陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

マリみて読んでみて その2

2006-10-15 | 感想・二次創作──マリア様がみてる

副題の「鍵」から類推されるとおり、


メルヴェイユスペースにて祐巳が瞳子の心の扉をこじ開け、封印された心の物語が新聞部の真美さんによって『リリアンかわら版』に仕立て上げられる


といった内容でした(番組が違います)



っつーか、毎回もれなくついてくる栞は今回、なんで「マリみて」の表紙じゃないのさっ!



集英社のばかーっ!!


(この「バカ」は好きという意味での「バカ」らしい by 由乃)


これまで借りるか古書店で入手していて、新刊で購入したのは「仮面のアクトレス」が最初だったのです。だから「マリみて」というか、ライトノベルの附録の栞って、必ずそのシリーズの表紙か関連イラストが使用されるんだと思い込んでいたんですね。いやはや、まいったよ。このおバカさんは。


さて、怒りのボルテージを下げたというか、脇に置いといて。



今回は開けっ広げなネタバレ感想を事前に読まずにいたので、感動もひとしおでありました。前評判も結構いいようですね。


生徒会選挙後、恒例のバレンタイン企画の準備に追われた山百合会幹部達を描いた「キーホルダー」とついに瞳子の秘密と暗い過去の事情が明かされた「ハートの鍵穴」の二本立て。


私は「未来の白地図」から察するに瞳子の悩みというか、家出の原因とは、大病院の跡取り娘として結婚を迫られているとか、演劇で食べて生きたいと思っているのに反対されたとか、よくある将来への絶望だと思っていたのですが。こりゃ、思った以上に根が深い。
というか、『マリみて』でこんな今更使い古されたネタだなんて(微苦笑)
昔「乳姉妹」という大映ドラマで賀来千佳子演じる高慢ちきなお嬢様が、自分の出自を知って廊下をみじめったらしくも雑巾掛けするシーンがあったのですが、瞳子の心境はこれに近いわけです(そうか?)


乃梨子や可南子はともかくも孤立無援状態にあった瞳子。
閉ざしていた彼女の心の扉をやさしくノックする人は実は多かった。


落選した瞳子を慮って敗者への気遣いをみせるクラスメイトたち。
この辺は「レイニーブルー」で祥子とすれ違ったときの祐巳が
山百合会を離れて名も無き級友たちと交流を深めた部分を思い起こさせます。
あまりに身近すぎて深く愛しすぎるからこそ、傷ついた時の反動は大きい。
そんなとき、日頃は疎遠なひとから温かく接してもらうと、思わずほろりと涙させられるものです。


次に演劇部の行く末を思って退部をおしとどめロザリオを差し出す部長。
彼女は瞳子の才能も、そして瞳子の想いの先も知っている人物。
深く事情は知らなかったけれど、祥子とこじれた祐巳を慰めた加東景さんや、その大家の弓子さんに役どころが似ています。
だとすると、百合小説なのに最近やたらと出番がふえ、しかもその度にカッコ良く描かれすぎている銀杏王子様は、佐藤聖みたいなもんなのでしょう。


しかし、いくら株が上がったからといって柏木優のイラストを二枚も登場させるなんて!ひびき先生は彼がお好きなんでしょうかね?ティーカップやら饅頭を描く余裕があるなら、部長と瞳子のシーンの挿絵が欲しかった。(「いばらの森」の前例もあるが、原作者はどシリアスな文体がラノベ特有の画風で崩されるのを嫌っているのでしょうか?私もイラストに騙されるのは余り好きではないけど)


瞳子を巡る周囲の状況が温かみを増す中で、祐巳と瞳子の膠着状態は予想通り(笑)まだ続きます。
バレンタインデートで仲直りと考えるのは早計か?


祥子が瞳子に好意的でないのが意外でした。
黄薔薇は由乃と江利子、そして今は令と菜々が牽制し合っているのですが、
もしかしたら祐巳を板挟みにして、この二人にもひと悶着あったりなんかして。


しかも幼少のみぎりから親戚(といっても外戚らしいけど)のお姉様として慕っていた祥子が、瞳子の生まれについて知らなかった。つまり祥子は瞳子には無関心だったというわけで。これって結構ショックじゃないかなぁ。
祐巳と違って血縁関係に恵まれていない瞳子だけれど、信じるべきは血の縁よりも水の縁なのか。


誤解から祐巳と再び泥仕合(?!)を演じてしまい、柏木の思いやりもつっぱね、祥子とまでよそよそしくなっていきそうな瞳子にさしだされた救いの手――それは(今野先生自身も驚かれるほど)意外な人物、とはいえささくれだった彼女の心をほぐすには他に考えられない人物。そう、二条乃梨子だった。
「ロザリオの滴」でも志摩子の心を救った彼女は、「神無月」のマコちゃん並にオットコ前。ファンが多そうですね。


さぁて、今回の百合所ひとつめは85頁。


タダ、ノリコノ、カクシタカードヲ、サガシタカッタダケデ


片仮名表記にするとさっぱり訳分かりませんが、控えめな志摩子さんの思いがけない貪欲な告白。きっとその場の山百合メンバーズ+真美さんには、異国の言葉に聞こえたことでしょう。



百合所ふたつめは101-102頁。


 
 「瞳子を、好きですか」
 「好きだよ。大好き」
 少しの迷いもなく、祐巳さまは答えた。
 「なら、いいです」
 乃梨子はそれ以上、質問はしなかった。(…)
 瞳子を好き。
 それが唯一、そして一番聞きたかったことだと気づいたからだ。


 


乃梨子はほんと、いい仕事してますねぇ(お宝鑑定団の人ふうに)
視点のシフトから世代交代を感じさせる『マリみて』シリーズ。
ドリルと市松人形コンビの友愛も楽しみであります。


だけど今の『マリみて』って…百合カップルで好評を博したのに、翌年、おしゃま(死語)な小娘が主人公で過剰なギャグ演出に走った美少女戦士シリーズに近いかも。
(いいかげん、せらむんネタやめませう)


 


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