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7月14日の閣議で、日本政府は平成30年7月豪雨被害を「特定非常災害」として指定、即日施行されることが決定されました。
「特定非常災害」とは何か? 1996年6月に制定された、特定非常災害特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律に基づき、被災者の権利や財産を守るべく、甚大な被害をこうむった被災地域のみに配慮した行政措置を行うためのものです。 たとえば、運転免許などの許認可行為については、更新満了日が延長されるという措置。阪神大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震に続く5例目で、地震以外の水害では初めて。それだけ、今回の西日本豪雨の凄まじさを物語っています。政府が先日、被災者の住宅確保の手配をしたのも、同法8条、9条によって建築基準法および景観法における、応急仮設住宅設置の特例にのっとったものでしょう。
さて、「特定非常災害」については総務省公式サイトに「平成30年7月豪雨災害「特定非常災害」指定について」というお知らせコーナーがあり、具体的な措置がPDFで一覧できるようになっています。http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000283.html
便宜上、来年以降の延長期限は「平成」扱いになっています。
各種の特例措置を適用されるには、市町村が発行する罹災証明書が必要ですね。
・運転免許などの許認可等の存続期間(有効期間)の延長
運転免許は、法的手続きを経て特別にその行使を許された「許認可」のひとつにあたります。交通法規をきちんと遵守し、救命演習を受講した者でないと運転免許を与えられません。ハンドル握ってアクセル踏める人なら誰でも運転していいとなれば、この世の道路は空飛ぶタイヤと血まみれだらけになるでしょう。自動車運転は能力証明ではなく、車両を用いて、公共地帯を他者と安全に分かち合って利用することを国から許されているに過ぎない。この運転免許の有効期限が、被災地に限れば延長されるわけです。
ほかにも有効期限の延長が見込まれるのは、食品衛生法にもとづく飲食店の営業許可、医薬品医療機器等法にもとづく医薬品の製造販売許可など。宅地建物取引業や、建設業、電気工事業、旅行業や廃棄物処理業などの、許認可事業で有効期限(2年から7年まで業種により異なる)があるものが対象となるでしょう。
今回の措置では、平成30年6月28日以後に満了する許認可等が対象で、対象地域、満了日の延長期限などは、各府省の告示によります。最長で今年の11月30日までとのこと。
「存続期間(有効期間)が延長される許認可等一覧(http://www.soumu.go.jp/main_content/000564481.pdf)」が随時更新されるようなので、参照。
・事業報告書など法令上義務のある届出等の免責期限の設定
事業報告書とは、決算期ごとに会社の事業活動のあらましを記した書類。会社法435条第2項に基づき、株式会社に年度ごとに作成義務が課せられています。貸借対照表、損益計算書といった財務情報とは異なって、会計監査の対象外。取締役は、監査を経た事業報告を定時株主総会へ提出、株主の皆さんに報告しています。不正が発覚するとか、無駄にM&Aで収益悪化の恐れあれば株主から突きあげを食らうわけですね。作成義務や虚偽内容があれば、取締役等に罰則が科されます。
この事業報告書を含めた、法令上届出義務を本来の期限までに履行できない場合、平成30年9月28日までに行えば、行政上及び刑法上の責任を免れます。法令上届出義務で罰則規定があるものといえば多岐にわたりますよね。たとえば、労基署に提出する就業規則とか、雇用保険・労災保険の保険関係成立届や概算保険料申告書など。
・法人に係る破産手続開始決定の留保
平成30年7月豪雨により債務超過に陥った法人に対し、債権者から破産手続き開始の申立てがあっても、平成32年6月26日までのあいだは、裁判所による破産手続き開始の決定が猶予されます。ただし、当該法人が清算中ないしは支払い不能である場合は除かれます。
事業活動をしていると、毎月、何らかの締切がありますよね。
この7月31日は所得税の予定納税額(第1期分)の納付日ですし。お盆明けの8月末には、6月決算法人の確定申告、12月決算法人の中間申告と消費税・地方消費税の中間申告、さらに個人事業者の平成30年分消費税・地方消費税の中間申告が控えています。このたびの西日本豪雨被災地で農業や酒造メーカーなどはじめ甚大な被害を被った事業者は多いはずですが、国税庁の告示により国税に関する申告期限などの延長措置がとられています。
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いつか来るかもしれない災害のために
特別警報では、もう避難は手遅れ。生活圏内で浸水被害に遭いそうな危険個所をチェックし、いざというときの避難体制や非常時の手続きなどについて、職場や家族で話し合っておくとよいですね。
知らないと損する、災害時に免除されること(後)
「特定非常災害」に指定されなくとも、雑損控除や災害減免法による所得税軽減が受けられます。ご自身が契約者でなくとも当事者になる可能性はあるので、お住いの火災保険について契約内容を、ご家族全員で事前に確認しておきましょう。