陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

慶応二年四月一日のニュース

2023-04-01 | 芸術・文化・科学・歴史

──慶応二年四月一日のニュースをお伝えします。

銃刀法違反・公務執行妨害・傷害容疑の住所不定無職、高知県出身の坂本龍馬容疑者の足取りは以前として掴めておりません。

坂本容疑者は、海上自衛隊神戸駐屯所で訓練を受けた自衛官候補生。しかし、近年の不況と財政難の煽りで防衛費が削減されたたため神戸駐屯所は閉鎖に追いこまれました。
失職した坂本容疑者らは、長崎に渡り、カステラ製作工場を立ち上げたものの、資金繰りと販路の開拓に失敗して倒産。銀行からの貸付金が不渡りを起こした責めをとって、経理社員の近藤長次郎が自殺しています。

この頃から、坂本容疑者は、世の中を憂い不平を募らせたメンバーと共に秘かに政府転覆を計画。ダミー貿易会社「亀山社中」の自称取締役を名乗り、政府の承認を得ずに英国から最新型の武器・破壊兵器の不正受注・密輸を行ったとされています。

京都の民宿・寺田屋に滞在中の坂本容疑者を、逮捕令状を携えた警視庁捜査員が訪ね、同行を促したところ、いきなり発砲。捜査員数名に重軽傷を負わせて、逃走しました。
坂本容疑者の背後には、地方分権を唱えるタカ派の山口と鹿児島の地方代議士、および彼らが率いる反政府組織がついていると目されています。
ある登山ガイドの証言によると、坂本容疑者は今年、鹿児島の霊山に潜伏し、遺跡を荒らしたととも伝えられています。

警視庁捜査本部は、全力を挙げて、坂本容疑者の行方を追っています──。


熱狂的な龍馬フリークの方々には申し訳ないおふざけです。
でも、当時の幕府が出したお触れ書きでは、坂本龍馬なる人物は、市井にこのように伝わっていたでしょう。
坂本龍馬って、ほんとうに英雄ですか? 坂本龍馬みたいに、なりたいですか?

幕末の志士が改革者のようにもてはやされています。「龍馬伝」だけでなくて、ここ数年ずっとそう。
しかし、血を流して体制を変えるという武力統治の時代に逆戻りできるわけがありません。今の政治家を維新の英雄と比較したってないものねだりというものです。そろそろブームも終わるでしょう。
判官びいきと同様に、志があっても道半ばにして命を落とした勇者への賛美というのは日本ではおなじみなのですが、はたして龍馬があのまま明治時代まで生きて、利益を得る武器商人になったり、何人もの女性を侍らせていたり、もしくは西郷隆盛のように不平士族にかつがれて政府に楯突いたりしたら、現今のように英雄としてあがめられたただろうかと、私めは疑問は尽きないのです。

戦国大名を会社の経営者になぞらえる大河ドラマもありましたが、時代はもはや近代なのにナンセンスです。
古くさいリーダー論が通じるわけなく、兵法で人が治められるわけではない。
諸葛亮孔明や竹中半兵衛みたいな名軍師気分で、ゲームプレイヤーみたいにすんなりと人が動かせるなら、派閥のいがみ合いなどなくて、とっくに日本は良くなってるでしょうに。
歴史上の人物になりきって、日本を動かそうという意志をもつ人がリーダーになってしまう恐さがありますね。

歴史はその時代にあった英雄を生むものです。現代の成熟した市民社会に、テロリストまがいの英雄は必要ではありません。
強いリーダーが何かと望まれているけれど、一人の権力者に権力を握らせたら、たちまち某国のような世襲制の独裁者国家になってしまいます。

むしろ必要なのは、リーダーの首がすげ変わったとしても、国が立ち行かなくならぬようなことのないしっかりした行政のシステムと、それを厳しく監視する国民の目なのではないでしょうか。


(2010年10月4日付け記事を2021年10月某日加筆修正のうえ再掲載)


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