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NO.13「わたしのきこえ」を説明すること

2024年06月15日 | 記事

「わたしのきこえ」を説明すること

   〜ひかるちゃんとほちょうきちゃん〜

 

 ライカブリッジのメンバーが、知り合いの方が難聴の我が子(保育園児)のための動画を保育園とともに作成したということで、そのURLを送ってくれた。

 今は、個人でこんな素敵な動画が作成できるんだなと感心した。お子さんは保育園の年中さんなのだが、この動画へのお友達の反応はどうだったかなどが知りたくなり、その方に連絡をとらせてもらった。

 きけば、初めは、お母さんが我が子のきこえのことを、お友だちに少しでもわかってもらうために、紙芝居を作成した。人物画は全部お母さんの自作だそうだ。補聴器と背景画はネットで拾い、一度IPadの作画アプリに取り込んで編集して仕上げた。それをラミネートして、紙芝居にして、保育園で子どもたちに読んでほしいとお願いしたのだそうだ。

 保育園は、快く引き受けてくださっただけでなく、園長先生が、これを動画にして、保育園のサイトにアップすることまで提案してくださったのこと。結局動画作成に保育園も協力して、語りは担任の保育士の先生が引き受けてくださったそうだ。

 園長先生の対応の素晴らしさに感銘を受けることしきりだった。幼児だって、何らかの事情のあるお友達に対して、自分にもできることがあることは、学べるものなのだと思う。むしろ、小さいうちから、色々な友達がいて、色々な個性があって、なにか困りごとのあるお友達もいる、そして色々な友達がいることを尊重することが大事だということを是非学んでほしいと思う。

 

 この動画の主人公は、ひかるちゃんという保育園児さんだ。聴力は右90dB台、左70dB台で補聴器を0歳から装用している。今のところ、ご両親は、きこえる子どもたちの中で育てたいと希望されているということだが、そのためには、まわりの理解を得るための努力をする覚悟をされているのだろうと思う。お母さんは、難聴全般というよりも、「ひかるちゃんのこと」を理解してもらいたいという気持ちで作成されたそうだ。そして、本人の気持ちを大事にしながら、なるべく補聴器のことをオープンにして、堂々と生活してほしいと願っている。

 

 「難聴全般のこと」よりも、「ひかるちゃんのこと」をわかってほしいという気持ちに対しては大いに共感するし、大賛成だ。大事なのは、ひかるちゃんを周りが知ることだ。ひかるちゃんとどう付き合うかがわかることだ。最近思うのだが、小学校でも「難聴理解授業」がされることがあるが、難聴自体の説明や補聴器の説明があってもよいが、一番大事なのは、そのお子さんが日常のどういう場面で、どのようなきこえにくさがあるかということを、できるだけたくさんの具体的な場面について、わかりやすく伝えることだ。その上でどんなことが助けになるかをやはり具体的に伝えることに意味がある。

 それでこそ、ああ、◯◯ちゃんには、こういう場面では、こういう困り感があるんだなという具体的な理解が進むし、どう対応するとよいかも知ってもらえるのだと思う。

 

 さて、実際に保育園で自分が主人公の紙芝居とか、動画が使われて、ご本人の反応はというと、恥ずかしがったり、嫌がったりはしないかというお母さんの心配をよそに、「ひかるのお話だ〜」と照れながらもうれしそうだったようだ。自分がかわいいイラストになるのは、結構嬉しいことに違いない。これを切れ目なく続けていってほしいなと思う。もちろん本人とよく話し合いながら。

 

 そして、まわりの反響について。保育園の友達のお母さんから、「ひかりちゃんのお耳のことは知ってたけど、じゃあどうしたらいいかって知らなかったの。動画を見て、気づかなかったら、ちょっと肩をさわればいいんだねとか、家で子どもと話したよー。」などと言ってくれたそうだ。まだ幼児なので、親御さんと一緒に見て話し合うことも大事なのだ。そういう意味でも動画を誰でも見られるようにすることには意義がある。

 また、動画を紹介した難聴の小学3年生のお子さんを持つ知人の方もお子さんと一緒に見て、その3年生のお子さんが「タオルがタルに聞こえちゃったり、自分のせいじゃないけどそう聞こえちゃうこともめっちゃわかる!小学校でもこれ流してほしい!」と言ったとか。やっぱり、わかってもらいたいのだ。

 動画の手応えは十分にあったようだ。思春期に、そういう自己開示を恥ずかしがるようになる人も少なくないのだが、全力で「恥ずかしいことじゃないこと」を小さい時から伝えてゆくことは、堂々と自己開示できるようになることにもつながるのではないかと思う。

 

  難聴は、程度の差もあるし、その人の性格とか、家庭環境とか、得意なこととか、本当に個人差が色々ある。私は、常々「私のきこえリーフレット」みたいな、その人の場合のきこえについてわかってもらうような、その個人の状況に即したリーフレットがあるといいなと考えている。

  成人のインタビューをしていても、自分のきこえについて、きこえる人たちにどうわかってもらうか、その説明はどのようにしたらよいか、結構みんな悩んでいると感じる。

 タイトルも好きなものを選んで、どう説明するかも自分に合わせて選んで、イラストも自分の好みに合わせて、自分にカスタマイズできるリーフレット作成アプリ?かなんかあったらいいなと思う。いきなりアプリ作成とまではいかなくても、好きな画像や文章を選べるようなリーフレット作成に役立つような何かを今考え中である。社会人でも使えるようなものがあるといい。

  「そうかー、テレビも字幕があると助かるんだ〜」「学校の校内放送聞き取りにくいんだね。」「グループでわいわいおしゃべりしてる時、話についていけないのね〜」など、そうだったんだ、と理解してくれ、何か自分にできることはないかと考えてくれる友達は、必ずいると思う。まわりの子どもたちにも大切な学びになるのだ。

 

  ひかるちゃんのお母さんの許可を得たので、ひかるちゃんの動画のURLをご紹介する。

 一つの参考にしていただけるといいなと思う。

 

「ひかるちゃんとほちょうきちゃん」

 https://youtu.be/F9ZbSyqL0ag?si=bJiYLoBYU3NG5mha



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