前回のブログ、『相模原市障害者施設で起こった殺人事件を考える』のつづきとして今回は、犯行を及んだ男が大島理森衆議院議長へ渡そうとしていた書簡の内容についてあれこれ考えてみたいと思う。
衆議院議長大島理森様
この手紙を手にとって頂き本当にありがとうございます。
私は障害者総勢470名を抹殺することができます。
常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界の為(ため)と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります。
理由は世界経済の活性化、本格的な第三次世界大戦を未然に防ぐことができるかもしれないと考えたからです。
私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。
重複障害者に対する命のあり方は未(いま)だに答えが見つかっていない所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。
今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛(つら)い決断をする時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。
世界を担う大島理森様のお力で世界をより良い方向に進めて頂けないでしょうか。是非、安倍晋三様のお耳に伝えて頂ければと思います。
私が人類の為にできることを真剣に考えた答えでございます。
衆議院議長大島理森様、どうか愛する日本国、全人類の為にお力添え頂けないでしょうか。何卒よろしくお願い致します。
文責 植松 聖
この文面にはつづきがあるようだが、今回はそこまで深入りはしない。
まず、この文面を読むかぎりの感想としては、"こわい・・・"のひとことに尽きる。
世のため人のためならば、ひと一人殺めたとしても自分は間違っていないんだと確信している、そんな風に強く感じてしまい、"こわい"のである。
たしかに無責任や無関心を装うばかりの人間も"こわい"が、今回の犯罪者のような自己中心的な考えの下の、社会貢献責任を果たそうとする者の存在もまた"こわい"、と感じてしまう。
そして、わたしが一番注目したのは、「今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛(つら)い決断をする時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。」とあるように、この犯罪者は革命論者だということだ。
過去ブログ『戦争と革命』にも、わたしの想いを書き綴ってはいるように、革命は絶対に起こしてならないのであるのだが、この犯罪者の男は、政府に革命を薦め、自身もその後に悲惨極まりない犯罪を犯してしまったのである。
想うにこの男は、愛国心というよりも、はき違えた正義感にこころ囚われていたのではないだろうか?ある国では「愛国無罪」とも呼ばれるような主義主張によって、ある国民を長年困らせ続けている。これにちなんでこの男も「正義無罪」などという幻想に囚われてしまっていたのではないだろうか?
「正義無罪」このような思い上がりの意識というものが、本来われわれ日本人にとっては最も恐ろしい思考であるということ、そして、こうした意識を有する者たちとは極力避けていかなければならない、という危機意識を強く持とうと思う。
(差別ではなく偏見である。『差別と偏見』)
さらに、この書簡とは関係がないことでもあるのかもしれないが、身体障害者の方々に対する想いもある。しかしこれはわが国最大のタブーのひとつとも思うので、ここでその想いを綴ることはしない。
ただし、いま現在健常者だからといっても明日、どうなるやもしれない。
突然の交通事故、突然の病など・・・
「明日は我が身」なのである。
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