理由は二つ。ひとつはテロ事件の多発などパキスタンの治安を回復するため、もうひとつは、最高裁判所が軍服を着たまま政治を司るムシャラフ大統領に対して、違憲判決を出す可能性を前もって封じるため。
「独裁者」の常で、ムシャラフさんが支配するパキスタンは今度の非常事態宣言で、混乱に向かって行かざるを得ない。そういう兆候が早くも見え始めた。
《以下引用》
「ムシャラフ大統領が非常事態宣言を出したパキスタンで5日、反大統領派の弁護士らが抗議デモを展開した。これに対し、警察部隊は警棒などで鎮圧を図り、参加者100人余りを拘束した」(11月5日『AP通信』)《引用ここまで》
こんなことになったそもそもの発端は、01年の「911テロ事件」で、ムシャラフ大統領がアメリカ支持を打ち出したことに始まる。核実験で、それまで西欧社会からの経済制裁を受けていたパキスタンの大統領は、〈テロとの戦争〉に協力することで、欧米などからの経済制裁を解除されたばかりか、莫大な経済援助を手に入れた。この大変換は、しかしイスラム教徒が98%を占めるパキスタン国民に大きな衝撃を与えた。
政教分離による世俗主義を掲げていたパキスタンだったが、やがてアメリカの〈テロとの戦争〉によって、対アフガニスタン政策では自らが育てた「タリバン」掃討にまわり、国内の反発を招く。
さらにアフガニスタンを実効支配していたタリバンが首都カブールから敗走したあと、治安安定のためにやってきたISAF(治安支援部隊)との間でもゲリラ戦が続き、それは今に続く。
「911」以降、イスラム教徒にとってアメリカはまさに天敵。そこに自らの延命をも目的としたムシャラフ大統領の非常事態宣言は火に油を注ぐようなもの。だからこそ、今回の措置は「ムシャラフ大統領の終わりの始まり」ともいわれる所以でもある。
権力者は歴史を学ばなければならない。
最新の画像もっと見る
最近の「テロとの戦争」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事