(本人語り)
制作した本は、私にとって実はとても興味のあるものでした。
というのは、日本での生活で目にする 日用品や食べ物を描いた本だからです。
どちらかと言えば、私はこの本によって 強く触発されたのです。
つまり、中国の伝統的な水墨画の手法を用いてそれまでなら描こうと思ったことのない 品物を描いたからです。
例えば、自転車 掃除機、ハイヒールの革靴を描いたのです。
(男性ナレーター)
こうした肩の凝らない、ユニークな本がひとたび出版されると すぐに人気となり 二玄社はその後数年の間に沈和年と多くの新刊図書を出版する契約をしたのです。
さらに彼にとって予想外だったのは 本来初心者のために企画されたこれらの本が意外にも、プロの画家達の注目をも集めことでした。
かつて彼が参加を拒んだ公募展からも 展覧会の審査員として招かれたのです。
こうして彼は次第に日本の画壇に受け入れられ、それと同時に 沈和年は日本の水墨画とその独特な美意識が好きになったのです。
(本人語り)
日本の水墨画は、とても柔和で穏やかです。
つまり、作品がとても静かなのです。
絵を描くことの楽しみは たとえ一つでも、先人が見つけなかったものを 見つけ出すことができる点にあると思うのです。
(男性ナレーター)
沈和年は、これまでの人生の大半で水墨画を描いてきました。
しかし、単純に見える墨の色の中に 彼は日々 尽きることのない創作の可能性を見出し水墨画の世界における探索を楽しんでいるのです。
おわり