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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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別口入力キー候補[Ø文字マーカー]の補足追記その2

2018-05-26 | 別口入力にまつわる諸問題
前記事で別口入力キー候補・[Ø文字マーカー]の細かな挙動について補足考察をしてきましたがそこではおさまりきらなかったトピック、以前提案した別口入力候補[た][い][し]のそれぞれについて、
[た]は過去形の装定、[い]は形容詞の装定、[し]は動詞の連用中止の切れ目としてそれぞれØ文字マーカーの機能で集約できるのではないか、という点についてこちらの方で雑感をまとめていきたいかと思います。

まず過去形の[た]についてですがこれには連体形の場合と終止形の場合があります。
終止形は文末に結んで配置されており直後の句読点・スペースなり改行なりで終端要素であると容易に判断できるので文解析上の難点はないかと思います。
仮に「今日は雨が降った五月雨だ。」のように句読点を挟まずに短文を連結していった場合は連体形装定ではないものの[Ø文字マーカー]の切れ目通知配置を置くのも良し、マーカーを置かずとも動詞終止形のきりだしとそのあとに続く名詞の認識も誤変換誘発要素はなさそうなのでこちらも良し、となるのではないでしょうか。
そして主たる着眼部の連体形装定の[た]については連体形ということもあってか直後に名詞がくるという構造が確定しており文字通りの装定でこちらは特にややこしい事もなく[Ø文字マーカー]でそっくり上位互換できるかと思います。
もともと終止形/連体形の[た]ともに文解析上でややこしくなることもないと当該記事にも述べておりますしあえて入力させるのは形式的・手続き的な色彩が強いと疑問を呈していることからもわかるとおり
ここはØ文字マーカーの万能性に期待して上位互換で集約していって構わないでしょう。
デメリットとしては[た]入力のあることで<語幹カナ+た>の形のル形動詞をカバーできればル形動詞の変化形をほぼ一通りこなすことができて統一感も出せるので惜しいところではありますが
口語・若者語のル形動詞へどうしても対応しなければならないというほどの必要性も強く求められているわけではないので専用別口入力の採用は消極的に傾きます。ここはしょうがないですね。
なお過去形の「た」はすべての動詞においても末尾につくのでいちいち全部の動詞の過去形の「た」をマーキングしなければならないのか…という事態はもともと気が進まなかったということもありますがこのように口語のル形動詞だけに限って[た]をつけるという運用を念頭に置いていたため実際に適用を受ける動詞の出番は限られておりますしもし専用別口入力を持たなかったとしても影響は少ないかと思います。
それに語幹カナ+た のル形動詞は少ないのでこの面から言っても影響は少ないかと思います(最低限学習登録すれば何とかなるのではないか)。
過去形「た」の使われるもので文法的に込み入ったものとしては [れ]た・[て]た・[でs]た …といったものがありますが[れ]や[て]についてはル形動詞の[○R]や[×r]あるいは[て]でマーキングが済んでいるため[た]でも宣言するのは重複して二度手間になりますし、[でs]たに関しては名詞述語文でル形動詞の述部ではないので活用のバリエーションに気を配る必要もありません。
しかも[れ]た・[て]た・[でs]た以降の後続が「[の][で/に/と/が]」、「から」、「よう[で/に/だ]」など特定のパターンで落ちつくので文解析の判断もつきやすく、もし[た]を採用しないでべたの文字入力であったとしても不便は感じないのではないかと楽観視しております。

