さびしさに慣るるほかなし春落葉 西嶋あさ子
角川の歳時記に収められたこの句・・・なんとも寂しげな句です。辺り一面が明るく、温かく、華やいでいる春・・・常緑の木々は春や夏に葉を落としますが、秋の落葉とは異なり照葉樹の場合は落葉といえども緑色が濃いものがあります。周囲の華やかさの中での落葉は侘しくも風情のある複雑な気配が感じられるように思います。
この句はどうでしょう・・・中学校を卒業してから五十七年間、賀状も近況報告も不義理を続けて来ており、先生の消息についてはいくつかの句で推測するしかないのですが、第四句集『的礫』に納められた「ちちははへおとうと送る桜かな」(納骨)という句から推測すると、この句も弟さんを病で亡くされて後のものなのでしょうか?
中学当時の先生の記憶と重なり、寂しげな姿が目に浮かぶようです・・・俳句の鑑賞としては別の要素が入りすぎかもしれませんね。でも、どうやら先生にとって春は決して華やげる季節ではないのかもしれません。
私は・・・この「春落葉」という季語はとても好きになりました。