Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

フィリピンの電子投票

2010年05月24日 | 選挙制度
5月11日にフィリピンの大統領選挙が電子投票(フィリピンでは、automated electionという)により施行された。
フィリピンの電子投票については、茨城大学の木村昌孝先生が長く研究しておられて、先日の5月の日本選挙学会でもポスターセッションで発表された。今のところ、フィリピンの電子投票に関する日本語文献としては、木村先生の「フィリピンの選挙におけるICTの導入」がもっとも詳しいものであると思う。
ポスターセッションのときに木村先生にも伺ったが、フィリピンの電子投票は、有権者が手書きでマークシートにマークし、それを光学スキャンして電子データに変換したデータを投票所間を結ぶネットワーク経由で開票所に送り、開票するというもので、直接記録方式(DRE)ではない。世界の電子投票の潮流をみると、DREに対する不信感を解消することはできず、アメリカでもマークシート読み取り方式が主流になってきている。

私自身は、DREを否定するものではない。VVPAT導入を主張しているのは、そうしないと有権者の信頼が得られないからである。コストの面を考えずにいえば、数千億円を投じることができるのであれば、かぎりなくセキュアで冗長性にすぐれた電子投票機を開発することはできるだろう。銀行のATMのような専用線ネットワークを構築すれば、ハッキングの恐れも減少する。要は民主主義にかけるべきコストの問題である。
最近は、選挙という民主主義の根幹をなす制度において、いきなりゼロには近いとはいっても一定確率で障害が生じうる電子機器をかぎりなく民生用汎用品に近いコストで導入しようとすること自体に無理があったのだろうか、という気がしている。
コメント
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