次に形容詞連体形/終止形の語尾の[い]の別口入力についてですが、こちらは動詞過去形に比べていくらか登場機会も少ないため一般形容詞にも適用の範囲を広げていいかも知れません。
動詞の場合は「いった」「みた」「した」「きた」「(可能形)+た」「できた」等・たくさんの基本語において煩わしくも[た]マーキングを求められる可能性があり全面導入に腰が引けてしまう要素もありましたが、形容詞の場合「いい」「ない」「たい」みたいな基本頻出語も一部にはあるもののそれ以外では比較的扱いの容易そうなケースと見当されそれほど導入のハードルも高そうではありません。
また、形容詞の場合は他の品詞と横断的に混同するような以下のケースのような使い分けで重宝する例もあります。
(例)「拾い曲/広い局」「恋色/濃い色」「死体・した意/したい」
さらに先述のル形動詞と同趣の向きがある口語造語形容詞(例:エモい・キモい・クドい・キョドい・メタい 等)との親和性においてもこちらの方が一段、用法的にも頻度的にも高く安定した活躍を見込めるのではないでしょうか。
少し補足すれば動詞の口語・造語関係は[○R][×r]のル形動詞別口入力が広くカバーしておりますし、ル形動詞の変化の1つとしての別口入力[た]自体は一定の役割はあるものの「モゲた」「コケた」「ハケた」等の<語幹カナ>+<た>のような典型的な構成のものはそれほど数はなくこの場合に限って言えば造語動詞になるものもあまり出てきそうな気配はありません。
造語でもっぱらあるとすれば<語幹カナ>+<った>のように小文字の「っ」をはさんだ構成のものが多くを占めているのでこちらは「った」の二文字がある分動詞としての切り取り易さがいくらか増すのではないかと思います。
ですので今回の形容詞に関しては[っい]のような形は皆無でより切り取りの難しい+[い]の形が常に立ちはだかっているので専用の別口入力[い]があることは動詞[た]の時のそれより心頼みになるのは間違いありません。
…こうしたことを勘案して形容詞連体形/終止形の語尾の[い]の別口入力について[Ø文字マーカー]で完全に上位互換されるであろうとの見通しにはいささか懐疑的です。
なにより形容詞造語自体の生まれる可能性も、はじめの「造語生産性に乏しい」との見解とは矛盾しておりますが無視できない程度の造語生産性がみとめられ、入力の方も単[い]で接続弁別する「マーキング有用性」が動詞過去形の[た]に比べて高いのではないかと思います。
なので上位互換については見解は保留で、[Ø文字マーカー]を採用するにしても別口入力[い]自体は選択肢として残しておき、オプションや何らかの設定などでその機能の使い道を残しておいた方が適当ではないかと思います。

最後に別口入力キー候補[し]の考察に移っていきたいと思いますが、これは先程の2例の終止形・連体形とは異なり、主にサ変動詞の未然形・連用形の語尾にマーキングするもので接続の仕方も先例ほど単純化されていないさまざまな用法があるので少し難しい面もあるかと思います。
未然形・連用形・(テ形)なので直後には「よう」「ます」「た」「て」などが続き、このうち「ます」「よう」はべたの文字列であるので入力打鍵でいうと[し]ます・[し]よう のような形になり[し]を受けての変化部の付加も「し-ますから」「し-ます[の][で]」「し-ます[に][は]」「し-よう[か][と」」「し-よう[に][も]」のようにいくらかバリエーションがあったりします。
さらには命令形の[し]ろ については接続がぎこちなく持て余し感もあることからこの場合は[し]入力せずでやっていこうというような仮方針もあります。
「た」「て」との接続においてはもし[し][た]が新別口入力として採用された場合、[し][た]の連続打鍵や[し][て]の連続打鍵が頻繁に起こるようになり多少煩雑に感じられるユーザーの方もいらっしゃるかもしれません。
特例としてこの接続の打鍵では、より末尾の[た]や[て]に集約して途中の[し]をオミットするなどをしたりするか、あるいは打鍵鍵盤ゾーンが込み入っている中でごにょごにょ近隣打鍵をするのではなくて例えば[し]はキーボード辺縁部に、[た][て]は親指4方向キーや右斧の刃キーというように連続ストロークが離れたところに配置してあるようにしてあげれば連続打鍵も苦になりにくいのではないかと思います。
さてそれに加えて「長押し」=ながお[し] といったサ変ではなくさ行五段活用の連用形の場合のマーキングについてですがこちらはサ変と違い連用形転成名詞としての輪郭をはっきりさせるためにマーカー配置が重宝する場面も多いのではないでしょうか。
なくはない例として「自分探し」⇔「自分佐賀市」の使い分け、「又貸し」⇔「また餓死」の使い分け、「澄まし」⇔「済まし」の使い分け、「渡し」⇔「私」の使い分け の例があるかと思います。
「澄まし」の例では連用形で転成名詞の「済まし」というのは一般的ではなく用例も「済ませ」で上一段動詞の変化形ですのでマーカーでの限定対象としてはちょっと弱いかな…というのがあります。
それに「澄まし汁」の別称の「お澄まし」といったものならこちらはれっきとした連用形転成名詞ですし収まりも良いかと思います。
あとは特徴的な使用例として、接尾語的に使われるパーツとの接続で「無視のし甲斐」⇔「無視の市外・虫の死骸」といった使い分けや、「残しぶり」⇔「のこ渋り」などの誤変換回避の効用もあるかと思います。
さらにこの接尾語接続のちょっとした造語用法としては「おススメし隊」・「おススメし層」みたいな使われ方でも「し」はひらがなが確定しているうえの前提からの後続文字列の変換字種のとりわけがあったり、三属性変換の接尾語変換・ハ万を入力したときに「し」の部分には無干渉で混成部変換をするヒントにもなるので接尾語界隈とは相性も良さそうです。
そして見落としがちな点なのですが未然形・連用形の語尾のマーカー用途と五段動詞連用形転成名詞の使われ方のほかに接続助詞としての「し」の使われ方があるのも見逃せません。
典型的な例では「読んだし」「なんだし」「しかないし」などのようなものがあるかと思いますが、判断の分かれそうな境界例として
「見たし」⇔「満たし」のような例や「書くし」⇔「隠し」のようなものがありますがどちらの後者にも「満たし」「隠し」のような連用形は連用形であるもののこちらはあえて[し]マーカーを必要とせずに、
より特殊例の際立った接続助詞用法の「見たし」「書くし」をマーカー必需の用例としユーザーは明確に意識しながら使っていくことになります。後者の変換候補はマーカーなしで通常変換でサ変連用形/さ行五段動詞連用形であることを認識しなければなりませんが、これはもう前後の文脈から適切に判断処理されることを期待するしかありません。
通常変換の時にいくらか手間がかかるにしても接続助詞用法の「見たし」「書くし」とは住み分けしたうえで候補を選び出していくので入り混じったところでの混乱は避けられるかと思います。

