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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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[て]キーの導入に際して

2017-11-19 | 別口入力にまつわる諸問題
デス太郎の罠
デシテヨ姫の悪夢
ゲボ爺の浅慮
と、足かけ3回にわたって突然小芝居をぶっこんでしまいましたがお楽しみいただけたでしょうか。
別口入力の直面している危機を前にして、脳内の葛藤を体現したキャラクター達がいてもたってもいられなくなりこうして解説記事の枠から飛び出して登場してもらいました。

物語のラストはテヨ姫の一言に触発されたデス太郎がペンタクラスタキーボードの新たな補助入力、[て]キーの新設をにらんで、レイアウトや基本コンセプトの修正をする決意を吐露する場面で終わりましたが、
この結末通りブログ主ぴとてつとしましても気持ちを新たにし、[て]キー新設に向けてこれから色々と思案していくことに腹を決めました。

これが単に接続詞「て」だけの問題だったのなら「で」との混用を避けるためわざわざ別口入力にすることもないかとも思いましたが、テ形は活用と不可分の変化語尾なのだという見方を知ったことにより、
[でs]キーの不備の問題で不定語素の落ち着き先がうまく整理できず抜けの多い解決案(?)となっていた状況を打破するきっかけになりました。
同じく活用語尾に別口入力キーを充てた「な」「だ」と同じ土俵のものとして処理してもいいんだと鶴の一声のように発想転換ができました。これで姫の望んでいた「でしてよ」が腑に落ちる文法解釈のもとでコンパクトに打鍵できます。
<入力方法>
でしてよ…[でs]→[て]→よ  ※[て]キーは新設の別口入力キー

ここまでは良いのですが、[て]キー導入に際しては動詞テ形のいくつかの動詞は「急いで」のようにもともと「急ぎ」+「て」だったものが発音上の便宜により音便化して接続助詞の「て」が「で」にとって替わる現象があることにも留意しなくてはなりません。
確かに接続助詞「て」は語幹子音がb,m,nおよびgで終わる動詞の場合は濁音化して「で」になるので(飛ぶ・読む・死ぬ・泳ぐ)これに非対応なら整合性に欠けるとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、
これの場合別口入力「で」が使えないとみてそれなら機械の入力プロセスが動詞を判別処理して適宜「て」と「で」をワイルドカードのように文脈依存で置き換えつつタイプできるような機構も考えられなくもないと一瞬考えましたが、
どちらにも決められない反例として「書く」「嗅ぐ」のテ形の場合[かいて]/[かいで]が判別不全をおこすのでこの試みは却下されました。
なのでやはり濁音化したテ形にはあえて対応せず、清音のテ形のみ適用される[て]キーを使用していくこととしました。


ここで少し視野を広げてもう一つの特殊な別口入力、[○R]と[×r]に焦点を移してみると、若者ことば・<ル形動詞>の言い回しをする際に「ハモる」のように語幹はカタカナ、「る」の部分だけひらがなになるような表記を手軽に実現するために作られたこのキーの使い勝手があまり良くないのではないかという問題がここで浮かび上がってきます。
どういうことかというと、後に続く文脈を見ながら[○R][×r]に未然・連用・終止・連体・仮定・命令の各活用形をワイルドカード的に作用させて打鍵しル形動詞の各バリエーションに対応する目論見でしたが(ハモる・ハモらない・ハモろう・ハモります・ハモった・ハモるとき・ハモれば・ハモれ)、
[○R][×r]の2キーだけではとても捌ききれないという認識が芽生えてきたのです。
テ形の活用の一件からもわかったように、学校文法の活用分類から踏み出してテ形・タ形・受身形・可能形・否定形などの派生まで考慮に入れると言い回しによってはワイルドカードが衝突してうまく機能せずかえって混乱させる事態も懸念されるのです。
らりるれろを含む語尾片のみならず、「ハモって」「ハモった」という別の枠組みの範疇のものもありますから用途兼任負荷を抑えるために新設の別口入力で負荷を分散させることはたとえ[て]キーひとつだけであっても相当助かるのです。
さらに[○R][×r]原案の活用解説では「ググった」→ぐぐ[×r]た<連用形>としているものありますが、コケた・マセた・ノロケた のように小文字の「っ」を挟まないテ形/タ形もあり、[○R][×r]ではこのケースに全く対応できません。
今回の新設キーの導入でとりあえず[て]キーについてはこの問題を回避できるので残る[た]のケースはのちのち考えていけばいいかと思います。

