陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「レナードの朝」

2018-03-24 | 映画──社会派・青春・恋愛

1990年の映画「レナードの朝」(原題:AWAKINGS)は、学生時代に視聴して感動した数少ない映画のひとつですね。
監督は「ビッグ」で一躍ヒットメーカーになった才女ペニー・マーシャル。今回は子供のこころを保ったまま大人になってしまった人間のお話。

レナードの朝 [SPE BEST] [Blu-ray]
レナードの朝 [SPE BEST] [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2015-12-25
売り上げランキング : 42480


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


研究者肌のマルコム・セイヤー博士は、精神病棟の神経科で臨床医として着任。
患者を植物かモノのように扱うこれまでの療法に反し、積極的に患者の意思を目覚めさせる取り組みをはじめる。なかんずく彼の興味を惹いたのは、嗜眠性脳炎で三〇年間昏睡状態の男レナードだった。試験的に新薬の投与をされたレナードは、みるみるうちに人間らしい機能を回復していった。他の患者にも投与したところ、めざましく意識を取り戻していく。病棟はにわかに活気づき明るくなった。
だが、昏睡中に奪われた時間、過去に住んでいる自分と現実のギャップに患者たちは苦しみはじめる。おまけに、薬の副作用で病状は悪化していった…。

レナードが目覚めるまでは、それこそこころ温まるようなエピソードの連続。実直なセイヤーの人柄に惹かれて、院内の看護婦や介護士などが協力的になったり。目覚めたばかりの患者との交流は、家族のようで微笑ましい。だが、患者たちはそれが一時的な薬に頼ったもので、完全ではなく、しかも世間から遠く隔離された生活を強いられている現実にいやおうなく向き合わされてしまいます。

原題の「目覚め」とは、レナードたちの昏睡からの目覚めでもあり、かつ、セイヤーたちの仕事一筋で人生の楽しみや家族のいる温かさを知らない状態からの覚醒、いわば愛の目覚めの二重の意味あいが含まれるのです。
そのため、最後をセイヤーと彼に思いを寄せる看護婦とのロマンスのはじまりを匂わせて終わるのはなんとも、女性好みしかけ。

ただ、たとえどんな不自由な心身であっても、人間の尊厳は与えられるという主張をこめ、かつ患者と医者との対等な友情関係は、熱く胸を揺さぶるものがありますね。
ロバート・デ・ニーロはじめ脳炎患者を演じた役者の演技力も見どころ。

主演は「大いなる遺産」の実力派ロバート・デ・ニーロおよび、「ナイト ミュージアム」でルーズベルト大統領を演じた人気俳優ロビン・ウィリアムズ。ロビン・ウィリアムズといえば、むしろ、「パッチ・アダムス」の破天荒な医師役が有名ですよね。惜しくも2014年に自殺されていますが、人間のこころってちょっとしたことで壊れもするし、回復もする。

原作は、精神科医オリヴァー・サックスの実体験にもとづく著作。
難病を抱える患者への新薬の投与にいたるまでの障壁(製薬会社に牛耳られ、医者の臨床現場でも意見の調整があわない)を、あからさまにしている医療ドラマでもあります。
医療現場で働く人にはぜひ観てもらいたい秀作。

(〇九年八月二十八日)

レナードの朝(1990) - goo 映画

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 毎日楽しみな新聞、ドコから... | TOP | 新聞のコラムは存外おもしろい »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──社会派・青春・恋愛