国連の安全保障理事会が、北朝鮮に対する新たな制裁決議を全会一致で採
択した。北朝鮮の主要産品である石炭や鉄鉱石の輸出を全面的に禁じるも
ので、これまでの制裁よりも数段厳しいものになっている。だが、そんな
ことよりも、この制裁決議が「全会一致で」採択されたことのほうが重要
だろう。中国のロシアも、この決議案に対して、今までのような反対の姿
勢を取ることはしなかったのだ。
中国とロシアは、今回はなぜ決議に反対しなかったのか。中国とロシアに
とって、これまで北朝鮮は自国とアメリカとの間の「緩衝国家」として、
軍事戦略上の意味を持っていたが、いまやICBM(大陸勘弾道ミサイル)を
手にするに至り、この独裁国家は、「うまく操れる都合のよいチンピラ」
であることを通り越してしまった。金正恩が君臨する北朝鮮は、あたかも
増殖したがん細胞のように、全世界に脅威を振りまきつつ、全世界を危機
におとしいれ、ひいては己をも死に至らしめる危険な存在であること、こ
のことに中ロはやっと思い至ったのである。
今度の厳しい制裁によって、北朝鮮は経済的に逼迫し、国家予算を核兵器
の開発にまわす余裕はなくなるだろう。だからこれで危機の目も摘まれる
のではないか。とりあえず、一触即発で戦争へ、という事態は遠のいた。
やれやれ。ーーけれども、そう考えるとしたら、これは早計である。次の
ような記事を読んだ。
極めて強力な経済制裁決議である(とアメリカ政府が考える)国連安保理
決議2371号は、トランプ政権にとって北朝鮮に対する経済制裁の最後の一
手と考えることができる。ということは、今回の国連決議が効果を奏さず
に状況がさらに悪化した場合、むしろアメリカによる軍事攻撃というオプ
ションが発動される可能性が高まったと言わなければならない。(中略)
「いきなりアメリカ本土が危険に晒されていることを口実に北朝鮮に先制
攻撃を仕掛けるのは、国際社会の手前、乱暴に映りかねない。しかし、国
連決議に対する重大な違反を口実に軍事オプションを発動するならば、そ
れなりに格好がつく。だから今回の強力な経済制裁決議は、まさにそのた
めの布石なのだ」というわけだ。
(JBPRESS 《強力な国連決議で近づいた「北朝鮮先制攻撃の日」》
8月10日配信)
アメリカによる北朝鮮への軍事攻撃は避けられず、むしろ近づいたという
のだが、この事態はどういう結果をもたらすのか。国家としての北朝鮮が
それによって壊滅に追い込まれたとしても、これは一見落着ではなく、新
たな問題の始まりでしかない。そう言えるのではないか。
どういうことか。窮鼠となった北朝鮮が、猫のアメリカに核ミサイルを打
ち込むかも知れない。北朝鮮イタチが、日本列島に最後っ屁のミサイルを
ぶっ放すかも知れない。これは充分に予想されるシナリオだが、留意しな
ければならないのは、その後におとずれる事態である。
アメリカが北朝鮮に軍事攻撃を加え、北朝鮮軍を完全制圧したとして、そ
の後には一挙にアメリカ軍のプレゼンスが増大することから、中国とロシ
アは、これを自らにとっての大きな脅威ととらえ、軍事的緊張が一挙に高
まる。この緊張から何が飛び出すか、それは私には分からない。分からな
いが、その「何か」が日本に重大な影響を及ぼすことは、確実であるよう
に私には思える。
択した。北朝鮮の主要産品である石炭や鉄鉱石の輸出を全面的に禁じるも
ので、これまでの制裁よりも数段厳しいものになっている。だが、そんな
ことよりも、この制裁決議が「全会一致で」採択されたことのほうが重要
だろう。中国のロシアも、この決議案に対して、今までのような反対の姿
勢を取ることはしなかったのだ。
中国とロシアは、今回はなぜ決議に反対しなかったのか。中国とロシアに
とって、これまで北朝鮮は自国とアメリカとの間の「緩衝国家」として、
軍事戦略上の意味を持っていたが、いまやICBM(大陸勘弾道ミサイル)を
手にするに至り、この独裁国家は、「うまく操れる都合のよいチンピラ」
であることを通り越してしまった。金正恩が君臨する北朝鮮は、あたかも
増殖したがん細胞のように、全世界に脅威を振りまきつつ、全世界を危機
におとしいれ、ひいては己をも死に至らしめる危険な存在であること、こ
のことに中ロはやっと思い至ったのである。
今度の厳しい制裁によって、北朝鮮は経済的に逼迫し、国家予算を核兵器
の開発にまわす余裕はなくなるだろう。だからこれで危機の目も摘まれる
のではないか。とりあえず、一触即発で戦争へ、という事態は遠のいた。
やれやれ。ーーけれども、そう考えるとしたら、これは早計である。次の
ような記事を読んだ。
極めて強力な経済制裁決議である(とアメリカ政府が考える)国連安保理
決議2371号は、トランプ政権にとって北朝鮮に対する経済制裁の最後の一
手と考えることができる。ということは、今回の国連決議が効果を奏さず
に状況がさらに悪化した場合、むしろアメリカによる軍事攻撃というオプ
ションが発動される可能性が高まったと言わなければならない。(中略)
「いきなりアメリカ本土が危険に晒されていることを口実に北朝鮮に先制
攻撃を仕掛けるのは、国際社会の手前、乱暴に映りかねない。しかし、国
連決議に対する重大な違反を口実に軍事オプションを発動するならば、そ
れなりに格好がつく。だから今回の強力な経済制裁決議は、まさにそのた
めの布石なのだ」というわけだ。
(JBPRESS 《強力な国連決議で近づいた「北朝鮮先制攻撃の日」》
8月10日配信)
アメリカによる北朝鮮への軍事攻撃は避けられず、むしろ近づいたという
のだが、この事態はどういう結果をもたらすのか。国家としての北朝鮮が
それによって壊滅に追い込まれたとしても、これは一見落着ではなく、新
たな問題の始まりでしかない。そう言えるのではないか。
どういうことか。窮鼠となった北朝鮮が、猫のアメリカに核ミサイルを打
ち込むかも知れない。北朝鮮イタチが、日本列島に最後っ屁のミサイルを
ぶっ放すかも知れない。これは充分に予想されるシナリオだが、留意しな
ければならないのは、その後におとずれる事態である。
アメリカが北朝鮮に軍事攻撃を加え、北朝鮮軍を完全制圧したとして、そ
の後には一挙にアメリカ軍のプレゼンスが増大することから、中国とロシ
アは、これを自らにとっての大きな脅威ととらえ、軍事的緊張が一挙に高
まる。この緊張から何が飛び出すか、それは私には分からない。分からな
いが、その「何か」が日本に重大な影響を及ぼすことは、確実であるよう
に私には思える。