陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

ありがとう、姉妹メダル

2008-08-19 | フィギュアスケート・スポーツ
四年に一度の祭典だしとはいいつつも、じっくり中継を観ている暇はないオリンピック。ニュースで結果を知るのみで、それがまた勝った負けただけで一喜一憂してるみたいで。
女子マラソン、けっきょくメダル獲得ならなかったのですが。途中棄権した土佐選手の今後も心配ですけれど。十三位に終わった中村選手が、インタビューで明るく次の大会に向けての抱負を語っていたのがとても印象的でした。あのさわやかさは、むかし、オリンピックで靴が脱げてメダルを逃した男子マラソンの谷口選手をみる思いでした。

レスリングといえば例の浜口京子選手しか思い浮かばなかったんですが。この競技には意外な姉妹愛があったんですね。
四十八キロ級で銀メダリスト伊調千春、六十三キロ級で金メダリストの伊調馨の姉妹が、今大会限りで引退を表明したとのこと。姉の千春選手は以前から減量がくるしくて今回でピリオドをうつ覚悟だったそうです。しかし、コーチは妹の馨選手はひきとめる方向。
前回のアテネ五輪でも、姉が銀、妹が金だったふたり。今大会では姉妹で二階級金メダリストを夢に抱いていました。千春選手が決勝で負けたあと、馨選手は号泣し姉妹で金の夢かなわぬならば出場辞退をとまで追いつめたとか。けっきょく、姉からのメールで奮起し、金を獲得したものの、姉とそろっての引退表明。
自分の進退をきめるのは個人の自由だとは思います。「千春がいっしょにいたからがんばれた」という馨選手の言葉は、姉妹のかたい絆を示しているともいえるし、また逆に姉の存在への依存もみてとれるといえます。でも、ほんとうに彼女は姉に甘えていたのか?彼女なら、たぶん姉がいなくてもじゅうぶん活躍していけるのではないかと思える。
さんざん、姉のおかげを口にする裏には、じつは絶大な自分の力への自信があって。けれどそれを慢心とうけとられたくないため、姉の存在を語ってさえいるのではないかと思う。さらにいえば、姉が引退したあと、自分だけが競技をつづけ、姉の得られない偉業すなわち三大会連続金を達してしまう─達せられないではなく─ことへの恐れ。そんな後ろめたさが馨選手のなかにあるのではないだろうか。
「千春がいなくなったら目標がわからない」という馨選手。世界の頂点にひとりのぼりつめることではなく、いっしょにレスリングを楽しむのが彼女の生きがいだったのでしょう。
これはまだ表明なので正式引退ではないのでしょうが。一線をしりぞいたとしても、二大会連続金銀姉妹メダリストの名は消えることはありません。
ロシアのグルジア攻撃があったり、口パク・CG偽装が露見したりと舞台裏では紛争がつきまとってしまう今回の五輪。ですが、こんな微笑ましい話が聞けるのは、夏の炎天下に喉をうるおす清水の流れにであったようで、ひじょうにすがすがしい気持ちになれました。スポーツのルールのことはよくわからぬながら、こういったドラマはやはりひとを魅了してやまないものですね。
二人して笑顔で金銀のメダルをかかげた笑顔がとてもすてきです。ありがとう、伊調姉妹。

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