悠の食虫植物 ネペンテス普及委員会 (和名 ウツボカヅラを世に広める会)

食虫植物のネペンテスを広めていくためのブログ。

賽は投げられた

2008年10月15日 02時46分36秒 | 日常
 右手に現時点での全財産である5千円札を握り締め

 今再び、私はここに立っている。


 負けられない戦いこそが、男の生き様。

 負けても後悔しない生き方が、男の死に様。


 こんにちは、悠です。

 本日は作者である悠の生みの親が主体となり

 ハードボイルド編でお届けします。

 ことの発端は一時間前…



 私は

 行きつけの銀行のATMの前で

 静かに立ち尽くしていた。

 原因は、無機質な液晶画面に映し出された文字。


 残高が足りません。金額を入力し直してください。


 NOOOOOO!


 なぜだ! 

 今日は給料日ではなかったのか!?


 なんか二日くらい前に

 その話しでなんか言われた気がしたが

 そんなことは今となってはどうでもいい。


 大事なのは、お金があるか、ないか。

 
 どどどどど、どうしよう。


 今日は

 先輩が主催の会社の飲み会があり 

 立場的に絶対出席しなければならない重要な日。


 休みだったので午前中、暇つぶしにパチンコに行ったのが

 そもそもの間違い。

 
 今日は飲み代や帰りの足も考えて

 最低でも7千円は欲しいところ。

 水道料金の支払いもある。


 全然足りんやんけ。


 私は決意した。


 取り返すしかあるまい。

 オール オア ナッシング。

 すでに賽は投げられたのだ。


 奇跡とは、起こしてこそ価値があるもの。

 勝利とは、己の手で掴み取るもの。


 最大のチャンスは、最大のピンチにしか訪れない。


 ピンチをチャンスに。


 右手に現時点での全財産である5千円札を握り締め

 今再び、私はここに立っている。  


 狙うはスロット

 機種はハナハナ


 いざ、勝負!



 一人のギャンブラーが華々しく散りそうな今日この頃

 いかがお過ごしでしょうか。

 今日は実験的に

 日々起こる小さな笑いにスポットを当ててみました。

 私の生活ではこんなことは日常茶飯事なのですが

 もしよかったら読んでみてください。

 場所はギャンブラーの聖地、スロット場。

 さてさて、何が起きるやら。


 スロット場に飛び込んだ私は

 ハナハナコーナーに向って一目散に駆け出した。

 
 ハナハナとは読んで字の如く。

 スロット台の上部にある2つのハイビスカスの花の絵が

 ピカピカと点滅すれば当たりという

 シンプル イズ ベストな機種。
 

 調子の良さそうな台に座り、いざ勝負。


 皆さんはご存知だろうか。

 スロットというギャンブルは

 座った瞬間に99%勝負が決まっているということを。


 つまり、出る台(大当たりが出やすい台)に座らない限り

 決して勝てない魔のギャンブルなのだ。


 じゃあ、残りの1%はなんなのか。

 それは

 確率を超えた奇跡。


 スロットはどこで大当たりを抽選しているのか。

 それは、レバーである。

 三つ並んだボタンの横についているレバー

 そうアレである。

 叩くと台にある三列に並んだ絵柄が回りだす

 例のアレである。

 
 専門的な話しは省くが、

 レバーを叩いたその瞬間に

 天国と地獄が抽選されると思って間違いない。


 お分かりだろうか。

 99%の敗者に残された、最後の奇跡。


 己のゴットハンドで大当たりを引き寄せる

 黄金のパーセンテージ。


 私の座った台の左隣には

 私のサイフよりも寂しい頭を持つおっさん。

 その隣に、仕事をサボってるのか

 メガネをかけたまじめそうなOL風のお姉さん。


 事件はこの三人から始まった。

 
 私が打ち込みを開始する前から

 相当な消耗戦が繰り広げられていたのであろう。

 おっさんはひたいに油汗を浮かべ

 苦しそうに台にお金を投入していた。


 そう、勝負とは非情なものなのだ。

 私も負けじとお金をイン。


 その時、何を思ったのか

 おっさんが行動を開始した。


 台の上部の

 2つのハイビスカスの花が点滅すれば大当たり

 それは前述の通りなのだが

 なんとおっさんは、それを手で押さえ

 念を込め始めたのだ。

 
 別に珍しい光景ではない。

 奇跡を期待して

 花を触るその行動。


 だが、ここまで念入りにやる猛者はいただろうか。

 そのお姿は

 まるで

 飛び込み中の水泳の選手。


 私は、吹き出してしまった。


 いかんいかん、笑ってはいけない。

 わかる、わかるぞおやじ!

 
 諦めたらそこで試合終了なのだから。


 おっさんは意を決したように目を見開くと

 全身の神経を右手に集中。

 エイヤ!

 とばかりに渾身の祈りを込めて

 右手を垂直に落下させてレバーを叩いた。


 どうだ!?


 おそらく、そこ一帯にいたギャンブラーが

 固唾を呑んで見守ったに違いない。

 私もその瞬間を人目もはばからず凝視した。



 そして

 奇跡は起こった。



 光ったのだ、2つハイビスカスが。





 隣の台で。





 あれ!?


 とばかりにそちらに首を振って

 目をひん剥くおっさん。

 鼻水を放射させて吹き出す私。  

 注目を浴びたOL風のお姉さんは恥ずかしそうにうつむいて

 大当たりを享受していた。


 おっさんは無言で立ち上がると、台を後にした。

 軍事費が尽きては、もはや戦えまい。

 私は静かにうなずき、目の前の台に集中。

 他人は関係ない。これは己との勝負。

 いざ!


 そう思った時、隣で誰かが座る気配。

 見ると、先ほどのおっさんが

 店内で配布されるお手拭用蒸しタオル持参で再登場。


 戻ってきた!


 そこら一帯のギャンブラー一同が

 皆思ったに違いない。

 ハゲた戦士のお帰りだった。


 おやじは、持参した蒸しタオルで顔を拭くでもなく

 なんとタオルでハイビスカスを丹念に磨き始めたのだ。


 やめてくれ、おやじ。

 私が笑い死にしてしまう。


 私の想いが届いたのか

 おやじは拭くのを一時中断。

 今度は息をハァと吹きかけて湿らせ始めた。


 私は咳き込むふりをして

 笑いをごまかすのに精一杯。

 蒸しタオルで十分に蒸れてるのに

 この念の入れよう。


 ハイビスカスはピカピカに生まれ変わった。


 大丈夫だ、おやじ。

 成せば成る。

 きっと当たりをひけるさ。


 ギャンブラー達の視線を一身に浴び

 レバーに集中するおっさん。

 ハエのように手をこすり合わせ

 準備万端。


 いざ、勝負!


 景色が

 スローモーションのようにゆっくりと流れる。

 おやじの心臓の鼓動が、ここまで聞こえてきそうだった。


 そして、その日

 田舎の小さなスロット場で

 一つの小さな奇跡が起こった。






 光ったのだ。


 ハイビスカスが。





 



 隣の台で。



 ありがとう、おやじ。

 こんなに笑ったのは久しぶりだよ。


 その後、おやじが立ち去り

 その意志を継いだ私が座り

 大当たりを引きまくったのは言うまでもないだろう。


 さらばだ、おやじ。

 そしてありがとう、おやじ。


 ギャンブルよ。永遠であれ。




 以上


 スロット場からのレポートでした。   
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