YOU-PROJECT BLOG

『2022なぎさジュリエット』コメント

大変すいません。水木金と3日も遅れてのアップになります。
なぜだか今、三つも現場が並行していて。
いや、今までもこういうことはありましたが、今年の枚方なぎさ高校「演劇入門」が、大いに普通に作品を作っているので
「心を亡くす」と書く忙しい状態が続いています。

今日はその、2月13日に本番を迎える『2022なぎさジュリエット』演出コメントを掲載しようと思います。

この『ジュリエット‐Juliet Capulet‐』という作品は、2006年4月に京都のアートコンプレックス1928で初演されたものです。
武田五一氏の設計によるアールデコ調の建物で、岩村源太さんという照明・美術家と初めて組んだ素敵な作品でした。
日本経済新聞夕刊に大きく記事が載り、6人のジュリエットによる内面の表現という前衛性に注目が集まりましたが、当時ヒロインと同じ年頃の妹に向けて、自分で決定することの大事さを伝えようとした作品でした。

スピード感ある恋物語として運命に翻弄される姿がクローズアップされがちですが、お金持ちの家から追い出されるとしても、結婚した夫についていこうとした思慮深いジュリエットを描いています。
実際、「ロミオ、ロミオ・・・」で有名なバルコニーのシーンでも、結婚するつもりがなければダメだとはっきり言っていることや、もう結婚式を行い、神の前で誓約したゆえにど田舎のマンチュアで二人暮らそうとする、ということはあまり知られていません。

17年前と今では、親子関係も変わりつつあるかもしれませんが「父と母を離れて、夫に固くつく」という聖書の原則を実践しようとするジュリエットの姿は、優柔不断さや、親の言いなりに結果的になってしまっているかもしれない多くの若者たちに響く物語として、シェイクスピアのすごさをいつも実感します。

今作品では、セリフをほとんどしゃべらない素のジュリエットを除いた5人のジュリエットにしましたが、この物語を読んでいる少女自身が6人目として舞台上に現れ、ジュリエットたちと共に父母との決別を決心する形に変更しました。

今回は特に、「没入」ということを演出のテーマに据えたからです。
演劇とは、劇とはつまり、物語を語ることです。そして、そのことにより新たな世界観や価値観といった未知のものに出会う過程だと思うからです。

と、いうことで、タイトルロールはジュリエットたちですが、
真の主役はこの物語を読んでいる、いえ、観ているお客様たちだからです。

松浦友
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

最近の「演出の目」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事