陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

セーラームーンの死

2008-06-22 | 芸術・文化・科学・歴史

梅雨入りしたはずですが思ったほど雨が降りませんね。
一日の大半は社内にいるので関係ないけれど、先週末のようにめずらしく出かける段になって雨に降られた私は、やはり雨女かしらと思った次第。

昨日からある女性の訃報が気にかかっています。女優の神戸みゆきさんが心不全で死亡。まだ二十四歳という若さでした。
その年齢あるいはお亡くなりの日は、私に古い記憶をよびおこすものでありました。
テレビをあまり観ないので、この方を存じあげなかったのですが、思い当たるフシあり。拙所で「リボンの騎士」のミュージカルを話題にしたおりにいただいたコメントに出てきたお名前でした。
女優業のかたわらファッションの研究もされていたそうです。お写真を眺めますとひじょうに目鼻立ちの整った美しい方で惜しい方を亡くしたものです。これから華々しい活躍の舞台があっただろうに。ご親族の無念を思いますと、こころが痛みます。

「仮面ライダー響鬼」にもレギュラー出演されていたそうですが。各地のニュースでは「三代目セーラームーンの女優」というタイトルが踊っておりました。主役であったこともあるのでしょうが、「セーラームーン」というアニメ作品が、いまさら言うまでもなく国民的アニメ作品として認知されていることを実感したのであります。
ミュージカルの「セーラームーン」といえば、十代の頃、イベントに参加して友人といっしょに観劇したことがあります。
原作者の武内直子氏がいうように、女の子がチームを組んで闘うというスタイルは新しく、七〇年代の「ベルばら」ブームにつづき社会進出のめざましい女性にとっての、こころの支えとなったのではないでしょうか。じっさい私の知る限りですが今世紀の美少女戦闘バトルアニメの太い幹線をつくった作品といえそうです。

美少女が大活躍するアニメ作品の登場は、いっけん男性諸兄を購買ターゲットととしたマーケティング戦略といえるいっぽうで、じつはそれらの作品は女性にも望まれていたのではないでしょうか。あのシリーズはテレビ版第五作すなわち「セーラースターズ」では、王子様役の男性(第三シリーズからすでに影はうすくなりはじめてましたけれど(笑))が第一回から消失するというショッキングなはじまりでした。九〇年代後半うたかたの経済がはじけ、私たちが手ではつかめない夢の札束を資産だと勘違いしていたことに気づかされたときです。
豊かな男性と結婚すれば生涯生活の安定が約束される。そんな法則には私たちは頼れなくなりました。

すこしまえにもフリーアナウンサーの川田亜矢子さんが自殺した報道が世間をにぎわしたばかり。
私の中学時代の同級生にもフジテレビのアナウンサーになった女性がいるので、親しい話としてうかがいました。テレビ局から独立ときけばいっけんカッコよく思えますが、じっさい仕事を選べないので暮らしぶりがいいことはないとのこと。

ここ最近若手女性(作家の氷室冴子もふくめ)の訃報が目立つように思えます。それはいっぽうで耳目を集めるほど、社会の顔となる女性が増えてきたという証左なのかもしれません。
男性からみれば、今や女性の時代、女性は楽だ、甘えている、そう思われるかもしれないですが。じっさいそうではありません。ひとを惹きつけるために飾るのはたいへんですし、出しゃばりだと思われないように言葉遣いにも神経を払います。
恋に疲れ、上司にせっつかれて疲弊しつつ、それでも明日の成果のために夜遅くまで残っている同僚女性を眺めるにつけ思います。仕事も家事も、そして遊びもソツなくこなさなきゃいけない。ほんとうにお疲れ様なのです。

