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ソフトバンク「スプリント問題」に思う

2016-04-04 | 会計・株式・財務
おはようございます。
この週末は千鳥が淵緑道の花見に行ってきましたが、写真撮影でなかなか前に進めず大変でした。絶景を前にして無理のない話ではあるのですが、これが本当の「自撮りが淵」というのでしょう。

さて、私が長期研究対象としているソフトバンク。懸案となっているスプリント問題に関して、月刊選択の4月号に『孫正義に迫る「最大の挫折」ソフトバンク米通信子会社の「Xデー」』という記事があり、折しも4月1日の日経では「スプリント再建、長期戦に」という観測記事もありました。いずれも詳細は実物で確認頂きたいのですが、気になった点が幾つかあり、自分の備忘のためにポイントをメモをしておきます。

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・スプリントは1月に2016年3月期の調整後EBITDA予想を68~71億ドルから77億~80億ドルに上げた。固定費削減など合理化で2017年3月期は95~100億ドルを見込む(日経)。

・反面、幾つかの問題点も指摘されている(選択)。

(1)資金調達
    ・現金は2015年3月末の40億ドルから12月末には21億ドルまで減少。
    ・債務返済のヤマ場は今年の年末にやってくる。
     12月1日満期の社債が23億ドル。来年3月に10億ドル、8月に13億ドルと大きな償還続く。
    ・資金繰り対策の1つ「NW機器等を活用した資金調達」は、通信設備と無線音域を担保とする借入。
     予定調達額30~50億ドルであるが、ソフトバンクグループが新たに設立する子会社からの借入。
    ・この他、端末リース調達についても、同様な手法で12億ドルを手当て済。
    ・要するに、当面必要な1兆円を親会社が出すしかない状況。
 
(2)会計の歪み
    ・スプリント第3四半期のEBITADAの7割は会計上の歪みから生み出されている(米調査会社モフェット・ネイサン・リサーチ)
     第3四半期のアナリスト予想14億ドルに対して着地は19億ドルと大きく上ブレした。
     しかし、要因とする営業費用削減について「750項目もある」というにとどまり、内訳は判然としない。
    ・前出調査会社・モフェット氏は「端末リースを始めた時から、スプリントの財務は現実から乖離し始めた」と。
    ・ポストペイド会員が50万人も増加しているのに、10%近く減収していることの説明もない。

(3)経理部門トップが保有する自社株を売却
    ・大型の債務償還を迎える中、資金の有無やEBITDAの中身を知っている人物が、株価低迷にも関わらず、3月2日に売却。

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前期決算では、スプリントが商標権等で21億ドルを減損したのに、親会社では連結決算に反映しないという、東芝とWHのケースを連想させるような世界的にも珍奇な会計処理で世間を驚かせたソフトバンク。

今度の決算ではどういう「離れ業」を見せてくれるのか、実に楽しみである。
またいきます。



P.S.いよいよ決算ラッシュ。この本で分析の予習をしておきましょうか。
会計不正はこう見抜け
ハワード シリット,ジェレミー パーラー
日経BP社




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