悠の食虫植物 ネペンテス普及委員会 (和名 ウツボカヅラを世に広める会)

食虫植物のネペンテスを広めていくためのブログ。

鉄コミュニケイション① ハルカとイーヴァ  その 2

2010年01月19日 01時00分39秒 | Sランク
鉄コミュニケイション1
秋山 瑞人
角川(メディアワークス)

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 前回の前置きがメチャクチャ長くなってしまいましたが、「鉄コミュニケイショ

ン」の読書マニュアル、いわゆる取り扱い方法をご説明したいと思います。

 
 まずこの作品はですね、2巻で完結という構成になっております。内容はノベラ

イズ(原作を元に小説化したもの)なので、秋山先生のオリジナル作品ではありま

せん。文章自体は秋山ワールド全開ではありますが。

 なので、もともと出来上がりの作品なので、文章のマエストロである先生の言葉

のリズムに酔いしれるのが正しい楽しみ方、ということになるわけです、私の場合

は。


 原作は見たことがないのでまったくわかりませんが(おそらくアニメです)、ジ

ャンルで言えばSFになると思います。

 ここでさらっと概要の確認をしますね。


概要


 近未来。戦争により人類は絶滅。人間並みの思考能力(演算能力などは遥かに上

回ってるとは思いますが)と感情を持つロボットだけが残った世界。簡単に言うと

ター○ネーターの世界観ですね。

 そして冷凍睡眠で戦争を逃れた、人類最期の生き残りである記憶喪失の少女と、

限りなく人間に近く創り出されたロボットの少女のお話です。


 粗筋としましては 

 記憶喪失の少女は、気のいい5体のロボット達に守られて生活をしていました。

 ある日少女は、どう見ても人間にしか見えないロボットの少女と出会います。

 戦争で生き残ったロボットは人類殲滅のプログラムを植えつけられてる場合がほ

とんどで、5体のロボットは接触に大反対。

 そして何より、ロボットの少女は、5体のロボットが腰を抜かしそうになるほど

の驚愕の特徴を持っていたのです。

 その特徴とは何か。出会いは偶然か必然か。ロボットの少女と一緒に旅をしてい

た最強のロボット、「ルーク」の正体とは。

 次々と先が気になる怒涛の展開に、徹夜は必至。ヤバイ、また読まねば。


 さぁ、ここから見所をご説明しますね。

 見所は、なんと言ってもその文章。この一点買い。私の中では、SFというジャ

ンルは、生半可な知識では書き上げることが難しいと思ってますので、それだけで

秋山先生のポテンシャルを存分に感じることができます。

 そしてここで注目していただきたいのが、あくまでこの小説がライトノベルであ

るということ。

 
 噛み砕いた文章と、短くまとめられた構成の中に潜む、圧倒的な情報量。一瞬で

場を制するこの表現力。

 文字数は決して多くはありません。その中にこれだけの要素を詰め込んだ技術に

脱帽であります。

 文章の中には、専門的な要素が多々含まれるときがありますが、それが逆に心地

よく頭の中に入り込んでくるのが快感ですらあります。正に言葉の魔法。

 予備知識、専門知識はまったく必要がありません。

 
 ライトノベルの命であるキャラ立ちも、抜群の構成で表現されています。 

 ロボットが生き生きしていると聞くと、妙な気もしますが、本当に生き生きと動

き回っていて、キッチリと世界観を演出しています。

 原作は見たことがありませんが、これはもう、原作を超えているのではないでし

ょうか。少なくとも、これほどまでに自分の作品として成り立たせるのは並大抵の

技量ではないと思います。

 才能とはこの人のためにあるのではないか。私はそう感じました。

 
  ※ 以下 ネタバレに近い内容があります。



 まずページを開きますと、説明書きにいきなりロボットの少女の特徴が書いてあ

り、これが一番のテーマなんだなとわかります。というか、もう表紙の絵を見ただ

けでわかってしまいますが。


 絵はさすがに古さを感じさせますが、慣れればどうってことないです。むしろ今

でも充分通用するクォリティではないでしょうか。


 そして出だしですが、いきなりヒロインの日記形式から始まります。これが結構

重要なんですね。ここでまず、ヒロインの人となりとある程度の設定が把握できる

わけです。

 
 舞台となる場所の季節は、多分夏でしょう。

 余談になりますが、秋山先生に夏を表現させたら、もう鬼に金棒ですよ。ちょっ

とだけ、その表現をご紹介しますね。


 

{手首からトランスポンダーを外すと、ベルトに隠れていた部分が日に焼け残って

白かった。

日に焼けたところと味が違うかもしれないと思ってちょっとなめてみる。どっちも

汗の味しかしない。

 白線の消え果たヒビだらけのアスファルト。ぐにゃぐにゃに曲がったフェンス。

塗料がすっかりはげ落ちて真っ赤に錆びたゴールポスト。

 家から西に300メートル。いつもローラーブレードの練習をするバスケットコ

ート。


 無人の廃墟の、穴ぼこだらけの大通り。逃げ水を追って全速力。

 もうすぐ夏で、おまけに午後で、しかもめちゃくちゃにいい天気。


 どうでしょう。まあ、いきなりどうでしょうと言っても困りますよね。

 トランスポンダーって何? とか作中にいろいろと疑問点は出てくると思います

が、きっちりと回収しながら物語が進んでいくので、まったく心配ありません。


 物語はその後、最強のロボット「ルーク」と、記憶喪失の少女ハルカの交流へと

展開していきます。ここで、ハルカの過去の伏線が張られるわけですが、同時に、

次に起こる最悪の大事件へと発展していくわけです。

 それはロボットの少女が持っていた、「嫉妬心」という極めて人間らしい感情が

引き起こしていくんですね。

 ロボットの少女は、いつも一緒に旅をしていた最強のロボット「ルーク」が記憶

喪失の少女ハルカに取られると思ってしまうわけです。ロボットは人間のために作

られたわけですから、「ルーク」がハルカに興味を持つのは当然と言えるでしょ

う。


 そして物語の最期に、ロボットの少女はとんでもないことをしてしまいます。ど

れだけとんでもないことだったかは、2巻にてご説明いたします。

 ロボットの少女は、記憶喪失の少女ハルカと最強のロボット「ルーク」の本人達

すら知らない関係を薄々知っているような描写が随所に盛り込まれています。これ

でグイグイと物語に引き込まれていくわけですね。

 
 どうでしょう、これを期に、ライトノベルの世界に足を踏み入れてみませんか。

 そして言葉のリズムに酔いしれてみてください。
 
 ほんのちょっとだけ、人生観が変わりますよ。


 騙されたと思って、まずは一冊。

 完成度は私が保証いたします。


 合わなかったらごめんなさい。


 私のおすすめの一冊。

 ぜひご覧頂きたいと思います。



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 鉄コミュニケイション① ハルカとイーヴァ  その 2

 鉄コミュニケイション② チェスゲーム

 鉄コミュニケイション② チェスゲーム その2

 
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