奇しくも二十代の男性が、秋葉原で陰惨きわまる殺戮をおこなったあと。
おなじ二十代でも男女でこうも違うのでしょうか。新卒採用でも女性のほうが覇気があると聞きます。偏見かもしれないですが、女性は他人よりは自分を傷つける方向性がつよいように感じます。(身体的という次元であって、心理的に追いつめるという点では女性のほうがはるかに恐いですが(苦笑))家庭に押し込められていた時代よりは生きやすくなったのかもしれませんが、男性と同じ、いやそれ以上の働きぶりを強いられます。
自分を傷つけるのは苦しいことですが、それをくりかえしてこそ強くなってきたので、母親というのは強い生き物だと感じるのかもしれません。人を一人生んで育てるエネルギーは、一企業がひとつのヒット商品をあみだすよりも大きなものなんですから。

やさしい風が吹くことは少ない。たたかう女性に幸あれ。
世の中に、強い者に犠牲にされる女性をみるのはもうたくさんです。



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6 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
お久しぶりです (亜夜)
2008-06-23 00:09:33
お久しぶりです。覚えていらっしゃるでしょうか?
パソコンが故障し、ネットから遠ざかっていたのですが、
先日、ついにパソコンを購入したので、
挨拶がてらここにコメントを残します。
神戸みゆきさんの死を他の場所で見た直後に、
ここへと寄らせて頂きました。
ちょうど同じ記事があった為、最後まで読ませて頂いた次第です。
万葉樹さんは本当にいろんな事を考えている方ですね。
いつも関心させられます。
私も働くことのつらさを身にしみて感じています。
転職を考えている折だった為、色んな事を思いながら、最後まで読ませて頂きました。
若くして亡くなられた神戸さんからすれば、
私の悩みなど贅沢なものなのでしょうが、
後悔のない人生を生きるため、私はこれからも悩み、葛藤していきたいと思ってます。
それでは、また伺いますので、よろしくお願いします。

※一度、誤って書きかけのコメントを送ってしまったかもしません。
その場合は、最初のコメントを削除してください。
お手数かけます。
返信する
ブログ再開おめでとうございます (万葉樹)
2008-06-24 00:07:28

ごきげんよう、亜矢様。おひさしぶりですね。
コメントありがとうございます。

PCが復活されたとのこと、喜ばしい限りですね。私はいまや公私ともにPCがなくてはならない生活になっていますので、一日でもPCに触らない日があると不安です。
とはいえ、いっそ半年ぐらいほんとうにネットやPCをつかう作業から離れた生活をしてみたいと思うことも。

>私も働くことのつらさを身にしみて感じています。
転職を考えている折だった為、色んな事を思いながら、最後まで読ませて頂きました。

仕事を辞めたいとか、変えたいとか思わない人はいないと思います。他人の人生の選択ですのでとやかく言うつもりはありません。私の友人にも転職をしてステップアップし、起業家になってセミナー講師をつとめるなど活躍されている方がいます。こういう女性の生き方は励みになります。

以前コメントいただいたのがアフィリエイトの記事でしたね。私も楽にかせげて生活できたら…と思うことしばしば。でもじっさい、そんなにうまくコトが運ぶわけはありません。
私もいまかなり残業あって、しんどいですしね。でもやはり好きなことができる仕事(ただし配属によっては違った職種にされるかもしれないですが…)ではあるし、職場の雰囲気も自分にあっているように感じるので楽しく通ってはいます。体力的には不安はありますが。

作家や芸術家をめざすためにずっとアルバイト生活をされて夢を追いかけるのもよし。よほど才能と自信があるならそういう冒険もしてもいい。でも、やっぱり本を読むだけでなく会社で働いて、人のなかに揉まれてこそ学ぶこともあるのではと日々痛感する毎日です。組織に属していて決まった月給(といっても高給取りではございませんが(苦笑))がいただける安心感って、いいですよね。

ちなみにコメントはひとつしかありませんでしたので、削除はしておりません。

個人的にはこのブログは私と同じくらいの年代の働く女性層に読んでもらいたいなと思っていますので、ご訪問は大歓迎です。ただし、うまくおもてなしできないかもしれないですが。
今日はかなり遅くなり疲れていますので、コメントがぎこちないですがご容赦ください。

