Re-Set by yoshioka ko

■そして、これでフタ

 一昨日の記事だが、ちょっとふれておきたい。まずはその記事から。

《以下引用》
 「ロシアのチャイカ検事総長は27日、記者会見し、昨年10月に同国の反体制派女性記者、アンナ・ポリトコフスカヤさんが暗殺された事件で、容疑者10人の身柄を拘束したと発表した。さらに、犯人グループには、現役の治安当局者らが含まれることを明らかにし、これ以外の暗殺事件にも関与した疑いが高いと述べた。
チャイカ氏は「逮捕した犯人グループを主導していたのは、ロシア南部のチェチェン出身者からなるモスクワの組織犯罪集団の指導者で、犯人の中には、内務省と連邦保安局(FSB)の現役と退役の要員が含まれていた」と指摘した」(8月28日『産経新聞』)

 アンナ・ポリトコフスカヤさんには一度お会いした。モスクワのミュージカル劇場が乗っ取られ、観客が人質となった事件で、容疑者であるテロリストとモスクワ当局の間に立って「ネゴシエーション」を担ったのが彼女だった。

 事件は、交渉が成立して人質が解放されるかに見えた直後、武装した治安部隊の突入と、毒ガスが劇場内に流れ、テロリスト全員が殺害され、人質も129人が死亡するという悲惨な結果を迎えたのだが、最後の交渉人がポリトコフスカヤさんだった。

 当局は最初から交渉による解決を目指したわけではなかった。それはポーズにすぎない。時間稼ぎだ。何でもチェチェン人の仕業に仕立てることで、彼らに対する憎悪をふくらませ、その一方で、政権というよりも大統領の力を誇示する。チェチェン戦争を政権浮揚の道具にしてきたプーチン政権とすれば、129人とはいえ、市民の死などはどうということはない、と考えたのだろう。

 突き詰めれば、そういう話をポリトコフスカヤさんから聞いた。プーチン政治をずっと批判してきた彼女の死は、西側世界では悲憤とともに語られたが、当のロシアでは誰も声高には言わない。そして犯人はいうまでもない、という暗黙のなかで語られる。

 そこに今回の容疑者の身柄拘束ニュースである。やはり背後にはチェチェンの組織が絡んでいた、というものだ。とはいえ下手人には、内務省と連邦保安局(FSB)の現役と退役の要員がいた、という。すべてをチェチェン人のせいにするわけにはいかなかったからだろう。かくして事件は、チェチェンに人が起こしたもの、で終わる。そしてこれでフタだ。

 アメリカで始まった〈テロとの戦争〉にロシアは、チェチェン戦争を〈テロとの戦争〉に利用した。チェチェン人はテロリストであり、アルカイダであり、故に殲滅してもおかしくない対象だ、という理屈だ。そのことに誰も異を唱えない。アメリカばかりかヨーロッパもだ。みんな〈911〉事件の目くらましの中にある。

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