・ゲーム。
いったん離脱を余儀なくされたジェイムズは、バークの肝煎りで特殊任務につく。だが、それは彼を陥れるための周到な陰謀だった…。父親の事故死、なぜ彼が選ばれたのか───すべての謎は明かされる。向けられた銃口の前で。
最後まで真の黒幕が誰なのか、最後に笑う者がいるのかも、わからない。とても複雑に編まれたサスペンス。スパイ容疑をかけられた彼女を情報のために裏切ろうとしてできない若者。どこまでが自分を試すテストで、誰がしくんで欺いているのかわからない。主人公といっしょに視聴者も、とことん翻弄されていきます。あまりに入り組んでいるので、その結末もEDクレジットのあとで、どんでん返しがあるんじゃないかと、疑ってしまうほど。
ただ、この映画の訴えたいことはCIAの諜報部員養成をみせたサイコドラマというよりは、この映画のタイトルが示すように、リクルート活動をなじったものといえなくもなく。
アル・パチーノ演じる教官がつぶやく「それは仕事でしかない、我々の人格は無視される」(翻訳字幕でしたので、原文はもっと違うニュアンスかも)という台詞は、ある意味、衝撃的。とくに仕事を自分の人生の価値だとおいているワーカホリックの日本人には、皮肉めいて聞こえます。やたらとCIAを年収七万五千ドルの薄給(といっても、今の円高で換算しても年収六百万は超しますよね?じゅうぶん高級取りのように思えます。ただ命の値段にしては安いでしょうけれど)で汚い仕事をする公務員よばわりしてるのも、厭味なのかしら?
でも、いくら大金積まれたって、私ならイヤですね。こんな仕事。イヤというよりもできないでしょうけれど、かわいい嘘ならいっぱいつけますけどねえ、くふふ。(←誰もてめぇに頼まねーよ!)身近な人を欺いて生きる仕事ってスリリングですけど、こころの代償が大きすぎますよね。でも、知識の貯蔵庫というだけでなく、心身ともにタフであることがエリート階級であることはあたっているでしょう。落ちこぼれの管理人が言うんですから、間違いありません。
(〇九年一月十五日)