…このように「し」では単に[Ø文字マーカー]での装定や連用中止以外のものが多くありセンシティブな入力意図のもとの処理が期待されますのでそれをそっくりそのまま上位互換させるというのは現実的ではありません。
すんなりと権限委譲できそうなのは連用中止法のときの「し」ぐらいのものです。
それと申し忘れましたが連用形転成名詞の場合の「し」は末尾要素に「し」を置いた連用形のタイプでありますが、これと似たようなものに[Ø文字マーカ]入力の装定-特に動詞連用形の形のものがあるかと思います。
どんなものかと言えば「蒸しパン」や「濡れタオル」のようなものが挙げられますが今回の別口入力で使われるサ変/さ行五段動詞の場合においての<連用形+名詞>の複合語はサ変で辛うじて「し際」「し方」のようなものがあげられるかもしれませんがこれは独立的な単一の複合語というよりは句を形成する抽象的な機能語としての側面が強いものです。具体物としての装定の体をなしておりません。
かたやさ行五段動詞である場合には「貸し本」や「刺し傷」のように装定で構成される複合語も十分考えられるのでこちらに関しては[Ø文字マーカー]での連用形装定と実質的に同じであるのでこの部分では上位互換も許せるものだとは思います。
とはいうもののØ文字マーカーでのマーキングは文字列形成が一文字も進まないのに対して[し]でのマーキングは1文字分は確実に形成が進んでいくので快適な入力体験のためにはさ行五段動詞の[し]の部分だけは別立てあるいはゼロ文字マーカーのものと並立で入力手段を確保した方がいいのかもしれません。
いずれにせよ別口入力キー[し]については独立維持に値する程度には有用性もありそうですし、「球拾おうとし川転落」の例や「~したて」「~し損ねる」のように単独の「し」だけで存在感のある機能性・有機性をもって縦横無尽にはたらくパーツでもあるのでここは上位互換による集約は求めず、独立した別口入力としてその用途を維持していくことが望ましいと思います。

さて、問題は空き未定義③キーに使える余地が1つしかない事ですが、今まで候補に挙げた別口入力のうち([た]は集約させても良さそうであるが)いくつかをオプション選択でユーザー自らがカスタマイズ設定して絞っていくか、ここは思い切って空き未定義キーを増やす、つまりレイアウトを変更して新たにキーを新設していくことについてもう一度考え直す機会と捉えるべきなのかもしれません。
そのときには重要性から鑑みて、[Ø文字マーカー]については採用していく方向で、残りの別口入力については引き続き検討していっていこうかと考えております。
とりあえずはレイアウトの再検討ということで皆さんに案をお示しするのはいましばらく待っていてもらいたいかと思いますが、近日中に試案を作ることに注力していこうと思いますのでよろしくお願いいたします。


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