◆「財務アナリストの雑感」 2024◆

会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

ゼンショーホールディングスの業績下方修正に思う

2012-04-18 | 会計・株式・財務
ぬいぐるみ体型の私であるが、最近はすき家で牛丼「中盛」をよく注文する。380円だがご飯の量を抑えて肉が従来の6割増し。お得感を感じさせる商品設計となっており、なかなか商売上手だ。
ただ私は肉の脂身は大の苦手で、通常は脂身を除去してから食べるのであるが、すき家の牛丼は、甘辛いタレにどっぷり浸けているためか、どこまでが赤身で、どこまでが脂身だがよくわからないようになっており、結局全部食べてしまっている。罪な食べ物だ。


さて、その「すき家」を展開するゼンショーホールディングスについては、昨年2月に
「なぜ、牛丼「すき家」は強盗被害がダントツに多いのか?」という記事を書いたりしていたが、最近は業績が好調のようで、18日の日経には次のような記事が掲載された(一部抜粋)。


--------------------------------------------------------------------------------
ゼンショHD6期ぶり最高益 今期最終123億円
2012/4/18
 ゼンショーホールディングスは17日、2013年3月期の連結純利益が前期比4倍の123億円になる見込みだと発表した。6期ぶりに最終損益が過去最高を更新する。主力の牛丼チェーン「すき家」は年間200店以上の積極出店を展開。中国やタイ、ブラジルの海外子会社も黒字転換して大幅増益を目指す。

 経常利益は28%増の247億円の見通し。前期に赤字だった中国とタイ、ブラジルの海外子会社が黒字に転換して、収益に貢献する。出店費用など販売費・一般管理費の増加は売り上げ増で吸収する。

 同日、12年3月期の連結純利益が前の期比4割減の30億円になったと発表した。従来予想の85億円から一転、3期ぶりに最終減益となる。レストラン「ココス」などを運営する米国子会社「カタリーナ・レストラン・グループ」(カリフォルニア州)の業績悪化に伴い、のれん代の減損損失20億円を特別損失に計上することが響く。売上高は9%増の4030億円。

----------------------------------------------------------------------------

今期は最高益になるとか書いているのですが、気になったのはむしろ2012期3月期の業績下方修正のほうだ。

 2012 年3月期 連結通期業績予想の修正に関するお知らせ


連結経常利益は当初の238億円から193億円、▲45億円下方修正。純利益も当初計画85億円から30億円へと▲55億円も減少してしまう。


H23/3期から上・下別に連結経常利益を見ていくと・・・・
H23/3上期63億円⇒下期94億円⇒H24/3上期118億円⇒下期修正後75億円(修正前120億円)

2012年3月期は、好調な上期決算を受けて下期を上方修正したのに、結局は下方修正。

3Qの累計経常利益は157億円、3Qだけでは39億円の上積みしかできなかった。残る1四半期で81億円の積み上げは事実上厳しいでしょう。本来はこの3Q段階で予想を引き下げるべきだったんでしょうね。
でも、2Qで上方修正したばかりだったのでメンツが立たないので、この時期までズレ込んだということではないでしょうか?


そして、投資家の失望売りを避けて興味をつなぎ止めるために、同じリリースの中で2013 年3月期の連結通期業績予想(売上高4,361 億円、営業利益273億円、経常利益247 億円、当期純利益123 億円)を公表するあたりは、商売上手な一面をうかがわせる。
日経記事もひと役買っている訳ですな。これで株が上がれば広報・IR戦略の勝利となるのか。


しかし、大幅下方修正の直後に、特段の説明もなく来期こそは大幅増益ですと言われても、「ハイそうですか」とはいかないでしょう。投資家を馬鹿にするなと言いたいし、日経も随分と人が良いなと思った次第。



そもそも、何故、下方修正となったのか?


純利益(修正幅▲55億円)のうちカタリーナ・レストラン・グループ(以下CRG)ののれん減損▲20億円というのは唯一わかりやすかった。
ただ、ゼンショーはのれんの残高が160億円あり、年間10億円を償却、今回特損で20億円減損と言っているが、本当に20億円で済むんでしょうか。というのも、単体では子会社株式の評価性引当金(特別損失)約114 億円も計上するんでしょう?これはほぼ取得金額見合い。CRGの業績やのれん残高がいくらあるのか有価証券報告書では開示がありませんのでよくわかりませんが、感覚的にはCRGののれんは全額減損すべきではとの指摘があってもおかしくない。


そして経常利益も▲45億円も引き下げたのか具体的な説明がありません。
海外子会社の業績不振や決算期変更による取り込み損益の増加とか書いてあるのですが、前年の有報には海外の重要性は低いとして参考になりそうな情報開示がありません。もう少し要因別の説明が必要ではなかったか。
まぁ思うに、激化の一途をたどる価格競争の影響に加え、例の「強盗対策」としての要員配置増などのコストも何気に重かったのではないだろうか?


ゼンショーの情報開示全体にみられる曖昧さ。中身は何だか良くわからないけど、まぁ食べて下さいよ~といわんばかりの開示姿勢から、脂身だか赤身だかわからない位まで煮込んでしまう調理法との一体性を感じ取ったのは、私だけであろうか?


なかのひと

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 地方スーパー再編に思う | トップ | ソーシャルゲームの利用限度... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ゼンショーという名ですが (ミノル)
2012-04-21 08:22:31
さすがに「全勝」とはいかないようですね。

まさか「全焼」?
それとも何かの「前哨」?

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

会計・株式・財務」カテゴリの最新記事