[○R][×r]キーに関してはまだまだ精査が必要でありここでは長くなりそうなので話はここまでにして、話を[て]キーの考察に再び戻しますと、
今回新設した[て]キーは動詞連用形+接続助詞「て」(動詞活用テ形)を念頭に置いて設置したものですが、コピュラ別口入力[でs]との連携である「でしてよ」については少し特殊な事情があり説明が必要です。
こちらの「でしてよ」は[でs]+終助詞「て」との連結であり文法的にも接続助詞とは異なるものですが幸いなことに同様な例として基本別口入力「が」の適用要件に格助詞としての「が」だけでなく逆接の接続助詞としても使用できる例がありますので、これに倣って「て」も複数のチャネルをもつ別口入力であると解釈すれば問題は一応解決します。
これはいわゆる女性語の「でしてよ」だけにとどまらずゲボ爺のセリフ「…よかろうて。」や「…じゃて。」にみられるような終助詞用法においても同様に使っていけます。
ただ「でして」の場合だけに関してみられる重要な特徴をここで申し上げますと、[でs]→て(べたの通常かなキー)のときは「ですて」のように変換されて(そうです天才です-などの例)まずは「です」の確定に重きが置かれますが、[でs]→[て](別口入力)の場合には「でして」の形を返す変換になります。
これは[て]キーが活用まわり(テ形に限らず女性語の『て』も広くバリエーションのひとつとみなして)の受け皿とした変化パーツとして作用し、結果「て」につながるモーメントを想起させる「でして」の方を用に充てさせる措置をとったというカラクリです。
まさにこの派生に対応せんがための[て]キーの格別な機能でありますし、不定語素の行き先を後置シフトで解決する特徴的なシークエンスをうまく利用した"贅沢使い"であるといえます。

また、動詞のテ形ばかりでなく形容詞のテ形(例:広くて強くて辛くて)もありこれにも同様に[て]キーでの別口入力を対応させます。形容詞の場合はすべて清音の「て」が当てられるのが特徴です。
一方形容動詞の場合のテ形では(例:静かで微妙でお転婆で)すべてこの例示のように対照的に濁音の「で」で受けますが、こちらへの対応には別口入力[で]を充てます。
この場合の接続助詞「で」に限っては形容動詞の連用形の一部としての「で」(活用語尾)や断定の助動詞「だ」の連用形の一部である「で」と機能上類似しており活用のバリエーションのありようと不可分だともいえるので奇しくも清音のテ形においての語尾が活用と不可分とする見方とも符合する一面が垣間見れるかと思います。
とは言うもののこの処置は形容動詞の時は濁音化したテ形に対応するのに一般動詞のときの活用の時はあえて対応しないなどという一貫性に欠けるものだと指摘されても当然の事かとは思いますが以下に挙げる例を鑑みたうえで判断を俟って頂きたいということを読者の方には申し上げたいです。
<一般動詞のテ形の別口入力(濁音の場合)の適用が好ましくないとの証左になる例>
漕いで→恋で との判別不全性
跨いで→マタイで・また胃で との判別不全性
死んで→芯で との判別不全性
傷んで→異端で との判別不全性
恨んで→ウランで との判別不全性
…これらの例からもわかるように、別口入力に動詞のテ形(濁音になる方)を認めてしまうのは「で」本来の用法が非常に多岐にわたる(断定の助動詞「だ」の連用形、形容動詞の活用語尾の一部、「そうだ」「ようだ」助動詞の連用形、格助詞など)ため混同されやすく、また「で」は切れ目感が強いのに対し語尾との一体感が強いとされるテ形用法の「で」との文法機能上の違いから変換語句切り出しの不調要因となってしまうことが懸念されますので決して得策ではありません。
これら違いのある両者を同じまな板にのっけてしまうのは無理がありますし、かといって従来の別口入力「で」のほかに接続助詞専用の別口入力「で」を立ててとり捌くのは、同じ「で」が用法によって2つも出てきてしまう(ただでさえ「て」という別口入力もあるのに!)などどだい無理な話で混乱必至ですのでどうしても採用できません。
翻って別口入力「で」の使用が容認された形容動詞の場合、副作用もなさそうだとみなされているのは、形容動詞語幹がもともと名詞に準ずる類のものが多く(いわゆる形容詞性名詞)、「で」と付加入力をつけても語幹部分の自立性が高いので「で」というキーを別口入力することで生じるワード分離性があっても与し易いからなのです。

少し混乱してきたのでテ形の適用範囲をA群(音便形を含む清音のテ形(て))、B群(音便形が濁音のテ形(で))にわけて整理しますと(※清音にも音便形はあります)

<テ形およびデ形の入力対応表>
     A群の場合の入力    B群の場合の入力
一般動詞 [て]         べたの「で」
形容詞  [て]         -(濁音のデ形はない)
形容動詞 -(清音のテ形はない)  [で]

のようになることをもう一度確認したいと思います。他にも補助形容詞「ない」のテ形や打ち消しの助動詞「ない」のテ形なども考えられますが、これらについては次回以降に考察してみたいと思います。

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