ブログは仕事の息抜きととらえましょう。
ご多幸をお祈りしますね。
返信する
オトコであれ女であれ (Ms gekkouinn)
2008-07-16 05:52:56
>男性からみれば、今や女性の時代、女性は楽だ、甘えている、そう思われるかもしれないですが

いまどき、そういうオトコがいるとは信じがたいですが、昔から無能で嫉妬深いオトコはよくそう語って嫌われていましたよ。
仕事にオトコもオンナもないという働き方は、能力主義的かつ成果主義的でそれを望む女性たちも少なくありませんが、わたくしの個人的な体験での感想ですけれど、そういう性を過剰に意識した働き方は意外と仕事にプラスにはならなかったと思っています。
返信する
男も女もすなる仕事 (万葉樹)
2008-07-16 22:58:33
ごきげんよう、月光院さま。
コメントありがとうございます。

「オトコ」とカタカナ表記している点がなんだか意味深で笑ってしまいました。

たしかにいつもおねだり上手でなんのかんの助けられている女性もいます。いっぽうで男女雇用機会均等法の改正以来、女性の職種が大幅にひろがっています。

おっしゃるように過剰に性意識をもちこんでしまうのは問題かもしれませんね。私も紅一点の部署ではたらいておりますが、男性並みにはたらくには体力的にキツく、悔しい思いをすることがあります。

女性としては不快な発言も耳にはいったりしてストレスがたまる。周囲をみると女性ほどやっかいな仕事をまかされている、男性社員が女性の同僚を自分の彼女か家政婦かなにかのように勘違いしているのかしらなんて思ってしまうことも。

でも、男性は男性でそれなりに責任があったり、女性に気づかいをして疲れていらっしゃるのかもしれないですよね。
私はこれまでわりと女性のおおい環境が多かったので、なかなか性別をこえて共同作業をこなすのはむずかしいです。

個人的には男女差というよりも、上下関係がむずかしいですね。なんだかんだいいまして、タテ社会ですし。一日でもはやく入社した社員は、後れた者より優位にたとうとしますし。
たまに先輩格のかたにソフトのつかい方を教えたりするときなど、相手の尊厳をきずつけないように、すごく気をつかいます。仕事って教わるよりは教えるほうがむずかしいんですよね。
なるたけ波風をおこさないように仕事に没入できるといいのですが。

ところで月光院様は毎回お花などの写真を撮るのがおじょうずですね。お手製料理もレパートリーのすくない自分には参考になります。

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Unknown (急行大和)
2008-11-18 22:57:05
神戸みゆきさんは実写版の神風怪盗ジャンヌに日下部まろん(怪盗ジャンヌ)役で出るはずでしたが…
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Unknown (万葉樹)
2008-11-18 23:58:23
ごきげんよう、急行大和さま。
コメントありがとうございます。

きょうは神戸さんの月命日だったんですね。ファンの方にとっては悲しいでしょうね。

アニメの「神風怪盗ジャンヌ」は一、ニ度しか観たことがなくてあまり印象に残らない作品だったように記憶しています。ジャンヌダルクの生れ変わりなのに、和風の装いの変身美少女というのがなじめなかったというのが理由。すでに指摘されていることですが、怪盗という設定ももう使い古されてますしね。犯罪ものの物語にするなら、やはりもっと現実的なサスペンスタッチがよかったのではないでしょうか。
変身魔法ものは、現実の法のもとでの犯罪の重みを軽くさせてしまうように思われます。

「神風怪盗ジャンヌ」がミュージカルになるという情報が、公式なソースで検索しても出てこなかったので、真偽はさだかではないながら。
みゆき嬢の二十四歳という若さでの死は惜しまれるものですね。訃報に接してからはじめてその活躍の域を知ったのが悔しい限り。これから女優として開花する才能であったかと、無念でなりませんね。

ご冥福をお祈りするばかりです。

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