約束の日はやってきた。
(単なる予約日)
もちろん今日も精神安定剤は内服済み。
ただ心配なのは、なんとなく
「ウンコしたいかな~?」という尻具合。
もし治療が長丁場になったりしたら
途中で退席、もしくは放屁という失態を演じてしまいそうな気がしなくもないが
もしかしたら、これは私のビビり心が産み出しているまやかしの便意かもしれん。
そうだ、そうだ。気のせいだ。
きっとあの、ガンダムの操縦席みたいな椅子に座ったら
私の心はそれどころじゃなくなるから大丈夫!
と言い聞かせ、いざ
「ゆりぢる、行きま~す」
歯「どうでした?詰めた所、大丈夫でしたかね?」
私「はい~。もともと自分のだったので違和感ゼロです」
歯「アハハ…そうですよね。じゃ、他も診てみましょう」
歯「う~ん、ここの左右の下の一番奥の歯がね、ちょ~っと虫歯になりかけてる感じですね」
鏡を渡してきて
歯「ね?」
私「そ、そうですね…」
歯「じゃ、ちょっと削って治療しましょう!両方やって、ささっと終わらせましょう」
私「!!!!」
歯「じゃ、こっちからね~」
鼻歌でも出そうな感じのノリで
私のべろの下と歯肉の横に棒状の脱脂綿を詰めていく。
ここですでに「オエッ」となりそう…
だが、ここで「気持ち悪い」とか「イヤだ」という
ネガティブな気持ちに囚われてしまうと
ますます「オウォエェェ~!!」となってしまうことを
私は今までの経験上知っている。
そんな私の脳内に突然降りてきた言葉…
脳「石になるのです…」
私「石に…?」
脳「そう。石です。あなたは石像です」
私「ハッ…!石ならば削られて当たり前、
これは彫りの微調整ですね…」
脳「石ならば…」
私「痛みも恐怖も感じない…✨」
画像はWikipedia様よりお借りしました。
歯「痛かったら左手挙げて下さいね~」
腹の上で組んでいた手を右上から左上に組み直し
挙げるスタンバイもOK。
だがこれは最終手段だ。
私は乗りきってみせる…なぜなら石像だから。
キィ~ンだか、チィ~ンだかいう音をさせながら
私の歯が削られてゆく。
おかげさまで痛みはないようだ。
だが、削る時に掛けられるジェット噴射のような水がクサイ!
クサイと思ったら負けだ。オエッとなってしまう。
クサくないと思え!
臭いなんてしないんだ!だって石像だから。
衛生士さ~ん!早くこの口に溜まった水を
スゴゴゴォォ…と吸い取ってくれ~!
吸い取り易いように、舌で水を押し上げる。
全面的に協力体制。
歯「はい、じゃあ一旦お口ゆすいで下さ~い」
私(あぁぁぁ…クサいクサい。水…水を…!)
ブクブクぺ~。フゥ~…
歯「はい、じゃあもう片方もいっちゃいますね~」
繰り返される苦行…いや、微調整。
歯「それじゃ削ったとこ、詰めていきますね~」
あぁぁ~、再びクサイ!
なんか、詰める前に当てる空気みたいのも
詰めるモノも
みんなクサイ!
多分、薬的な?消毒的な?ものだと思うのだが
普段嗅いだことのない臭い。
私の、決して広くはない口の中という舞台で繰り広げられる物語…
いろんな器具とか、歯医者さんの指とか
ゴッチャゴチャになってそう…
歯「はい、じゃあちょっと噛み合わせてみて下さ~い」
私「ちょっと右側の方が高い?感じが…」
歯「え?そうですか?でもあんまり削りすぎちゃうと、歯の部分が出てきちゃって…」
私「そ、そ~ですよね!もともとちょっと削れて低くなってたんでそのせいだと思います!そのうち慣れます!」
嗚呼、医療従事者に忖度…
次回の歯医者さんは…
「歯石取り」
をお送りしま~す