Re-Set by yoshioka ko

■温度差、あるいは外交術

 やはり出てきた北朝鮮風外交術。

 横田めぐみさんの夫とされる人物が、実は韓国で拉致された高校生だった、という真実が暴かれたとき、自国にも500人近い拉致被害者を抱えながら、真相解明には冷淡だった韓国政府はいったいどう出てくるのだろう、と思い、その一方で、当の北朝鮮はどんな手を打ってくるのだろう、と思ったものだった。そして案の定、出てきた。以下記事を参照。

《以下引用》
 「北朝鮮は8日、拉致被害者、横田めぐみさん(失跡当時13)の夫の可能性が高いとされる韓国人拉致被害者、金英男(キムヨンナム=同16)さんについて「該当機関が存在を確認した」とした上で、韓国にいる母親、崔桂月(チェゲウォル)さん(78)と、北朝鮮・金剛山で19日以降に行われる南北離散家族再会事業を通じて会わせると表明した。韓国統一省は「(南北)分断の痛みを解消する未来志向的な動き」と評価。再会は今月22日に実現される可能性が高いとの見方を示した。実現すれば78年8月の失跡以来、約28年ぶりの再会となる。崔桂月さんは8日、ソウルで記者会見し、再会で「息子の顔をなでてやりたい」と述べた」(6月9日『日刊スポーツ』)《引用ここまで》

 拉致をしておきながら、「存在を確認した」という物言いや、離散家族再会事業を通して会わせる、などという物言いがなぜ成り立つのか? それに対して韓国の統一省が、分断の痛みを解消する未来志向的な動き、と評価したという。

 連携していくかに見えた日韓の拉致被害者の間にもすきま風が吹き始めた。同じ被害者なのに、北朝鮮の発表は、①ひと言の謝罪もないまま②日韓の被害者間にくさびを打ち込み③韓国政府も評価する。

 横田めぐみさんは死亡したと言い続ける北朝鮮にすれば、金英男氏の存在を明らかにし、その家族に面会をさせるという今回の決定は、めぐみさん死亡を再確認させる意味でも、きわめて高等な、したたかな外交術に違いない。

 金英男氏に面会した家族たちは、何をしゃべるのだろう? もはや想像がつくというものである。

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