Re-Set by yoshioka ko

■歴史は二度、裏切ってはならない

 この人の強情ぶりがどうも理解できない。小泉首相は昨日次のようなことをしゃべった。

《以下引用》
 「小泉純一郎首相は30日、自民党本部で講演し、靖国神社参拝に対する中国や韓国の反応について「なぜ批判されるのか分からない。どこの国でも平和への祈りがある」と強調。さらに「意見の相違があったとしても、関係をおかしくしてはならないという考えに変わりはない。靖国問題は外交カードにはならない」と語った」(12月1日『毎日新聞』)《引用ここまで》

 一方、韓国の新聞は2日前にこんな記事を書いている。

《以下引用》
 「真実・和解のための過去史整理委員会が来月(12月)1日、正式に発足する。これから短くて4年間、長くて6年間、日帝の強制占領時代から盧泰愚政権時代まで、100年間の韓国の近代・現代史を改めて振り返る歴史の書き直し作業が始まる」(11月29日『朝鮮日報』)《引用ここまで》

 『朝鮮日報』のこの記事には注釈が必要だ。まず「真実・和解のための過去史整理委員会」というのは、今の盧武鉉大統領が率先して作ったもので、「日本の植民支配及びそれ以後の不当な公権力による人権侵害や、大韓民国の正当性を否定した勢力によるテロ・暴力・死因の不明な疑問死について調査を行う」委員会のことをいう。また「日帝」という言葉は、われわれ日本人には分かりにくいが、「日本の帝国主義」を縮めた韓国独特の歴史用語である。
 つまり記事を要約すれば、日本の植民地時代から始まって、(最後の独裁政権となった)盧泰愚大統領時代までの100年間の韓国近・現代史を見直す作業が始まる、ということだ。 

 そもそもこの「過去史清算」という韓国の近・現代史見直しは、今年8月15日の光復節(日本の植民地支配から解放された日)における盧武鉉大統領の特別演説に始まる。このとき大統領はこんなふうに話した。
 「親日の歴史から始まった分裂と葛藤が、光復から60年が過ぎた今日に至っても解消されずにいる。それは(日帝からの解放をあれほど望んだにもかかわらず、その後の歴史では)左右対決に埋没し、親日勢力の加勢を許し、その結果親日勢力を断罪するどころか、歴史の真相さえ明らかにできなかった」

 ここでも多少の解説が必要になる。韓国では〈親日〉という言葉は、必ずしもいい意味で使われるとは限らない、ということである。否、むしろ全く逆に〈売国〉というニュアンスさえ含んでいる。そのような意味合いを汲んで大統領演説を読解すれば、今日までの韓国の近・現代史は〈親日史観〉に立ったもので、これからは真に〈韓国史観〉に立ったものにしなければならない。 

 さて、問題はここからである。
 日本では〈自虐史観〉から〈皇国史観〉へという流れが加速したまま現在がある。小泉首相の靖国参拝が〈皇国史観〉に立ったものだと決めつけるつもりはない。だが、少なくとも、日本の独立と引き替える形で、A級戦犯として断罪された東京裁判の判決を日本は受託したのだ。それにもかかわらず「なぜ批判されるのか分からない。どこの国でも平和への祈りがある」などと一般化した言葉で語りながら、堂々と警護人を引き連れ、首相という肩書きを隠すこともしないで参拝するという神経は、どうにも理解しにくいものがある。

 いつの時代であれ、戦争犠牲者の命は尊ばれなければならない。それは味方だけではなく敵であったとしてもである。そういう考えの上に沖縄の「平和の礎」は成り立っている。敵兵だったアメリカ兵の名も礎に刻みつけ、慰霊の対象とした。
 いわんや、である。アジア・太平洋戦争では韓国・台湾は植民地とされ、中国始めアジアの国々は、日本が始めた戦争で多大な犠牲者を出した。慰霊されるべきは日本兵だけではなく、日本の戦争で犠牲となった人々をも含むものでなければならないのは、当然の話である。
 その意味でも、戦死した元日本兵だけが英霊として祀られている神社だけを参拝するというのは、一国の責任者としてやはり器が小さいのではないか。

 韓国の〈過去史清算〉について、韓国内では政治的陰謀だ、とか、そうでなくても不人気の盧武鉉大統領が、政権維持のために打ったパフォーマンス、といったヤジも無いわけではない。しかし、ひとつだけいえることは、日本では今、あの戦争は正しかった、といった復古調の論議が広まっているが、韓国では、そういう日本に植民地として支配されたのは、それだけ国は弱かったからだ、という事実に立って、そのとき責任ある人々はどう行動したかを軸に据えて、韓国の近・現代史を見直そうとしていることである。その動きは、ドイツがナチ礼賛を禁じたごとく、植民地支配礼賛には罰則を持って臨む、という厳しさをも伴ったものだ。

 歴史をおろそかにする民族は、二度歴史を裏切る。そうなってはならない。

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